著者
倉地 真太郎
出版者
北ヨーロッパ学会
雑誌
北ヨーロッパ研究 (ISSN:18802834)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.1-11, 2018 (Released:2019-07-01)

デンマークは高負担税制を維持する国の一つである。しかし、デンマークは1970年代初頭に反税政党・進歩党による所得税廃止運動を経験した国でもある。1980年代以降、反税政党の勢いは衰えたが、代わりに極右政党・デンマーク国民党が台頭し、2001年11月国政選挙で第三政党まで躍進した。本稿では、極右政党の台頭がデンマーク税制に与えた影響を明らかにするため、2004年税制改革の政治過程を分析した。2004年税制改革は、労働所得税減税だけでなく選別主義的な高齢者手当が導入されたが、これはデンマーク国民党にとって移民高齢者に恩恵が行き渡らないようにすることが狙いであった。
著者
宮崎 雅人 倉地 真太郎 古市 将人 安藤 道人
出版者
埼玉大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2020-04-01

本研究は戦前の日本を対象とした都市財政研究の限界を踏まえ、歴史的にも貴重な都市歳入歳出決算書(市政専門図書館所有)のデータを用い、中小都市も射程に入れた戦前日本の地方財政の全体像はどのようなものであったかを明らかにしようという試みである。具体的には、都市決算データを用いた記述統計分析によって六大都市以外の都市の特徴を明らかにするだけでなく、デジタル化した資料を元に都市パネルデータを構築した上で、戦前日本におけるいくつかの重要な制度の導入・変更や政策実施の財政的な影響や、社会に与えたインパクトを記述統計分析と計量経済学的分析によって明らかにする。
著者
倉地 真太郎
出版者
日本財政学会
雑誌
財政研究 (ISSN:24363421)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.143-162, 2014 (Released:2021-10-26)
参考文献数
33

本稿の目的は,北欧諸国の税制改革に及ぼす北欧協力関係の影響を明らかにすることである。1980年代後半以降,北欧以外の先進諸国が包括的所得税を追求するなか,北欧諸国は二元的所得税を連鎖的に導入していった。二元的所得税は経済のグローバル化に対抗する所得税類型であるといわれている。したがって,この課税方式の波及プロセスの分析は,高い所得税収を有する北欧諸国税制がどのようにして共通する特徴を持ったのかを明らかにすると考えられる。そこで本稿では北欧諸国の協力関係に着目しながら,デンマークとスウェーデン間で二元的所得税が波及するプロセスを分析した。その結果,二元的所得税の波及には,北欧諸国の政策担当者や専門家が制度を相互参照したことが影響を及ぼしていたことが分かった。
著者
倉地 真太郎
出版者
北ヨーロッパ学会
雑誌
北ヨーロッパ研究 (ISSN:18802834)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.53-63, 2021 (Released:2022-07-03)

本研究は、デンマークにおけるコロナ下のレジリエンス(危機時の行政・政府の能力や回復力)を、財政と財政をめぐる政治的合意システムの観点から検討することを目的とする。多くの先進諸国はコロナ対策として、類を見ない規模の財政措置を実施してきた。本稿で取り上げるデンマークは一時的な現金給付や付加価値税減税を実施するのではなく、所得保障制度を活用しつつ、政労使の合意により賃金補償を行うなど、既存のセーフティネットを利用・充実させることで雇用を維持している。その結果もあり、政府の対応は有権者から高い評価を得ている。 地方財政に目をむけると、デンマークでは毎年度行う地方財政計画の政府間合意によって地方政府にミクロレベルでの財源保障を行うことができている。また、これらの措置や対策が比較的早いスピードで、労働組合全国連合や地方政府代表組織を巻き込んだ緊密なインフォーマルな協力関係のもとで統合的な意思決定を行ったことも特徴的である。
著者
倉地 真太郎
出版者
北ヨーロッパ学会
雑誌
北ヨーロッパ研究 (ISSN:18802834)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.1-11, 2018

デンマークは高負担税制を維持する国の一つである。しかし、デンマークは1970年代初頭に反税政党・進歩党による所得税廃止運動を経験した国でもある。1980年代以降、反税政党の勢いは衰えたが、代わりに極右政党・デンマーク国民党が台頭し、2001年11月国政選挙で第三政党まで躍進した。本稿では、極右政党の台頭がデンマーク税制に与えた影響を明らかにするため、2004年税制改革の政治過程を分析した。2004年税制改革は、労働所得税減税だけでなく選別主義的な高齢者手当が導入されたが、これはデンマーク国民党にとって移民高齢者に恩恵が行き渡らないようにすることが狙いであった。
著者
倉地 真太郎
出版者
後藤・安田記念東京都市研究所
雑誌
都市問題 (ISSN:03873382)
巻号頁・発行日
vol.110, no.12, pp.84-102, 2019-12

本稿の目的は、デンマークの地方財政制度、特に地方政府における地方税率の決定方式を予算協調制度との関係から明らかにし、地方政府の課税自主権について考察することである。OECD 諸国の中で、デンマークの地方政府の課税自主権(税率操作権)は、他の北欧諸国と同様に強いといわれる。また、「8 割自治」と称されるように、豊富な地方税収によって高い自主財源比率が達成されている。デンマークの地方税収はそのほとんどが地方所得税によって占められており、8 割以上の納税者は所得税のうち地方所得税と社会保障拠出金のみを支払う