著者
村本 充 石井 望 伊藤 精彦
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 B (ISSN:09151877)
巻号頁・発行日
vol.J78-B2, no.6, pp.454-460, 1995-06-25

移動体通信端末のアンテナは形状と共に小さくなり,その電気的特性は著しく劣化している.小形かつ高性能な携帯機を実現するためには,アンテナを高効率化することが重要となる.その際,重要なパラメータとなるのが放射効率であり,Wheeler法を用いて簡易に放射効率の測定が可能である.この手法は,アンテナをラジアン球程度の大きさのキャップで覆うと入力電力が損失電力に等しくなるという仮定に基づいて実施される.しかし,この仮定が成立しなければ,計算されるWheeler効率は正確な放射効率とならない.実際にWheeler法を用いた放射効率の測定を行うと,測定値は理論的な値と異なる落込みを生じることがある.本論文では,キャップをワイヤグリッドで近似し計算機上でWheeler法のシミュレーションを実現している.そこで,問題の落込みが測定方法に起因するものではないことを明らかにし,その原因として,キャップをかぶせたとき内部のリアクティブな電磁界が変化しないというWheeler法適用の前提条件が成り立っていないことを示している.また,Wheeler法に使用するキャップの大きさがラジアン球より大きい場合でも十分適用可能であることを示し,その適用限界について検討している.
著者
小川 恭孝 徳田 英 佐々木 正巳 大宮 学 伊藤 精彦
出版者
一般社団法人映像情報メディア学会
雑誌
テレビジョン学会誌 (ISSN:03866831)
巻号頁・発行日
vol.39, no.6, pp.503-508, 1985
被引用文献数
1 2

スポラディックE層伝搬による外国電波の混信などのように, テレビ信号を受信する際には, 混信による受信障害が発生することがある.本研究は, LMSアダプティブアレイアンテナを用いてテレビ信号の混信波を抑圧することを目的としたものである.アダプティブアレイアンテナは, 混信波の到来方向にアレイ指向性のヌルを自動的に形成し, 混信波を抑圧するものである.本研究では, 2素子のLMSアダプティブアレイアンテナのシミュレータを作製し, 実験的に混信波抑圧効果を明らかにした.実験においては, 所望波として第1チャンネルのテレビ信号, また, 混信波としては, 帯域の中心である93MHzの無変調正弦波を, それぞれ用いた.混信波抑圧効果は, シミュレータ出力のDU比と画面の主観評価試験結果を用いて評価した.その結果, パラメータの値によって良好な混信波抑圧効果が得られることが明らかになった.
著者
八木 宏樹 小川 恭孝 大鐘 武雄 伊藤 精彦
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. RCS, 無線通信システム
巻号頁・発行日
vol.96, no.212, pp.9-14, 1996-08-08
被引用文献数
9

高速陸上移動通信おいては, 所望波とともに周囲の環境による反射, 散乱, 回折が原因で遅延時間差を持った多重波が発生する. 多重波抑圧をアダプティプアレーで行うことが提案されているが, アンテナ高が低い場合には, 周囲の建物等が原因で, これらの多重波が広い範囲にわたって到来する. このような状況下ではパタンの自由度を超える数の多重波が到来することが予想される. 自由度を超えた多重波が到来するときのアダプティブアレーの特性を主としてシミュレーションにより考察し, 0.1〜0.3シンボル長以内の遅延時間差を有する多重波はほぼ1つの信号とみなされ, 自由度が消費されることによる重大な特性劣化は起きないことが明らかになった.
著者
加藤 喜久 大鐘 武雄 小川 恭孝 伊藤 精彦
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B-II, 通信II-無線通信・無線応用 (ISSN:09151885)
巻号頁・発行日
vol.81, no.1, pp.1-9, 1998-01-25
被引用文献数
19

低アンテナ高基地局, すなわち各アンテナ素子に生じるフェージングがそれぞれ無相関となる場合について, アダプティブアレーによる干渉除去特性を検討した。本論文では特にアンテナ本数, 干渉波数が多い場合について着目し, SINR特性, BER特性の評価を行った。SINR特性の検討により, 平均SNRが大きい場合には, ダイバーシチ利得がほとんど得られないのに対して, 平均SNRが小さい場合には, ダイバーシチ利得が大きくなることが明らかになった。BER特性においては, アンテナ本数が7本程度までは, ほぼアンテナ本数増加による利得のみとなった。しかし, 10本以上になると若干ながら余剰自由度によりダイバーシチ利得が得られることがわかった。フェージング変動(上り回線, 下り回線)による影響の検討では, 上り回線において, RLS法, SMI補間法では規格化ドップラー周波数が1×10<-4>以下では劣化が少なくほぼ追従できているという結果が得られた。下り回線においては, SMI1次外挿法, RLS1次外挿法, 双方とも規格化ドップラー周波数が1×10<-4>以下ではフロア誤りが1×10<-2>以下となり, ある程度適用可能であることがわかった。