著者
上山 泰史 佐藤 信之助 中島 皐介
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.37, no.4, pp.435-443, 1992-01-31

ヨーロッパ大陸中南部,北アフリカ及び西アジア地域のトールフェスク自生集団及び品種25点を比較3品種(ヤマナミ,ホクリョウ,Fawn)とともに特性評価を行った。ヨーロッパ大陸の自生集団は,主として低標高地自生の早生5系統と高標高地白生の極晩生7系統に区分された。北アフリカ及び西アジアの自生集団及びこれらに由来する13品種・系統は,早生及び中生で,その多くは稈長及び穂長が大であった。季節生産性関連15形質に基づいて主成分分析を行ったところ,第1主成分は生長の盛んな時期,第2主成分は年間の生産力.第3主成分は生育初期における夏季及び秋季の生長と後期におけるそれとの相互関係を反映していると考えられた。北アフリカ及び西アジアの品種・系統は地中海型に属する群で,生長の盛んな時期が低温・短日条件である晩秋から春季に至る期間であり,一般的に夏季の生長が劣った。地中海型は,第2及び第3主成分の分布から,MI群-MIII群に分けられた。ヨーロッパ中南部の系統及び比較3品種は,春季から秋季に至る期間を主たる生長の時期とし,第1-3主成分によってEI及びEIIに分けられた。EI群は出穂性及び季節生産性においてヤマナミ及びFawnと類似し,九州農試の環境条件において最も適応性が高いと考えられた。また,北アフリカ及び西アジアの自生集団及びこれらに由来する品種・系統は,冠さび病抵抗性が極めて優れていた。
著者
上山 泰史 桂 真昭 松浦 正宏 大山 一夫 佐藤 信之助
出版者
農業技術研究機構九州沖縄農業研究センター
雑誌
九州沖縄農業研究センター報告 (ISSN:13469177)
巻号頁・発行日
no.39, pp.1-13, 2001-12

青刈り用エンバクの新品種「はえいぶき」は、暖地、温暖地で8月下旬~9月上旬に播種し年内収穫を育種目標に、秋季に安定して出穂する「Guelatao」を種子親、「ハヤテ」を花粉親として、個体選抜及び系統選抜を行う集団育種法によって育成され、1996年8月に「えん麦農林9号」として登録された。主な特性は次の通りである。秋の出穂日が「アキワセ」よりも3日、「ハヤテ」よりも10日早い極早生で、暖地では年内の収穫時までに乳熟期以降のステージに達する。収穫時の乾物率が高く、九州中部以北では予乾なしで、温暖な九州南部では乾物率の上昇が遅れるため若干の予乾処理で、ロールベールによる収穫・調製が可能である。乾物収量は「アキワセ」よりも高く、収量の安定性にも優れている。草丈は「アキワセ」よりも低く、茎数は多い。葉重割合が低く、草型は立型である。採種栽培での春の出穂及び種子の成熟期は「アキワセ」「ハヤテ」よりも早く、暖地で梅雨入り以前に採種できる。九州・沖縄から関東までの暖地・温暖地で利用でき、各地における播種及び収穫適期は、関東から瀬戸内海地域の暖地でそれぞれ8月下旬、12月上旬、九州北部で8月下旬、12月中旬、九州南部及び沿海部では9月上旬、1月中旬、沖縄で11月上旬、2月下旬である。冠さび病抵抗性や耐倒伏性が高くないので、これらの障害を避けるために適期播種及び収穫を行うことが重要である。播種量は青刈りエンバクの標準的な0.6~1.0kg/aとする。
著者
佐藤 信之助 吉岡 昌二郎
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物学会北陸支部会報 (ISSN:0388791X)
巻号頁・発行日
no.6, pp.11-14, 1972-03-25

1.13種の寒地型イネ科牧草類を用いて生育特性を比較し, 主として北陸の低標高地帯における季節生産性について検討した。2.2カ年合計収量はトールフェスク>オーチャードグラス>リードキャナリーグラスの順に上位を占めたが, 平衡的な季節生産性の点ではトールフェスク, リードキャナリーグラスがすぐれていた。3.上位3草種について検討した結果, 季節的な収量の変動は単位面積あたり茎数および一茎重の変動と関連しているが, それぞれ草種毎に違いが認められ, 特にリードキャナリーグラスの盛夏以降の収量が高い水準で維持されたのがいちじるしく特徴的であった。4.その他の草種では夏枯れの影響がいちじるしく, そのことが季節生産性および維持年限に大きく影響するものとみられた。5.各草種とも雪害による直接的な被害は軽るく, むしろ融雪後の急激な生育の点で季節生産性に大きく影響するものと思われる。