著者
大場 洋子 田中 輝明 佐藤 雅子 横田 勲 瀧川 千鶴子
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.16, no.4, pp.307-314, 2021 (Released:2021-12-10)
参考文献数
25

【目的】終末期がん患者の生存期間ががん治療医の経験に基づく予後予測よりも短い患者側の要因,および死亡までの経過との関連を検討する.【方法】KKR札幌医療センター緩和ケア病棟に予後1〜3カ月として紹介され,その後3カ月以内に死亡退院した終末期がん患者を対象に,後方視的検討を行った.【結果】対象患者249例のうち,実際の生存期間が1カ月未満であった患者は102例(OS1, 41%),1カ月以上3カ月以内の患者は147例(OS1–3, 59%)であった.Japan Coma Scale II以上の意識障害,経口摂取量数口以下を呈する患者がOS1–3に比べOS1で有意に多かった.2日以内で死に至る急な容態変化による死亡はOS1で有意に多かった.【結論】上記要因を持つ患者の生存期間は予測予後より短い可能性があるが,予後の不正確性に与える医師側の要因を検討する必要がある.
著者
岡田 洋子 菅野 予史季 松浦 和代 佐藤 雅子 井上 ひとみ 茎津 智子 三田村 保
出版者
旭川医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

1)子どもの「死の概念発達と関連要因」を明らかにする。2)子どもが日常生活の中で出会う「死」を通して「死」や「死後の世界」をどのように考えているか実態を把握する。3)Death Educationのための指針を開発する目的で調査を実施した。調査対象は、小学校1学年から中学校3学年までの合計2,690名で、地域別では北海道が989名、関東が935名、九州が766名であった。死の概念の構成要素である(1)生物・無生物の識別は、学年(小学1〜3年と小学4〜6年、小学1〜3年と中学1〜3年)、地域(北海道-関東)、性別、学年・性別間と、(2)死の不動性は、学年(小学1〜3年と小学4〜6年、小学4〜6年と中学1〜3年)、地域(北海道-関東、関東-九州)、性別、学年・地域、学年・性別、地域・性別間と、(3)死の不可逆性は、学年(小学1〜3年と中学1〜3年、小学4〜6年と中学1〜3年)、地域(北海道-九州、関東-九州)、性別、学年・性別間と、(4)死の普遍性は、学年(小学1〜3年と小学4〜6年、小学1〜3年と中学1〜3年)、地域、学年・地域、学年・性別間と、(5)時間の概念では、学年(小学1〜3年と小学4〜6年、小学4〜6年と中学1〜3年)、地域、性別、学年・地域、学年・性別間、学年・地域・性別と有意に異なる関連があった。死の概念(5つの構成要素の和)は、学年、地域、性別、学年・地域、学年・性別、地域・性別、学年・地域・性別の全てと有意に異なる関連があることが確認された。つまり小児の死の概念発達は、学年、生活環境、性別による影響を受けており、その結果異なることが考えられる。Death Educationの方略指針の作成において、学年、生活環境、性別等を考慮に入れたプランが必要である。そこでまず、北海道における方略を開発中である。
著者
中丸 幸一 菅井 利寿 木下 宣祐 佐藤 雅子 谷口 偉 川瀬 重雄
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.104, no.6, pp.447-457, 1994 (Released:2007-02-06)
参考文献数
38
被引用文献数
9 7

特発性炎症性腸疾患(IBD)である潰瘍性大腸炎とクローン病に対する治療薬としてメサラジン(mesalazine)顆粒(Pentasa®)が開発された.我々はすでにメサラジン顆粒の実験的大腸炎モデルに対する有効性を見い出した.本研究では,メサラジン(5-aminosalicylic acid)のラジカルおよび活性酸素の消去作用をin vitroの系で,脂質過酸化に対する作用をin vitroおよびin vivoの系で,さらにはロイコトリエンB4(LTB4)生合成に対する作用を検討した.その結果,メサラジンはフリーラジカルである1,1-diphenyl-2-picrylhydrazylを還元し,IC50値は9.5μMであった.また,活性酸素である過酸化水素と次亜塩素酸イオンの消去作用を示し,IC50値はそれぞれ0.7μM,37.0μMであったが,スーパーオキサイド消去作用は示さなかった.さらに,ラット肝ミクロソームでの過酸化脂質の生成を抑制し,IC50値は12.6μMであった.in vivoの系では,幽門部を結紮したラットにおいて,胃を虚血再灌流することで生じる胃粘膜過酸化脂質量に対する効果を検討した.メサラジン25,50mg/kgの胃内投与で十分量のメサラジンが胃粘膜に分布するとともに,用量依存的に過酸化脂質抑制効果を示し,50mg/kgでは有意(P<0.01)であった.ラットの腹腔から採取した好中球でのLTB4生合成に対してメサラジンは抑制作用を示し,IC50値は44.9μMであった.メサラジンの代謝物であるN-acetyl-mesalazineは高濃度(1mM)でLTB4生合成を抑制したが,ラジカル,活性酸素の消去作用および過酸化脂質の抑制作用は示さなかった.以上の成績から,メサラジンは炎症部位で生じる活性酸素を消去することで細胞障害を抑制すること,さらにはLTB4生合成を阻害することで好中球の浸潤を抑制することが示唆された.そして,メサラジン顆粒はこれらの作用機序を介してIBDに有効であることが示唆される.
著者
佐藤 仁樹 佐藤 雅子
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. NLP, 非線形問題 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.113, no.271, pp.47-52, 2013-10-21

高次元非線形最適化問題に対する複数のスパースな近似解を,遺伝的アルゴリズムを用いて導出した.まず,状態変数の番号を遺伝子とした染色体を定義する.次に,高次元非線形最適化問題を染色体で与えられた状態変数のみを変数とする問題に縮小する.縮小された非線形最適化問題の評価関数を染色体の適応度として遺伝的アルゴリズムにより染色体を改良し,縮小された非線形最適化問題を解くことにより,高次元非線形最適化問題に対するスパースな近似解を導出する.この解法を食材及び食材配合量の最適化問題に適用し,食材及び食材配合量を栄養素バランスの目標値に対して最適化した.
著者
小檜山 文子 佐藤 雅子 金子 毅
出版者
The Japan Society for Analytical Chemistry
雑誌
分析化学 = Japan analyst (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.58, no.8, pp.661-665, 2009-08-05
被引用文献数
4

マイクロ抽出法の一つである分散液液マイクロ抽出(dispersive liquid liquid microextraction,DLLME)法により,ベンゾジアゼピン系薬剤であるフルニトラゼパム及びニメタゼパムの低濃度水溶液試料から抽出を行い,ガスクロマトグラフィー質量分析による測定を行った.ベンゾジアゼピン系薬剤に対する抽出溶媒,分散溶媒の種類等の最適条件を検討し,同条件で三環系抗うつ薬剤であるアミトリプチリン及びノルトリプチリン並びにフェノチアジン系薬剤であるクロルプロマジン及びプロメタジンの低濃度水溶液試料についても抽出・測定を行った.更に本手法を用い,アルコール飲料中のフルニトラゼパムの抽出を試みたところ,振とう操作を必要とせず,迅速・高効率な抽出が可能であった.このことから,DLLME法は法化学分野における有用な抽出法の一つであることが認められた.
著者
岡田 洋子 井上 ひとみ 茎津 智子 菅野 予史季 三田村 保 佐藤 雅子
出版者
旭川医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

本研究の目的は、死をタブー視し子どもとの会話を避ける傾向が強い日本社会において、命の大切さや生きること、死についてどのように教え学ぶか、その方略の開発と実践・評価である。対象は協力の得られた小学校の低学年78名、高学年80名、中学生112名の合計270名である。方法は各学年用に作成したDeath-Educationプログラムの実施前および実施後に、「命」「生きること」について原稿用紙1枚程度に記載、提出を願った。分析は提出レポートから(1)コード化を行い、データがどのカテゴリーに属するか(2)サブカテゴリー化(仮説設定過程)を推定し、(3)カテゴリー化を試みた帰納的・記述的方法である。Death-Educationプログラムの作成は、小児看護の立場で行なう目的・指針と認知的発達段階を考慮し作成した。低学年は作成した「命」について考える視聴覚アニメを、高学年は生徒に身近で具体性に富む少年の闘病生活ドキュメンタリーを、中学生は先天性疾患で入退院の経験・障害を有する高校1年生自身による体験談と、骨腫瘍の少年の闘病生活ドキュメンタリーを併用した。倫理的配慮は、中学生には成績に一切関係がない、参加するか否か(途中で出ても)自由である、本人および家族から承諾書にサインを頂き実施した。結果は各学年とも実施前より後の方が1)記載内容が増加、2)一般的知識から感情を伴った表現内容に変化、高学年以上ではさらに3)死と対峙する仲間の闘病生活から(1)そういう仲間の存在をしらないで生きていた自分の発見、(2)健康は当たり前なことではなく、とても大切なことの実感、(3)健康・命の大切さと親への感謝の気持ち、と多くの学び(衝撃)を得ていた。さらに4)死の否定的側面ではなく、生きることに目が向けられていることが確認できた(From Death to Life)。
著者
中丸 幸一 菅井 利寿 木下 宣祐 佐藤 雅子 谷口 偉 川瀬 重雄
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.104, no.6, pp.447-457, 1994
被引用文献数
7 7

特発性炎症性腸疾患(IBD)である潰瘍性大腸炎とクローン病に対する治療薬としてメサラジン(mesalazine)顆粒(Pentasa<SUP>®</SUP>)が開発された.我々はすでにメサラジン顆粒の実験的大腸炎モデルに対する有効性を見い出した.本研究では,メサラジン(5-aminosalicylic acid)のラジカルおよび活性酸素の消去作用をin vitroの系で,脂質過酸化に対する作用をin vitroおよびin vivoの系で,さらにはロイコトリエンB<SUB>4</SUB>(LTB<SUB>4</SUB>)生合成に対する作用を検討した.その結果,メサラジンはフリーラジカルである1,1-diphenyl-2-picrylhydrazylを還元し,IC<SUB>50</SUB>値は9.5μMであった.また,活性酸素である過酸化水素と次亜塩素酸イオンの消去作用を示し,IC<SUB>50</SUB>値はそれぞれ0.7μM,37.0μMであったが,スーパーオキサイド消去作用は示さなかった.さらに,ラット肝ミクロソームでの過酸化脂質の生成を抑制し,IC<SUB>50</SUB>値は12.6μMであった.in vivoの系では,幽門部を結紮したラットにおいて,胃を虚血再灌流することで生じる胃粘膜過酸化脂質量に対する効果を検討した.メサラジン25,50mg/kgの胃内投与で十分量のメサラジンが胃粘膜に分布するとともに,用量依存的に過酸化脂質抑制効果を示し,50mg/kgでは有意(P<0.01)であった.ラットの腹腔から採取した好中球でのLTB<SUB>4</SUB>生合成に対してメサラジンは抑制作用を示し,IC<SUB>50</SUB>値は44.9μMであった.メサラジンの代謝物である<I>N</I>-acetyl-mesalazineは高濃度(1mM)でLTB<SUB>4</SUB>生合成を抑制したが,ラジカル,活性酸素の消去作用および過酸化脂質の抑制作用は示さなかった.以上の成績から,メサラジンは炎症部位で生じる活性酸素を消去することで細胞障害を抑制すること,さらにはLTB<SUB>4</SUB>生合成を阻害することで好中球の浸潤を抑制することが示唆された.そして,メサラジン顆粒はこれらの作用機序を介してIBDに有効であることが示唆される.