著者
齋藤 久美子
出版者
早稲田大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2003

壁塗り用石膏に関して、前年まで研究で、当時石膏焼きの際、過焼成によりプラスターに無水石膏が混入していた可能性を指摘したが、これが現在までに二水石膏部分をも無水化させた原因ではないかと考え、半水石膏と、半水石膏と無水石膏の混合物をそれぞれ水和させ、変化を観察した。1年半にわたり湿度30〜40%の状態に置き、定期的に石膏の脱水の有無を調べたが、両者とも脱水は見られなかった。さらに、温度など壁画が置かれていた環境も検討し、長期的な観察を行う必要がある。顔料については、壁画には銅を発色源とするエジプシャン・ブルー、土器の彩色にはコバルトを発色源とするコバルト・ブルーという使い分けが行われていた理由を実験により検証した。分析結果に基づき合成したエジプシャン・ブルーと、出土したエジプシャン・ブルーの塗られた壁画片を、土器を焼く温度で輝いてみたところ、ともに黒く変色した。エジプシャン・ブルーは熱に弱く土器には使えなかったものと考えられる。コバルトブルーの製法については、同じくコバルトを使用していたガラスの製法、及びコバルト・ブルーより二千年以上前から作られていたエジプシャン・ブルーの製法と比較してみた。成分分析の結果、ガラスに比べて、コバルト・ブルーには多量のアルミナが含まれていた。分析結果に基づいて合成実験を行ったところ、アルミナが多いと融解温度が高くなるため、当時ガラスが作られていた温度ではガラス化が困難であり、ガラス製法そのままではコバルト・ブルーは作れないことがわかった。また、エジプシャン・ブルーともガラス質部分の配合が異なり、伝統的な顔料製法を用い、新たに導入された原料であるコバルトを単に銅に置き換えただけではないことが判明した。当時の技術体系の複雑さが伺える。顔料に関する実験の成果の一部を、6月に行われた日本西アジア考古学会第10回大会で発表した。
著者
齋藤 久美子
出版者
The Society for Near Eastern Studies in Japan
雑誌
オリエント (ISSN:00305219)
巻号頁・発行日
vol.48, no.2, pp.47-65, 2005

This paper analyzes the establishment by the Ottoman Empire of the <i>Yurtluk ve Ocaklik</i> and the <i>hükûmet</i> in eastern Anatolia and their historical development.<br>After the Ottoman Empire took the eastern Anatolia under its control in the 16th century, it examined the situation of the land tenure and the distribution among the power of Kurdish <i>amirs</i> (chieftain) who had governed the area. This was aimed at merging eastern Anatolia into its local administration system. Thereafter <i>amirs</i> received <i>sancaks</i> (subdivision of a province) as a <i>yurtluk ve ocaklik</i> (hereditary holding) which authorized them to keep inherited privileges. The Ottoman Empire called the <i>sancaks</i> of powerful <i>amirs eyalets</i> (semi-autonomous sancak), but the distinction remained vague. At the end of 16th century when the word <i>hükûmet</i> started to be commonly used instead of <i>eyalet</i>, the <i>sancaks</i> of powerful <i>amirs</i> were designated <i>hükûmets</i> accordingly. The establishment of the <i>hükûmet</i> played a decisive role in differentiating the more and less powerful <i>amirs</i> by naming them separately.<br><i>Hükûmet</i> means the exemption from the land survey and the <i>timar</i> (fief) system, and where all the tax income belonged to the <i>amir</i>. The definition of <i>hükûmet</i> changed over time. In some <i>hükûmets</i> the privileges of <i>amirs</i> were gradually undermined. On the other hand, the <i>amirs</i> who ruled <i>hükûmets</i> remained powerful, obtaining the title of <i>han</i> (<i>khan</i>) instead of <i>bey</i> at the end of 17th century.<br>The establishment of <i>hükûmet</i> exemplified the real nature of the Ottoman governing system. The Ottoman Empire introduced the Ottoman governing system, which embraced traditional political and social order into eastern Anatolia. In other words, the establishment of the <i>yurtluk ve ocaklzk</i> and the <i>hükûmet</i> represents one aspect of the reconstitution of traditional order by the Ottoman Empire.
著者
伊豆原 月絵 高木 麻里 澁谷 摩耶 齋藤 久美子 百武 真友美 イズハラ ツキエ タカギ マリ シブヤ マヤ サイトウ クミコ ヒャクタケ マユミ Tsukie IZUHARA Mari TAKAGI Maya SHIBUYA Kumiko SAITOU Mayumi HYAKUTAKE
雑誌
大阪樟蔭女子大学学芸学部論集
巻号頁・発行日
vol.47, pp.85-94, 2010-01-29

大阪樟蔭女子大学と神戸ファッション美術館の学館協働事業として、神戸ファッション美術館の収蔵品について、平成19年度より18世紀のフランス宮廷衣装のドレスの織物・刺繍・装飾・縫製の復元を行っている。復元研究の最終目的は、第一次資料を基に、美意識を支えた縫製・構成技術、ドレスのフォルムから身体のフォルムを、また、染織の色彩と紋様から意匠や象徴性などを解明することで、往時の求められていた美意識を明らかにすることである。復元研究では、19世紀末以前の衣装を対象とする服飾美学、服装史、構成学の既往研究のほとんどが、美術館、博物館の展示ボディに着装されたドレス表面の計測結果や図像資料から、また、欧米の文献を基にパターン(構成図)作成を試み、復元製作をしているのが実情である。なぜなら、現存する歴史衣装は少なく、華やかなるロココ時代の宮廷衣裳にいたっては、日本のみならず世界でも数十点に満たない。したがって、第一次資料を基にした復元研究は、少ないのが現状である。このようなことを鑑み本論文では、復元製作において、最も重要な情報収集として、18世紀のドレスの文献調査に併せて、保存状態の優れた神戸ファッション美術館所蔵の18世紀に製作された女子のフランス宮廷衣裳を第一資料とし、計測調査(1着のドレスの計測した箇所は、10,000箇所以上)とその記録方法に重きを置き、第二次資料作成の方法について述べた。
著者
小倉 能理子 阿部 テル子 齋藤 久美子 石岡 薫 一戸 とも子 工藤 せい子 西沢 義子 會津 桂子 安杖 優子 小林 朱実
出版者
一般社団法人 日本看護研究学会
雑誌
日本看護研究学会雑誌 (ISSN:21883599)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.2_75-2_83, 2009-06-01 (Released:2016-03-05)
参考文献数
25

看護職者の患者指導に関する教育的機能を高めるための教育プログラムおよび教育・指導技能評価ツール開発にむけて,その基礎資料を得るために看護職者の患者指導に対する考えと実施の実態を調査した。その結果,看護職者は,患者指導を重要と考えているが実施は十分ではないことが示された。中でも,患者とともに指導を進めること,指導を計画的に行うために事前に調整が必要なことが行動につながっていなかった。指導形態では,指導計画の立案が不十分であることが把握された。それは,学習理論をふくむ教育方法に関する知識・技術が不十分であることが一因と考えられた。以上のことから,現職看護職者の患者指導に関する教育的機能を高めるためには,教育方法の理論・技術に関する基礎知識,教育の基本原理などの項目を看護基礎教育あるいは新人教育プログラムに盛り込む必要があると考えられた。
著者
伊豆原 月絵 高木 麻里 澁谷 摩耶 齋藤 久美子 百武 真友美
出版者
大阪樟蔭女子大学
雑誌
大阪樟蔭女子大学学芸学部論集 (ISSN:18807887)
巻号頁・発行日
vol.47, pp.85-94, 2010-01-29

大阪樟蔭女子大学と神戸ファッション美術館の学館協働事業として、神戸ファッション美術館の収蔵品について、平成19年度より18世紀のフランス宮廷衣装のドレスの織物・刺繍・装飾・縫製の復元を行っている。復元研究の最終目的は、第一次資料を基に、美意識を支えた縫製・構成技術、ドレスのフォルムから身体のフォルムを、また、染織の色彩と紋様から意匠や象徴性などを解明することで、往時の求められていた美意識を明らかにすることである。復元研究では、19世紀末以前の衣装を対象とする服飾美学、服装史、構成学の既往研究のほとんどが、美術館、博物館の展示ボディに着装されたドレス表面の計測結果や図像資料から、また、欧米の文献を基にパターン(構成図)作成を試み、復元製作をしているのが実情である。なぜなら、現存する歴史衣装は少なく、華やかなるロココ時代の宮廷衣裳にいたっては、日本のみならず世界でも数十点に満たない。したがって、第一次資料を基にした復元研究は、少ないのが現状である。このようなことを鑑み本論文では、復元製作において、最も重要な情報収集として、18世紀のドレスの文献調査に併せて、保存状態の優れた神戸ファッション美術館所蔵の18世紀に製作された女子のフランス宮廷衣裳を第一資料とし、計測調査(1着のドレスの計測した箇所は、10,000箇所以上)とその記録方法に重きを置き、第二次資料作成の方法について述べた。
著者
無藤 隆 佐久間 路子 掘越 紀香 砂上 史子 齋藤 久美子
出版者
白梅学園大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

本研究では、幼稚園の一つのクラスで週に1回ないし2回、3歳から5歳までの3年間の縦断的なビデオ観察を行い、その記録を分析することを中心とした。また並行して、各々の分担者がそのフィールドで行った観察を元に検討した。幼児教育を貫く3つの軸として「協同的な学び」や自己制御、学習の芽生えを取り上げ、それらを、構成遊び、ごっこ遊び、製作活動、クラスのグループの話し合い活動等を通して、「目的を志向する傾向」が成り立つ過程として位置づけられることを見いだした。
著者
齋藤 久美子
出版者
日本精神分析学会
雑誌
精神分析研究 (ISSN:05824443)
巻号頁・発行日
vol.44, no.1, pp.46-51, 2000-02-25
被引用文献数
1