著者
豊田 隆謙 佐藤 信一郎 工藤 幹彦 後藤 由夫
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.133-138, 1974-03-31 (Released:2011-08-10)
参考文献数
11

アルギニンによるインスリン分泌にはグルコースの存在が必要である. しかしアルギニンによるグルカゴン分泌にたいしてグルコースがどのように作用しているかは明らかではない. ラット膵灌流実験を行ない, グルコース, 0, 50,150,300mg/dlの存在下でアルギニン作用を検討した.アルギニン注入後2分のグルカゴン値はそれぞれ745±46, 2062±106, 3433±127,510±21pg/nlと増加し, その分泌パターンはグルコース濃度0, 50mg/dlでは1相性であり, 150,300mg/dlの条件下では2相性を示した. アルギニン注入によるインスリン分泌はそれぞれ10.7±1.6, 32.4±3.2, 39.0±3.3, 43.2±3.5ng/dlと増加し, 分泌パターンはグルコース濃度0, 50mg/dlでは1相性, 150,300mg/dlでは2相性を示した. この成績はアルギニンによるグルカゴン分泌にはインスリン分泌にたいするのと同様にグルコースの存在が必要であることを示唆している. 特に興味ある事実はグルコース濃度300mg/dlによってグルカゴン分泌が完全に抑制されるようにみえるが, この条件下でもアルギニンがグルカゴンを分泌させることである. このことから次の三つの可能性が考えられる. (1) グルコースはグルカゴン分泌を抑制するがグルカゴン合成にグルコースは必要ではないか,(2) グルコースによって分泌されるインスリンがα 細胞に影響していないだろうか,(3) アルギニンの膜透過にグルコースが必要なのではないかと云うことである.
著者
木村 まり子 松田 徹 深瀬 和利 奥本 和夫 間部 克裕 鈴木 克典 青山 一郎 堺 順一 斉藤 博 佐藤 信一郎
出版者
The Japanese Society of Gastroenterology
雑誌
日本消化器病學會雜誌 = The Japanese journal of gastro-enterology (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.99, no.2, pp.145-151, 2002-02-01
被引用文献数
20

上腸間膜動脈解離6症例につき検討した.高血圧を4例に認め,危険因子として考慮された.症状の特徴として,背部に放散する高度の腹痛,背部痛,食後の症状増悪,腸雑音の減弱が挙げられた.診断にはCTや腹部超音波検査が有用であった.抗血栓凝固薬で保存的に管理し,4例が改善した.改善しない2例については厳重に経過を観察し,増悪するようなら侵襲的治療を考慮する必要がある.本疾患として加療されていることもあり,腹痛の鑑別診断上忘れてはならない疾患であると考えられた.
著者
佐藤 信一郎
出版者
北海道大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2007

溶液中における光励起分子の振動緩和過程の研究は、光化学反応制御や溶液構造・ダイナミクスとの関連において非常に重要な研究課題である。溶液中の多原子分子の振動緩和過程では、分子内振動再分配(IVR)と分子間振動エネルギー移動(VET)とが時間的に重なり、両者が競合する領域を持った複雑な過程である。我々はこれまで、ペリレン等の多環芳香族分子のVERについて研究をおこなってきた。多環芳香族分子は溶液中においても,吸収・発光スペクトルが比較的シャープであり,振動プログレッションが明瞭であることに着目し,時間分解発光スペクトルをフランクコンドン(FC)解析することで溶液中多原子分子系の実験としては報告例が非常に少ないstate-to-stateのポピュレーション解析に成功している。近年、溶液中での振動緩和過程の研究において、IVRにはサブピコ秒のタイムスケールで起こるfast IVRと、ピコ秒領域のslow IVRの2つが存在することが見出されている。このslow IVRはVETとタイムスケールが接近しており、溶質-溶媒間の弾性的な相互作用により影響を受けるsolvent-assisted IVR(SA-IVR)であると考えられている1,2。本研究では、このSA-IVRについて、溶媒のどのような性質が影響を与えているか詳細を明らかにするため、ペリレンのフェムト秒からピコ秒領域における余剰振動エネルギー緩和過程に対する溶媒効果について蛍光アップコンバージョン法により調べた。