- 著者
-
倉地 真太郎
- 出版者
- 日本財政学会
- 雑誌
- 財政研究 (ISSN:24363421)
- 巻号頁・発行日
- vol.10, pp.143-162, 2014 (Released:2021-10-26)
- 参考文献数
- 33
本稿の目的は,北欧諸国の税制改革に及ぼす北欧協力関係の影響を明らかにすることである。1980年代後半以降,北欧以外の先進諸国が包括的所得税を追求するなか,北欧諸国は二元的所得税を連鎖的に導入していった。二元的所得税は経済のグローバル化に対抗する所得税類型であるといわれている。したがって,この課税方式の波及プロセスの分析は,高い所得税収を有する北欧諸国税制がどのようにして共通する特徴を持ったのかを明らかにすると考えられる。そこで本稿では北欧諸国の協力関係に着目しながら,デンマークとスウェーデン間で二元的所得税が波及するプロセスを分析した。その結果,二元的所得税の波及には,北欧諸国の政策担当者や専門家が制度を相互参照したことが影響を及ぼしていたことが分かった。