著者
佐久間 路子 無藤 隆
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.33-42, 2003-03-30
被引用文献数
1

本研究の目的は,人間関係に応じて自己が変化する動機,変化に対する意識を測定する尺度の作成および自尊感情との関連における性差を検討することである。大学生男女742名を対象に,変化程度質問,変化動機尺度,変化意識尺度,セルフ・モニタリング尺度,相互独立的-相互協調的自己観尺度,自尊感情尺度などからなる質問紙を実施した。主な結果は以下の通りである。1)変化動機尺度は関係維持,自然・無意識,演技隠蔽,関係の質の4因子,変化意識尺度は否定的意識,肯定的意識の2因子が見いだされ,信頼性と妥当性が確認された。2)変化動機の関係維持,自然・無意識,関係の質は,男性よりも女性の方が得点が高かった。3)男女ともに,変化程度は自尊感情との関連が見られなかったが,女性においてのみ否定的意識と演技隠蔽の自尊感情への負の影響が認められ,変化動機および変化意識と自尊感情との関連には,性別による違いがあることが示された。
著者
無藤 隆 佐久間 路子 掘越 紀香 砂上 史子 齋藤 久美子
出版者
白梅学園大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

本研究では、幼稚園の一つのクラスで週に1回ないし2回、3歳から5歳までの3年間の縦断的なビデオ観察を行い、その記録を分析することを中心とした。また並行して、各々の分担者がそのフィールドで行った観察を元に検討した。幼児教育を貫く3つの軸として「協同的な学び」や自己制御、学習の芽生えを取り上げ、それらを、構成遊び、ごっこ遊び、製作活動、クラスのグループの話し合い活動等を通して、「目的を志向する傾向」が成り立つ過程として位置づけられることを見いだした。
著者
佐久間 路子
出版者
白梅学園短期大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

本研究は幼稚園5歳児,小学校1年生,2年生の3学年を対象に,2年間にわたり縦断追跡的に自己理解インタビューを行い,小学校への移行期における自己概念に関して(1)子どもの自己描出の量的・質的分析に基づき横断的に把捉された平均的な発達パターンと,縦断追跡的に捉えられた個人内の連続性と変化のパターンの差異を明らかにすること,(2)年齢要因と小学校へ移行という環境要因が自己発達の連続性に及ぼす影響を検討することが目的である。2005年度の第1回目調査(2006年1月〜3月実施)に引き続き,第2回調査を2006年8〜9月に都内の公立小学校2校で行った。対象児は,小学校1年生60(22)名,2年生56(54)名,3年生65(42)名,計181(118)名である(括弧内は縦断調査人数)。質問内容は,(1)現在の自分(いいところ等),(2)1学年前の自分(どんなところが変化したか等),(3)1学年後の自分(どんなところが変化するか等)についてである。さらに前回調査を行った子どもには,前回の調査を振り返る質問(前回次の学年になって変化すると思ったところは変化したか等)を行った。その結果,(1)横断的に把捉された平均的な発達パターンは,これまでの自己概念に関する知見とほぼ同様であり,縦断追跡的に捉えられた個人内の連続性は,3年生でより明確に見られた。(2)第1回目調査と比較した結果,5歳児から1年生への変化では,小学校への移行という大きな環境面での変化があったため,幼・保との違いや,勉強面に関する回答が多く見られたが,1年生から2年生の変化では,環境面の変化に関する回答は減り,性格・態度や能力の変化に関する回答が多く見られたこと,3年生では勉強に関する具体的能力と性格に関する回答が多く見られ,学校生活において勉強での能力の重要性が増加していることがうかがわれた。以上より,子どもの自己概念は,環境変化の多大な影響を受け,学校生活と密接な関連があることが明らかになった。
著者
佐久間 路子
出版者
白梅学園大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究では、児童期中・後期の自己概念の発達を縦断的調査によって明らかにすることを目的に、小学校4~6年生を対象に質問紙調査を行った。その結果、4~6年生の間に、自己の捉え方が否定的になり、コンピテンスが低下することが、部分的に明らかになった。また6年生になると自己の肯定的・否定的側面への気づきが高まることが明らかになった。この結果を生かして、高学年における自己理解を深める授業実践について考察した。