著者
水谷 仁 高橋 眞智子 清水 正之 刈屋 完 佐藤 広隆 芋川 玄爾
出版者
日本皮膚科学会西部支部
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.63, no.4, pp.457-461, 2001-08-01 (Released:2010-09-02)
参考文献数
15
被引用文献数
14 14

アトピー性皮膚炎は,環境抗原に対する湿疹反応とともにIgEの産生過剰を伴うアレルギー性の免疫異常のほか,臨床的に乾燥性皮膚といわれる病態を示す。これは,皮膚バリアー機能に重要な役割を果している角質細胞間脂質であるセラミドが,顕著に減少していることによっていると推測されている。このことは減少したセラミドを外から補うことにより,バリアー機能が改善される可能性があり,さらにはアトピー性皮膚炎の改善が期待できる。天然セラミド2の類縁体である合成擬似セラミドを8%配合したクリームを外用することによる,アトピー性皮膚炎患者の乾燥皮膚に対する効果について,10%尿素クリームを対照として比較検討した。対象はアトピー性皮膚炎患者19例で前腕皮膚へ塗布し,皮膚所見及び総合判定により有用性を判定した。その結果,合成擬似セラミドを8%配合したクリーム使用群はその68%に有用性を認め,対照クリームとの比較でも有意な差を持って有用であった。さらに本試験開始前にダニの貼付試験で陽性であった4例について,試験製剤を4週間使用後に再度貼付試験を実施した。その結果,合成擬似セラミドを8%配合したクリーム使用群では4例すべてが陰性となり,バリアー機能が向上したと考えられた。以上より合成擬似セラミドを8%配合したクリームは,アトピー性皮膚炎患者皮膚に対する日常的なスキンケア剤として有用な製剤であると考えられた。
著者
中村 正 佐藤 広隆 芋川 玄爾 宮地 良樹
出版者
Meeting of Osaka Dermatological Association
雑誌
皮膚 (ISSN:00181390)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.264-269, 2000 (Released:2010-08-25)
参考文献数
5
被引用文献数
1

アトピックドライスキンに対するスキンケア剤使用の有用性を検討するために, 洗浄剤, クリーム及び入浴剤を用いて使用試験を行った. その結果, 角質層セラミド量の増加による皮膚バリア機能の回復が認められた. また, 試験前後の肌状態を観察した結果, ほとんどの症例において乾燥の改善が見られるなど多くの被験者で肌状態の改善が認められ, 高い有用性を示すことがわかった. また, 本試験品に起因する副作用は認められなかった.以上より, 本スキンケア剤は, 日常のスキンケアにおいてアトピックドライスキンの皮膚機能を回復し, 症状の緩和及び悪化防止に有用であることが明らかとなった.
著者
山中 正義 石川 治 高橋 昭彦 佐藤 広隆 芋川 玄爾
出版者
Meeting of Osaka Dermatological Association
雑誌
皮膚 (ISSN:00181390)
巻号頁・発行日
vol.43, no.4-5, pp.278-285, 2001 (Released:2010-08-25)
参考文献数
15

1998年10月から2000年3月にかけて群馬大学医学部附属病院皮膚科を受診したアトピー性皮膚炎患者17例に対して, 「キュレル (R) 薬用クリーム」の臨床試験を実施した。本試験剤はセラミド類似の合成脂質とユーカリエキスを配合したことを特徴とするスキンケアクリーム (医薬部外品) である。6週間の使用試験において, 17例全例において有用性を認めた。また試験剤使用部位の角層内水分量, 経皮水分蒸散量を測定したところ, 試験前と6週間使用後の平均値の差がそれぞれ13.23μS, -7.61g/m2/hr改善されており, 対照剤として用いた20%尿素軟膏との比較でも有意に改善されていた。これらの結果から, 試験剤である「キュレル (R) 薬用クリーム」は皮膚保湿性と皮膚バリア能の改善に優れ, アトピー性皮膚炎患者の無疹部に対するスキンケア剤として有用であると考えた。
著者
細川 治 渡邊 透 佐藤 広隆 真田 治人
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.54, no.11, pp.3551-3559, 2012 (Released:2012-11-30)
参考文献数
37
被引用文献数
3

我が国においてX線を用いた胃がん検診は50年以上続いて来たが,日常臨床においてX線検査が減少したことから今後の持続性が疑問視されている.内視鏡がこれに替わる位置にいるべきだが,円滑な移行にはほど遠く,検診件数は5%に満たない.その最大の理由は胃がん死亡率減少のエビデンスがないことで,僅かずつではあるがこれを証明しようとする試みが行われている.現在の段階では,内視鏡検診がX線検診に比較して胃がん発見率ならびに陽性反応適中率,早期胃がん比率において高く,胃がん1例あたりの発見費用が安価であることを主張して,自治体に働きかけざるを得ない.内視鏡検診は精度管理を行うことが必須であり,苦痛を少なくするために経鼻内視鏡スコープの導入などが必要と思われる.血液検査でリスクを評価して対象を選定する試みは議論の途上にある.