著者
松浦 和代 芝木 美沙子 荒 ひとみ
出版者
札幌市立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

平成16年度から平成18年度までに実施した研究活動の概要は、以下の通りであった。わが国の学校トイレの環境衛生と児童の排泄に関する文献研究N II学術コンテンツ・ポータブル(GeNii)の情報ナビゲータを利用し、2005年12月までの研究課題関連文献を検索した。キーワード検索によって得られた総文献数は5000件を越えたが、このうち学校トイレと子どもを対象とした文献は65件であった。文献数の推移から、学校トイレや子どもの排泄に対する社会的関心は1996年以降に高まりを見せた。文献の内容は、実態報告や活動報告が多かった。その背景には、阪神・淡路大震災後の学校トイレ問題や滋賀県栗東中学校の教育荒廃とトイレフレッシュアップ構想、文部科学省による学校トイレの単独改修の認可などの動きがあった。児童の『生活リズム』を見直すモデル事業の実践-ねむり・めざめ・朝ごはん・排便北海道旭川市立近文第二小学校をモデル校として、児童のねむり・めざめ・朝ごはん・排便というわかりやすい健康指標から、児童の生活リズムを見直す健康教育を実施し、モデルプログラムの構築をめざした。平成17年度PTA教育講演会の開催、平成17年度「しっかりねむろう週間」(2週間)の実施、結果のまとめと報告(保健便り)、平成18年度PTA教育講演会、総括とまとめ、を実施した。睡眠週間の実施によって、朝食摂取率、朝の排便率、身体覚醒状況に有意な差が認められた。また高学年になるほど生活習慣の改善が良好であった。この結果は、健康教育の継続が成果を生むことを示唆している。二分脊椎患児の就学およびセルフケアの自立過程における学校トイレ問題社会人として既に自立した二分脊椎患者(女性)1名を対象に、同意を得てインタビューを行い、就学およびセルフケアの自立過程における学校トイレ問題を分析した。1時間40分のインタビュー内容を録音し、逐語録を作成した。抽出されたカテゴリー数は5つであった。それらは、【学校トイレ設備の問題】【休み時間の不足】【自己導尿移行期の母親の心配と葛藤】【同級生から好奇の目を向けられることによるストレス】【校外授業での公衆トイレ問題】であった。以上、研究成果に基づく啓蒙活動にも重きをおき、総説論文・学校トイレガイドライン他を発表した。
著者
岡田 洋子 菅野 予史季 松浦 和代 佐藤 雅子 井上 ひとみ 茎津 智子 三田村 保
出版者
旭川医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

1)子どもの「死の概念発達と関連要因」を明らかにする。2)子どもが日常生活の中で出会う「死」を通して「死」や「死後の世界」をどのように考えているか実態を把握する。3)Death Educationのための指針を開発する目的で調査を実施した。調査対象は、小学校1学年から中学校3学年までの合計2,690名で、地域別では北海道が989名、関東が935名、九州が766名であった。死の概念の構成要素である(1)生物・無生物の識別は、学年(小学1〜3年と小学4〜6年、小学1〜3年と中学1〜3年)、地域(北海道-関東)、性別、学年・性別間と、(2)死の不動性は、学年(小学1〜3年と小学4〜6年、小学4〜6年と中学1〜3年)、地域(北海道-関東、関東-九州)、性別、学年・地域、学年・性別、地域・性別間と、(3)死の不可逆性は、学年(小学1〜3年と中学1〜3年、小学4〜6年と中学1〜3年)、地域(北海道-九州、関東-九州)、性別、学年・性別間と、(4)死の普遍性は、学年(小学1〜3年と小学4〜6年、小学1〜3年と中学1〜3年)、地域、学年・地域、学年・性別間と、(5)時間の概念では、学年(小学1〜3年と小学4〜6年、小学4〜6年と中学1〜3年)、地域、性別、学年・地域、学年・性別間、学年・地域・性別と有意に異なる関連があった。死の概念(5つの構成要素の和)は、学年、地域、性別、学年・地域、学年・性別、地域・性別、学年・地域・性別の全てと有意に異なる関連があることが確認された。つまり小児の死の概念発達は、学年、生活環境、性別による影響を受けており、その結果異なることが考えられる。Death Educationの方略指針の作成において、学年、生活環境、性別等を考慮に入れたプランが必要である。そこでまず、北海道における方略を開発中である。
著者
蝦名 智子 松浦 和代
出版者
日本母性衛生学会
雑誌
母性衛生 = Maternal health (ISSN:03881512)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.111-118, 2010-04-01
参考文献数
16
被引用文献数
1

本研究は,思春期後期における月経・月経随伴症状の実態,セルフケアの実態,月経教育の実態と今後の課題を明らかにすることを目的とした。第1〜3学年の女子高校生421名を対象に質問紙調査を行い以下の結果を得た。1.対象の平均年齢は16.3歳であった。初経が発来しているものは約99%であり,平均初経年齢は11.9歳であった。2.MDQ(Menstrual Distress Questionnaire)得点から,思春期女子の月経随伴症状は,先行研究に比較して強くなっていることが示された。月経随伴症状は,経血量が「多い」群と,月経の不安・悩みが「ある」群で強く有意の差があった。3.月経の記録を記入しているものは132名(40.2%)であり,月経の記録を記入しているものの割合は,学年進行に伴い有意に高かった(p<0.001)。4.月経に関する教育内容のうち受けたことがない割合が高かった項目は,「月経前症候群」26.9%,「月経の記録と観察」23.0%,「基礎体温の測定と記録」20.9%,「月経中の生活」20.3%,「月経異常」17.6%であった。5.月経教育の実態から,今後の思春期後期における月経教育の重点課題は,1)月経随伴症状の理解,2)月経の観察と記録,3)基礎体温の測定と記録であり,対象者の行動変容をねらいとした教育方法の改善が望まれる。
著者
松浦 和代
出版者
北海道大学大学院教育学研究院
雑誌
北海道大学大学院教育学研究院紀要 (ISSN:18821669)
巻号頁・発行日
vol.109, pp.93-107, 2009-12-21

新人看護師の職業性ストレス反応が,自己決定型学習の準備性によって受ける影響度を,他変数との比較から明らかにすることを目的とした。対象は新人看護師233名,調査方法は無記名自記式質問紙法であった。調査内容は,個人要因,職業性ストレス,および自己決定型学習の準備性を測定する尺度(日本語版SDLRS)から構成した。その結果,心理的ストレス反応要チェック群は24.5%,身体的ストレス反応要チェック群は18.0%であった。両ストレス反応要チェック群は全体の9.9%を占めており,これは新人看護職員の入職後1年以内の離職率9.3%に近似する値であった。また,自己決定型学習の準備性の高さは,(1)心理的ストレス反応の抑制要因であり,(2)心理的ストレス反応要チェック群を判別するうえで指標となる5要因のひとつであった。さらに,先行研究との比較から,新人看護師は看護学生よりも自己決定型学習の準備性を低下させており,入職後1~2年間はこの能力が上昇に転ずることはなく,特に学習への愛着・エネルギッシュな自己イメージ・将来に対する前向きな姿勢の3因子が低いことが特性であった。これらの点を根拠とした新人看護師の入職後早期離職防止対策が重要である。
著者
吉川 由希子 松浦 和代 三上 智子
出版者
札幌市立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

北海道内に居住している障がい児の在宅ケア支援の社会資源は、小児を受け入れている訪問看護ステーションや介護事業所、レスパイト施設などは都市部に集中していた。また、家族からの聞き取り調査では、自治体によって在宅ケア支援への対応が異なっていた。今回の研究期間では実態調査とモデルの検討段階にとどまったため、継続して地域の特性を生かした在宅ケア支援ネットワークモデルを展開していく。