- 著者
-
斎藤 嘉朗
宇山 佳明
佐井 君江
頭金 正博
- 出版者
- 一般社団法人 レギュラトリーサイエンス学会
- 雑誌
- レギュラトリーサイエンス学会誌 (ISSN:21857113)
- 巻号頁・発行日
- vol.7, no.1, pp.61-69, 2017 (Released:2017-01-31)
- 参考文献数
- 14
近年, 本邦における医薬品開発時の臨床試験は, 国内治験, ブリッジングから国際共同治験へと, その戦略は移りつつある. そのため, 複数の国内のガイドラインが整備されてきたが, 2014年よりICHトピック (E17 「国際共同治験の計画及びデザインに関する一般原則」) に採用され, 2016年にパブリックコメント募集のためガイドライン案として公表された. 一方, 国際共同治験の大半を占める日米欧を中心とした多地域国際共同治験に加え, 遺伝的・文化的に類似している東アジア諸国を対象にした国際共同治験も一定程度実施されている. しかし, 医薬品の薬物動態や応答性における民族差は, 東アジア諸国間においても, 存在する可能性が指摘されている. そこで, 日中韓薬事関係局長級会合の活動のひとつとして, 日本が主導する形で民族差に関する科学的検討が継続的になされている. 日中韓および白人を対象に3種の医薬品に関して行った臨床薬物動態試験では, 遺伝子多型による層別化と当該医薬品の薬物動態に重要な外的要因を均一化したプロトコトールにより, みかけの民族差は認められなくなることが明らかとなった. また50種以上の機能変化を有する遺伝子多型に関し, アレル頻度の民族差を調査したところ, 東アジア民族間で, 薬物代謝酵素およびトランスポーターについては概して大きな頻度差は認められないものの, 副作用に関連するHLA型では民族差が認められた. これまでの, そして今後の研究成果が, 東アジア国際共同治験の推進による, 東アジアの人々の医薬品アクセス向上に資することを期待する.