著者
渡辺 豊子 大喜多 祥子 福本 タミ子 石村 哲代 大島 英子 加藤 佐千子 阪上 愛子 佐々木 廣子 殿畑 操子 中山 伊紗子 樋上 純子 安田 直子 山口 美代子 山本 悦子 米田 泰子 山田 光江 堀越 フサエ 木村 弘
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.32, no.4, pp.288-295, 1999
参考文献数
15
被引用文献数
5

腸管出血性大腸菌O157食中毒を予防するためには,牛ひき肉を用いたハンバーグの焼成においては、内部全体が75℃に到達する必要がある。しかしその到達を判断する方法は明確ではない。そこで,焼成中のハンバーグ内部の最低温度と,流出する肉汁の状態との関係を明らかにすることによって,一般家庭の調理において,食品衛生上安全なハンバーグを焼くことが出来るよう,ハンバーグの焼き終わりを検討した。1個100gのハンバーグ3個をガスオーブン230℃で焼成し,焼成中にハンバーグ内部6点の温度を測定した。また6分・9分・12分・15分・18分間の焼成後,直ちに一定の厚さ圧縮して肉汁を採取し,その色や濁りを観察して以下の結果を得た。1) ハンバーグの最低温度は6分間の焼成では44℃,9分間の焼成では55℃と低く,両者の汁液は赤みが強く濁りもあった。2)12分間焼成したハンバーグの最低温度は66℃であり,その汁液は茶褐色を呈したが,透明な油脂と混じって流出するため濁りを見定め難く,透明と判断される可能性があった。しかし注意深く観察すると濁りが確認された。なお,内部には余熱によっても75℃に達しない部分があり,食品衛生上安全であるとは言えなかった。3) 15分間焼成したハンバーグは食品衛生上安全(最低温度は75℃)であると判断された。その汁液は黄色みを帯びて透明であった。従って透明な肉汁の流出は75℃到達の指標になることが確認できた。4) ハンバーグを軽くおしたときに流出する肉汁の量・ハンバーグ表面の焼き色・断面の色・硬さで75℃到達を判断するのは難しいと思われる。5) 官能検査において,15分間焼成したハンバーグの焼き加減は適切であるとされた。以上より,おいしさと安全性の両面からみて,ハンバーグの焼き終わりは「肉汁の赤みが完全に消失して,透明になったことを確認した直後」が適切である。オーブンの種類やハンバーグの大きさなど焼成条件が異なると,焼成時間と内部温度の関係も変化する。しかし、内部温度と肉汁の色や濁りとの関係は変わらないので,「肉汁の色や濁りを見て焼き終わりを判断する」と言われることは,牛ひき肉ハンバーグに対しては有効であると思われる。
著者
八木 千鶴 大喜多 祥子 奥山 孝子 樋上 純子 細見 和子 山本 悦子 米田 泰子 渡辺 豊子
出版者
The Japan Society of Cookery Science
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.48, no.2, pp.112-121, 2015
被引用文献数
1

微細米粉を用いたスポンジケーキ生地とスポンジケーキの物理的特性を,小麦粉を用いた場合と比較することによって明らかにした。<br> 1. DSC曲線では糊化エンタルピー変化は米粉の方が大きく,デンプンを充分に糊化するための熱量は,米粉の方が小麦粉より多く必要であった。<br> 2. 米粉スポンジケーキ生地の粘度は小麦粉スポンジケーキ生地より小さかった。<br> 3. 焼成時の内部温度は,加熱初期には米粉スポンジケーキ生地の方が小麦粉スポンジケーキ生地より高かったが,加熱後半には低くなり,米粉スポンジケーキの焼成時間は小麦粉スポンジケーキより長くかかった。<br> 4. 米粉スポンジケーキは小麦粉スポンジケーキより,質量は軽くなったが形状はほとんど差がなかった。また,米粉スポンジケーキの内部は軟らかかったが上面端部は硬かった。<br> 5. 官能評価の結果,米粉スポンジケーキは上面端部が硬く甘いため好まれなかったが,米粉スポンジケーキの内部は小麦粉スポンジケーキに比べ劣るものではないと考えられる。
著者
米田 泰子 加藤 佐千子
出版者
調理科学研究会
雑誌
調理科学
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.31-38, 1994
被引用文献数
3

玉露、煎茶、水出し煎茶、ほうじ茶、番茶、烏龍茶について浸出時間と煎出回数を変化させてそれらの浸出液中のカフェイン及びタンニン溶出量を測定し、これらの茶湯中濃度の違いと官能検査結果との関連性を検討し以下の結果を得た。1.玉露は0.5、1、2、3分浸出のものについてはカフェイン、タンニン濃度は共に2煎に高くなるが、浸出時間が4分以上になると2煎よりもむしろ1煎に高くなったのに対し、官能検査での苦味や渋味の感じられ方は1~3煎までほとんど変わりなく普通と評価された。全体の味や好みは1煎が最も強く、好まれ、煎を重ねるに従い弱く好まれないと考えられる。2.煎茶では0.5、1分浸出のものは2煎にカフェインが、0.5、1.2分浸出のものは2煎にタンニンの濃度が高く、2、3、4分、又3、4分の浸出のものはそれぞれ1煎に高い。官能検査の苦み、渋みは1、2煎共に同程度の強さで感じられ、3煎に弱く感じられた。官能検査の全体の味の強さは煎を重ねるに従い薄くなったが好みでは1、2煎が評価同程度で3煎ではやや好まないとされた。3.ほうじ茶、番茶では番茶のタンニン濃度の0.5、1分浸出以外はカフェインやタンニン濃度は1煎に高くなり、官能検査の苦みや渋みも1煎が強く感じられ、煎を重ねるに従い弱く感じられた。好みでは煎茶と同傾向であった。4.ウーロン茶のカフェイン及びタンニンの濃度はほうじ茶や番茶と同結果であったが、官能検査では全体の味が強く感じられる1煎は好まれず、2煎が最も好まれたと考えられる。5.ほうじ茶、番茶などの下級茶の方がカフェイン及びタンニン濃度と苦み、渋み、旨味、好みとの間に正の相関関係があり、上質茶よりもカフェインやタンニン濃度によって味が左右されやすいと考えられる。一方、烏龍茶ではカフェイン、タンニン濃度と好みの間に負の相関があり、これらの濃度が高い場合は好まれない傾向にあった。
著者
大喜多 祥子 石村 哲代 大島 英子 片寄 眞木子 阪上 愛子 殿畑 操子 中山 伊紗子 中山 玲子 樋上 純子 福本 タミ子 細見 和子 安田 直子 山本 悦子 米田 泰子
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, pp.224-233, 2004-05-20
被引用文献数
3

O157食中毒予防の観点から,ハンバーグ焼成方法の実態および問題点を把握するために,一般家庭の調理担当者を対象としたアンケート調査を行った。また,料理書などの文献の記載について調査した。その結果,1)一般家庭におけるハンバーグは,手作りする者が圧倒的に多く,肉は牛掻き肉が用いられる機会が多かった。2)加熱器具はフライパンを用いる者が圧倒的に多かった。しかし,蓋無しや加熱時間10分など,明らかに加熱不充分と推測される焼成を行っている者が相当数存在した。オーブンを用いる者は少ないが,設定温度や時間から見て,加熱不充分と推測される者が少なくなかった。3)焼き終わりの判断の指標は,「透明な肉汁」とする者が最も多かった。しかし,濁った肉汁や赤い肉汁を指標とする者,切り口の状態,加熱時間や押した感じなど,明らかに安全性に問題のある判断方法に頼っている者がかなり存在した。4)「O157による食中毒の発生以来食品の扱いや調理方法に注意している」と回答した者は約79%あったが,O157に対して75℃以上1分間の加熱が必要であることの認識は低かった。実際の調理においてはO157への関心の強さが安全性の高い調理操作に反映していることが確かめられた。5)ハンバーグの焼き方を学校の調理実習で教わったものが,必ずしも安全性の高い調理操作を行っているとはいえなかった。6)上記の調査結果(1999年)に対し3年後の2002年に実施した追跡調査においては,澄んだ肉汁を焼き終わりの指標とする者は増加傾向にあった。しかし,依然として不適切な方法をとる者が多い。フライパンで焼成する場合の蓋使用についても普及していない状況が確かめられた。7)文献調査の結果,焼成方法については記載が曖昧であり,特に焼き終わりの判断方法については触れていない文献がほとんどであった。以上,今回実施したハンバーグの調理方法の実態調査結果,および現在出回っている数多くの料理書などの記述などから見て,一般家庭で調理されているハンバーグは食品衛生上問題がないとは言い切れない実情が明らかとなった。O157による食中毒は大発生をみた1996年以降も例年発生し死者も見られている(厚生労働省2003)。そこで筆者ら焼く分科会としては,現在までに得られた一連の実験結果から,以下の点を全体的なまとめとして,一般の注意を促したいと考える。1.ハンバーグの焼成にあたっては,食品衛生上,内部温度が75℃以上,1分間加熱されることが不可欠であることを認識する必要がある。焼く分科会による実験結果によれば,これをクリアできる焼成条件は,1OOg大の場合ガスオーブンでは230℃で15分以上である。なお,フライパンについての詳細は次報に報告する。2.ハンバーグの焼き終わりを透明な肉汁で判定する方法は,内部温度が75℃に到達していることを確認するうえで有効な方法と言える。焼き色,弾力性,加熱時間,断面などで判定する方法は,内部温度との関連性から見て,必ずしも安全性の指標とは成り得ないことに留意する必要がある。3.現行の学校教育で用いられている教科書や,市販の料理書の記述においては,従来,おいしさの追求が主体であり,食品衛生上の安全性に言及したものはほとんど見当たらない。これらの内容が一般の調理担当者に及ぼす影響の大きさを考えた時,今後は,安全性を視野に入れた焼成方法や焼き終わりの判定方法についての正しい記載が徹底されることが望まれる。
著者
米田 泰子 加藤 佐千子
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
調理科学 (ISSN:09105360)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.31-38, 1994-02-20 (Released:2013-04-26)
参考文献数
11
被引用文献数
4

In order to discover the correlation between the concentration of caffeine and tannin released by brewing tea and the result of the palatability, as for gyokuro, sencha, mizudasisencha, hojicha, bancha, oolong-tea, we brewed each tea three times and measured the amounts of caffeine and tannin in each different brewing period.1. Gyokuro; The second infusion exuded more caffeine and tannin when it was steeped for 0.5,1,2,3 minutes. And the first infusion exuded more when it was steeped 4 minutes. But in the palatability of each brewing tea there were little differences on the degree of bitterness and astringency. The total taste of the first infusion was the strongest and most preferred.2. Sencha; The second infusion exuded the most caffeine and tannin when it was steeped for 0.5,1 minute. The first infusion exuded them most when it was steeped for 3 or 4 minutes. The bitterness and astringency in the first infusion were as mush as the second infusion and in the third infusion were weaker. The more the tea was rebrewed the weaker the taste got.3. Hojicha, bancha; The first infusion exuded more caffeine and tannin (except 0.5,1 minutes steeped one), and the bitterness and astringency were stronger.4. Oolong-tea; As for the concentration of caffeine and tannin the result was the same as hojicha, bancha. The first infusion with the strongest total taste was not preferred. The second one seemed to be favoured.5. The lower quality teas have a positive correlation between the concentration of caffeine and tannin and bitterness, astringency, umami and popularity. Their tastes seem to be more affected by the concentration of caffeine and tannin. Oolong-tea has a negative correlation between the popularity and the concentration of caffeine and tannin.
著者
河野 篤子 桐村 ます美 坂本 裕子 湯川 夏子 米田 泰子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成24年度日本調理科学会大会
巻号頁・発行日
pp.88, 2012 (Released:2012-09-24)

【目的】平成21年、22年度日本調理科学会特別研究において行事食・通過儀礼の全国調査をおこなった。昨年の行事食と同様に、京都府出身の学生世代(10~20代)と親世代(40~50代)における通過儀礼と儀礼食の認知状況、経験等の差を明らかにすることを目的とした。 【方法】日本調理科学会特別研究の全国統一様式の質問用紙を使用し、近畿の大学・短期大学に在学する学生、その家族ならびに地域住民にアンケート調査をおこなった。そのうち、10年以上京都に在住している学生世代191名、親世代115名を対象とし、通過儀礼の認知・経験および儀礼食の喫食経験の世代間比較をおこなった。 【結果】通過儀礼の認知度を世代間で比較すると、お七夜、百日祝い、初誕生、厄払いは学生世代で低かった。次に認知に対し、経験している者の割合を比較すると、七五三、誕生日は両世代で9割以上であり、それ以外は葬儀、法事を除き、学生世代で低かった。儀礼食は、餅類の喫食は両世代ともに低かったが、赤飯、小豆飯等は世代間で差はみられたものの、両世代ともに喫食されていた。法事の料理は、両世代で精進料理より精進料理以外を喫食する機会が多いことがうかがえた。七五三、誕生日は両世代ともに9割が千歳あめ、ケーキを喫食していた。人生の初期から成年にかけての儀礼の多くは、学生自身が体験していても記憶していない、未体験である、または親戚との関わりの減少が考えられたが、葬儀、法事は現在も親族の重要な通過儀礼であり、赤飯、小豆飯等は主要な儀礼食であることが確認できた。
著者
坂本 裕子 桐村 ます美 豊原 容子 福田 小百合 湯川 夏子 米田 泰子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.31, 2019

<p>【目的】平成24・25年度特別研究として京都府下の昭和30〜40年代の家庭の食について行った聞き取り調査から,副菜の地域別特徴を探った。</p><p>【方法】京都府下の北部(丹後,舞鶴,丹波),京都市内,南部(京田辺,宇治田原)の地域において,64歳から84歳の計22名を対象として平成25年12月〜平成26年2月に聞き取り調査を行った。これより地域別に副菜の特徴を比較検討した。</p><p>【結果および考察】各地域とも季節ごとに地元で採れる野菜や山菜,芋,豆を中心に,日々の副菜を作っていた。北部や南部では野菜や豆は自給自足,市内では店での購入が多かった。調理法としてはお揚げと炊く煮物,和え物,汁物が多く,大根をはじめ野菜はさらに多様な漬物や干し物にして保存性を高め料理に利用していた。古漬け沢庵はひと手間をかけ,「ぜいたく煮」として府下それぞれで食べられていた。野菜や芋の煮物は全域で「○○の炊いたん」と呼んでいたが,わかめ等の海産物利用は北部の海寄りで多くみられた(料理例「わかめのパ−」)。</p><p>地域別に料理をみると,汁物は北部で「けんちゃん」,京都市内,南部で「粕汁や若竹汁」が,和え物は北部で「白なます」,市内で「ずいきのごま酢和え」,南部で「古老柿なます」が,常備菜は北部で「ふき味噌や黒豆味噌」,市内で「きごしょうの炊いたんや山椒とちりめんじゃこの炊いたん」が作られていた。漬物は「糠漬」が多いが,市内の北では「すぐき漬やしば漬」も作られていた。保存性を増すとともに,多く収穫した時は南部では「きゅうりとお揚げの炊いたん」を作るなど食材の有効利用が図られていた。福知山では豆,京田辺では田辺ナスを利用した料理が多く見られ,京野菜や地域の特産野菜の利用が進められた。</p>
著者
根立 恵子 石井 幸江 米田 泰子 由比 ヨシ子
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.45, no.3, pp.215-222, 2012 (Released:2014-02-28)
参考文献数
27
被引用文献数
4

食生活管理者を目指している女子大学生224名を対象として,魚類や肉類の利用状況と,食経験や居住環境がその利用状況にどのように影響するかを調べた。 育った環境が海から離れていても,新鮮な魚類を食べて育つという食経験が,魚類に対する嗜好を高めていた。調理技術の伝承は家庭が多くの役割を担い,魚料理では53.6%,肉料理は62.9%の学生が母・祖母から伝承されていた。学校教育の関与も見られ,魚料理は27.7%,肉料理は18.8%の学生が学校からと答えた。 魚類や肉類の摂取頻度に居住形態が影響し,1人暮らしの学生は豚肉と鶏肉を多く食べる傾向にあった。自宅生は比較的魚類,牛肉の利用が多かった。居住形態によって使われる調理操作も多少異なり,自宅生は魚類では生,牛肉では焼く,鶏肉では揚げる操作を比較的多く使っていた。1人暮らしの学生は魚類,肉類ともにフライパンがあれば調理が可能なソテーを多く使い,揚げる操作の利用は少なかった。
著者
東根 裕子 阪上 愛子 澤田 参子 山本 信子 米田 泰子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.19, pp.129, 2007

<BR><B>【目的】</B><BR> 若い世代を中心に日本人の魚離れが進んでいるとの報告(2006年度水産白書)もあるが、瀬戸内海、太平洋、日本海に囲まれた近畿地方は、昔から豊かな魚介類の食文化を築いてきた。そこで魚介類の種類とその調理方法の現状を明らかにする目的で調査を実施した。本調査は、平成15・16年度日本調理科学会特別研究「調理文化の地域性と調理科学-魚介類の調査-」の一環として行ったものである。<BR><B>【方法】</B><BR> 上記特別研究の調査用紙と調査方法に基づき、面接、または自記方式によった。調査項目は、利用する魚介類、入手方法、料理名、調理方法、調味料、季節、行事食等である。調査時期は、2003年9月から2004年8月、調査対象者は近畿2府4県に居住する164名で、居住地域により都市型86名、農村型54名、漁村型24名に分類し集計した。<BR><B>【結果】</B><BR> 記載された料理数の一人当たりの平均値は、都市型84、農村型67、漁村型81であった。魚介類の入手方法については、「大部分を自家の者が漁獲」「大部分を購入」「もらうあるいは調理したものしか買わない」の状況は、都市型(1%,92%,4%)、農村型(0.6%,91%,5%)、漁村型(9%,79%,3%)であった。「もらう、調理したものしか買わない」ものは、いかなごの釘煮・鮎の甘露煮などの加工品であった。利用している魚介類は、どの地域においても出現数が多かったのはいかであり、いわし、えび、さば、あじ、さけ、たい、などが続く。出現数に地域性が見られたものは、都市型のたらこ・めんたいこ、農村型のたら、ししゃも、かずのこ、漁村型では、たちうお、かます、とびうお、えそ、かんぱちなどであった。
著者
渡辺 豊子 石村 哲代 大喜 多祥子 大島 英子 片寄 眞木子 阪上 愛子 殿畑 操子 中山 伊紗子 中山 玲子 樋上 純子 福本 タミ子 細見 知子 安田 直子 山本 悦子 米田 泰子
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.37, no.3, pp.273-282, 2004-08-30 (Released:2013-04-26)
参考文献数
17

強制対流式ガス高速オーブンを使用してカスタードプディングを加熱し,加熱時の中央部5点の温度履歴からプディング内温度分布や凝固温度を調べた. またオーブン皿に注入する湯量に着目し,湯量の相違が温度上昇速度やプディング品質に及ぼす影響を調べた. 1.プディング内における最低温度点は,型中央で底から10mm付近にあると推察された. この点はプディング液高さの底から1/4付近であり,プディングは底方面よりも上方面からの伝熱を強く受けた. 2.本実験条件では,プディング液の熱凝固開始時の中央部温度は76~77℃ であり,凝固完了時の中央部温度は80~82℃ であった. 3.湯量の相違はプディングの温度上昇速度に影響し,湯量を多くするほど,湯の温度までは温度上昇速度が速くなり,湯の温度以降は温度上昇速度が遅くなった. 4.湯量を多くするほどプディング液の凝固が起こる温度帯での温度上昇速度は遅くなり,プディングの離漿量は少なくなる傾向がみられ,プディングの食感はやわらかくねっとりした. 5.湯量を多くするほど型接着部の温度上昇は抑えられ,中央部と型接着部の温度差が小さくなって,表面にすだちのないプディングとなった. 6.本実験条件では,湯量3/3の場合に良好なプディングが得られた. このときの温度上昇速度は, 60℃から緩慢期到達点までは22℃/分,緩慢期は0.4℃/分であった. 本研究の一部は,日本調理科学会近畿支部第29回研究発表会(東大阪短期大学2002年7月6日)において発表した.
著者
湯川 夏子 桐村 ます美 河野 篤子 坂本 裕子 米田 泰子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.22, pp.190, 2010

【目的】行事食の現状を明らかにするため、平成21、22年度の日本調理科学会特別研究として近畿2府4県において、行事食の認知状況および摂取状況等の調査を行った。本報では、京都府出身学生家庭における年末年始の行事食の現状と、学生とその親世代の食経験の比較を行った結果を報告する。<BR>【方法】2009年12月~2010年4月、近畿2府4県の大学に在籍する学生およびその家族を対象として質問紙調査を行った。日本調理科学特別研究の全国統一様式の質問紙を使用し、集合自記法および留置法にて行った。京都出身者の学生182名とその家族(親世代)90名を解析対象とし、「正月」「人日」「大みそか」の行事食に関して集計・解析した。<BR>【結果】正月料理の食経験は学生・親世代ともに全体的に高かった。しかし、屠蘇、数の子、田作り、昆布巻き、煮しめ、なますについて、有意に学生の食経験率が低かった。親世代は、お節料理9品目のうち、8品目は「毎年食べる」と回答した人が6割以上いたが、なますは「食べなくなった」と回答した人が多かった。その他に、棒だら、たたきごぼう、くわいがよく食べられていた。お節料理は全体的に、家庭で作る割合が減少し、購入する割合が増加していた。雑煮は、約6割が白味噌、約3割がすましであり、ほかに赤味噌や小豆の雑煮が見られた。七草は、行事の認知度は高いものの、七草粥の食経験は学生で約6割であり、親世代との有意差がみられた。年越しそばは多くの家庭で喫食率が高かった。<BR> 以上の結果より、年末年始の行事食は、親子の世代間において食経験の較差がみられると共に、家庭で作る行事食が減少しつつある現状が明らかとなった。
著者
坂本 裕子 桐村 ます美 河野 篤子 湯川 夏子 米田 泰子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.26, 2014

<b>【目的】</b>平成21,22年度日本調理科学会特別研究で「行事食・通過儀礼食」の全国調査をおこない、京都府において行事や儀礼の認知度や経験度、またそれらに関わる食の喫食状況について世代間や地域差の検討をおこない報告した。またハレの食事にかかせない赤飯・餅・寿司・団子について調べ、行事食・通過儀礼食における米の利用状況の違いを明らかにした。今回はこれまでの結果をふまえ、行事や通過儀礼における家庭での食の調理状況や入手方法の解析から、行事食・通過儀礼食の伝承について比較検討することを目的とした。<br><b>【方法】</b>平成21年12月~22年3月に日本調理科学会特別研究の全国統一様式の質問用紙を用い留置法で調査を実施した。10年以上京都府に在住する者を調査対象とし、行事食では調理状況や食べ方について以前と現在の状況、子世代(10・20歳代)191名と親世代(40・50歳代)115名について世代間の比較をおこなった。また京都市内とその南北で地域差がみられるため地域の状況も比較検討した。<br><b>【結果】</b>両世代で「家庭で作る」と答えた者の割合が高いものは、雑煮、七草粥、上巳の寿司、冬至のかぼちゃ、年越しそばであった。以前と現在の入手方法をみると、「家庭で作る」から「買う」への増加がみられるものがある一方で、差がないもの、減少する割合に比べ「買う」の増加がわずかのものがみられ、全体に喫食自体が減る中、調理技術の伝承が難しい傾向がうかがわれた。行事食、通過儀礼食ともに最も「家庭で作る」割合が高い傾向にあるのは北部地域であったが、3地域ともに現在は「家庭で作る」割合が減少傾向にある。三世代同居家庭の方が認知度、経験度が高い結果にあったが、核家族化の進行もありさらに次世代へ伝承されにくい状況が進むと考えられる。
著者
豊原 容子 桐村 ます美 河野 篤子 坂本 裕子 福田 小百合 湯川 夏子 米田 泰子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.27, 2015

【目的】日本調理科学会平成24~25年度特別研究「次世代に伝え継ぐ日本の家庭料理」の一環として、京都府下の昭和30年~40年代の家庭の食についての聞き取り調査を行った。この調査結果から、京都府全体に共通する家庭料理の特徴について明らかにすることを目的とした。 【方法】日本調理科学会特別研究の調査ガイドラインに基づき、北部海岸沿いの丹後地区と舞鶴地区、中部の丹波地区、京都市内、南部平野部の京田辺地区、南部山間部の宇治田原地区の6地区の64歳から84歳の計22名を対象として、平成25年12月~平成26年2月に聞き取り調査を行った。この調査内容から、京都の家庭料理の特徴について検討した。 【結果】京都の家庭料理において、「倹約(しまつ)」を旨として材料を活かし使い切る工夫がさまざまになされていた。日常は、自家製の味噌を使った味噌汁、野菜や豆の炊いたん、切り漬けやどぼ漬けなどの漬物といった、季節の野菜、採集した野生の動植物、また自家製の乾物や加工品などを主材料とした料理を組み合わせて食べていた。これらの料理には、高価な昆布や鰹節のだしは使わず、煮干しが使われた。さらに野菜の炊いたんには、じゃこや油揚げなどを取り合わせおいしく食べる工夫がなされていた。油揚げは肉の代用として使われることも多かった。一方、魚や肉などを主材料とする料理は、野菜や乾物を主材料とするものに比べ非常に少ない。この中で、全域であげられた鯖寿司や自家で絞めた鶏のすき焼きは、行事やもてなしの折に作られる特別なごちそうであった。バラ寿司も行事に欠かせない特別な料理であるが、具については地域や家庭によって違い、常備した素材を用いる質素なものもあった。
著者
青山 佐喜子 片寄 眞木子 川原崎 淑子 小西 春江 阪上 愛子 澤田 参子 志垣 瞳 富永 しのぶ 正井 千代子 山本 信子 山本 由喜子 米田 泰子
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.21-34, 2004-02-20 (Released:2013-04-26)
参考文献数
39

1)76冊の江戸期料理本中のしょうゆの出現数は2808,たまりは314,いり酒は1166であった. うすしょうゆは230,きしょうゆは205であった. うす 2)うすしょうゆの表記は,うす・薄・淡・稀・色うすきがあった. きしょうゆの表記はき・生・若があった. しかし,現在使われているうすくちしょうゆという表記は見られなかった. 3)うすしょうゆ,きしょうゆのしょうゆ合計に対する出現割合の高い料理本の著者の居住地は京都,大坂など関西が多く,関東は少なかった. 4)江戸初期から次第にたまり,いり酒が減少傾向になり,一方,その他しょうゆが多くなり,うすしょうゆ,きしょうゆも出現して,しょうゆの種類が多様化した. 5)著者の居住地,しょうゆの種類と出現時期,使われ方から,関西でのうす色・うす味食文化は江戸中期から形成されたと推察された. 謝辞本研究はヒガシマル醤油株式会社からの委託研究であり,研究助成金をご供与くださいましたヒガシマル醤油株式会社ならびに貴重なご指導とご助言を賜りました同社の牛尾公平氏に厚く感謝申し上げます. また,文献検索と解読の過程で貴重なご指導を賜りました西山短期大学の余田弘実先生に厚く感謝申し上げます.
著者
大島 英子 樋上 純子 山口 美代子 殿畑 操子 山本 悦子 石村 哲代 大喜多 祥子 加藤 佐千子 阪上 愛子 佐々木 廣子 中山 伊紗子 福本 タミ子 安田 直子 米田 泰子 渡辺 豊子 山田 光江 堀越 フサエ 木咲 弘
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.32, no.4, pp.338-345, 1999-11-20
被引用文献数
9

本実験では,焼成条件の違いがハンバーグの内部温度に及ぼす影響について検討し,次の結果を得た。 1.ハンバーグ内部の最低温度を示す点は,焼き始めはオーブン皿に接している底面の近くにあるが,生地の焼成とともに,底面から上の方に移動し,約10分経過の後からは厚さのほぼ中心付近にあることが明らかとなった。2. ガスオーブンの庫内温度を180℃,200C,230℃と変えてハンバーグを焼成した場合,焼成温度の違いは75℃到達時間の違いにあらわれるだけでなく,余熱にも影響を及ぼした。焼成温度が230℃の場合では,75℃到達後すぐに取りだしてもなお内部温度上昇が顕著に起こるので,75℃以上1分の条件を満たすことは十分可能であり,焼成時間の短縮も期待できる。 3.焼成開始時のハンバーグ生地品温が0℃,10℃,20℃と異なる場合,75℃到達時間は0℃では22分,10℃と20℃では16分となり,有意差が認められた。このことから,チルドなどの0℃付近の品温のハンバーグは,焼成の時間設定を長めにする必要があるが,焼成後オーブンから取りだしてからの内部温度の推移に差はなかった。 4.電気オーブンとガスオーブンでの焼成を比較すると,庫内を230℃に予熱して焼成した場合,ガスオーブンの方が75℃到達時間は0.9分早く,余熱最高温度も6.5℃高くなり,75℃以上保持時間も5.7分長かった。これらの差はガスと電気の熱量の違いによるものと思われる。 5.70℃まで焼成したハンバーグと,75℃まで焼成したハンバーグとを官能検査したところ,両者の間に有意差は認められず,75℃まで焼成しても焼き過ぎとは判定されなかった。厚生省指導による75℃以上1分間加熱は,ハンバーグの焼き色,香り,触感,味などの点で十分賞味できるものであることが認められた。