著者
金 美英 李 志炯 崔 庭瑞 八馬 智 日比野 治雄 小山 慎一
出版者
Japanese Society for the Science of Design
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.59, no.2, pp.79-86, 2012-07-31

景観評価に関する研究は評価される景観の特徴に焦点を当てたものが多く、評価者の心理に焦点を当てた研究はほとんど見られない。本研究では、工場景観愛好者と非愛好者の心理学的評価特性を印象評価および眼球運動実験を通じて比較した。印象評価実験では、工場・橋・歴史的建造物の景観において形容詞対を用いて評価した。眼球運動実験では、これらの景観を評価する際の眼球運動および瞳孔径を測定した。その結果、印象評価実験では、工場景観愛好者は非愛好者よりも多様な評価基準を用いて工場景観を評価していることが示唆された。また、工場景観愛好者では工場景観鑑賞時に垂直方向の眼球運動が活発に見られ、瞳孔径の拡大も認められた。以上の結果から、工場景観愛好者は工場景観鑑賞時に非愛好者よりも活発な情報収集を行い、多様な評価基準を用いて評価していることが明らかになった。工場景観に対する興味や愛着によって活発な情報収集と多様な評価基準による評価が引き起こされるとともに、これらの行為によって工場景観に対する愛着が促進されていると考えられる。
著者
小澤 直明 八馬 智
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集 日本デザイン学会 第64回春季研究発表大会
巻号頁・発行日
pp.268, 2017 (Released:2017-06-29)

近年、「カープ女子」や「プロレス女子」といった、「○○女子」というネーミングが増えてきている。このような性別を含む特定の「キャラ」を示す表現は、次々と生み出され、次々と消えている。 それらは、流行現象を後から定義づけた言葉もあれば、マーケティング的な狙いから生み出された言葉もあるだろう。 もしかすると、他人を「キャラ」の枠に当てはめることで、その人や社会の動きをわかったつもりになろうとしているのではないか。 そこで、「経済成長の推移」や「女性の社会進出」などを手がかりに戦後の社会環境の変遷を概観しながら、「○○女子」という表現の成立過程を捉え直す試みを行った。 接尾辞の変化には、女性の社会進出の変遷が影響していると思われ、現在の「○○女子」は女性のライフスタイルが多様化していることの象徴であった。 社会は男女の差が少なくなっていく方向にシフトしており、その断片が「○○女子」に反映されていると考えられるが、実際はまだ男性中心の社会であり、男性と女性の機会の差は、均等ではないと考えられる。
著者
武田 孝太 八馬 智
出版者
Japanese Society for the Science of Design
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集
巻号頁・発行日
pp.157, 2015 (Released:2015-06-11)

近年、土木構造物を観光資源として活用する「インフラツーリズム」という新しい旅行形態が注目を集めている。このインフラは大量生産品ではなく、地域の実情に合わせて一番最適な解を導きだしている。それは地域の特性を反映しているため、インフラを知る事で地域を理解する事が出来ると推測される。地域を理解することは地域活性化の手掛かりになると考え、このテーマを研究する事にした。 本研究では、インフラツーリズムが年間を通した地域固有の観光対象にするために、各地域で提案、実証し、一つの方法を示す事を目的とする。二つの地域で、産業観光のモニターツアーとインフラツーリズムの提案を行い、以下の成果が得られた。まず、福島県いわき市の産業観光のモニターツアーでは、その地域の産業施設などを実際に視察する事で、その地域がどういった経緯や文化を経て、形成されたのかを体感することができ、それによって地域の理解が深まるということがわかった。そして、立山インフラツーリズムでは、インフラは地域住民が気付いていなかった地域固有の観光資源に成り得る価値が潜んでいるという事がわかった
著者
稲坂 晃義 八馬 智 石塚 明夫
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.67, no.1, pp.1_39-1_48, 2020-07-31 (Released:2020-08-10)
参考文献数
7

デザインの導入基礎教育を対象に,指導者が求める到達目標を明示した「振り返りシート」を用いて,学習者の自己評価により理解・習熟度を自身で把握し,指導者の評価との関係性を明らかにする.またその結果を用いて授業プログラムおよび指導方法等を検討するための示唆を得ることを目的とする.受講者の各課題に対するの理解・習熟度の自己評価,ならびに授業運営側の各課題の設定レベルの適性度の把握と今後の授業進行の調整や課題導出を目的としてICE モデルルーブリックを応用した「振り返り」シートを作成し導入した.因子分析とクラスター分析によって,学習者と指導者の各評価間の差異を明らかにした.学習者本人が自身の理解度を把握することに留まらず,指導者の指導内容の評価にも利用することができる.また多年度にわたりその結果の推移を見ると,各年度の学習者の傾向の違いがあるが,学習者の自己評価と指導者の評価の間の差異が年度を経るごとに小さくなる傾向があり,指導内容の変更や改善が一定の学習効果の向上に寄与することが分かった.
著者
田中 俊 小野 健太 小原 康裕 八馬 智 蘆澤 雄亮 渡邉 誠
出版者
日本デザイン学会
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集
巻号頁・発行日
vol.58, pp.168-168, 2011

昨今、日本において、男性化粧品業界で清涼感がひとつのキーワードとして、重用しされている。例えば、CMにおいて男性用化粧水はよく清涼感を強く押し出して宣伝されている。また、現在販売されている男性用化粧水を見てみると、ほとんどの男性用化粧水にメントールが配合されており、使ったときに清涼感を感じさせる使い心地になっている。 そこで、現状の「清涼感」を売りにした男性用化粧水を調査してみたところ、近年の男性化粧品の充実化により、多種の男性用化粧水が販売されているが、それらは、ブルーを基調にしたカラーやグラフィックに「清涼感」のアピールを頼っており、造形も似通っているため、似たような印象をうけてしまう事がわかった。そのためそれぞれの製品の特徴を打ち出していく為にはブルーを基調にしたカラーやグラフィックだけではない「清涼感」を表現する事で差別化を行う事が必要になってくると思われる。本研究において、ブルーを基調としたカラーやグラフィックではなく、造形により「清涼感」をアピールできる化粧水ボトルを提案することを目的とする。