著者
和気 純子 副田 あけみ 岡部 卓
出版者
首都大学東京都市教養学部人文・社会系 東京都立大学人文学部
雑誌
人文学報 (ISSN:03868729)
巻号頁・発行日
no.439, pp.27-65, 2011-03

都内外の法外施設等への入所を余儀なくされる都内被保護高齢者への支援の実態を、(1) 法外施設等への入所につなぐ福祉事務所、および (2) 被保護高齢者を受け入れる法外施設等への事例調査によって明らかにした。その結果、法外施設の利用が少ない福祉事務所では、(1) 被保護高齢者へのきめ細かい支援、(2) 法外施設を極力利用をしない方針の共有、(3) 高齢所管課や社会福祉協議会等との連携、(4) 地域内外の居宅サービス、民間宿泊所、一般住宅施策などの活用、といった点が共通して確認された。一方、法外施設等への調査からは、(1) 都内施設における物理的、経済的制約によるハード面の整備の困難さ、(2) 有料老人ホームにおけるディスカウントの実施、(3) 福祉事務所による入所後のモニタリングや施設との連携をめぐる差異の存在が明らかになった。さらに、被保護高齢者が住み慣れた地域における介護サービスから排除される要因として、被保護高齢者における社会的排除の累積、行政責任の後退と「施設の論理」の一般化、貧困ビジネスの台頭、制度や機関間の連携不足といった点が指摘された。最後に、これらの議論をもとに必要な方策を提言した。
著者
岡部 卓 副田 あけみ 矢嶋 里絵 稲葉 昭英 和気 純子 堀江 孝司 槇野 葉月
出版者
首都大学東京
雑誌
人文学報. 社会福祉学 (ISSN:03868729)
巻号頁・発行日
vol.24, pp.53-82, 2008-03

生活保護において、2004年度より、生活保護制度の運営実施機関が組織的に生活保護受給世帯の自立を支援する制度に転換することを目的とする自立支援プログラムが導入された。そこで、全国に先駆け首都大学東京と官学連携し自立支援プログラム・個別支援プログラムの策定とその評価事業に取り組んだP自治体の各種プログラムの概要、評価結果と課題、今後の展望について明らかにする。
著者
副田 あけみ
出版者
首都大学東京
雑誌
人文学報. 社会福祉学 (ISSN:03868729)
巻号頁・発行日
vol.24, pp.83-110, 2008-03

本論の目的は、ケアマネジメントの展開がソーシャルワーク論に及ぼした影響について、アメリカとイギリスにおける言説を検討し、わが国におけるソーシャルワークのアイデンティティ論に必要な論点を確認することである。アメリカとイギリスでは、(2)実践内容・方法、(2)ソーシャルワーカーの役割、(3)専門職としての自律性(対行政組織)、(4)基盤とする価値、について影響が論じられていた。特に、イギリスでは、ソーシャルワークのアイデンティティを(4)価値の観点から再確認しようとする説が目立つ。わが国の高齢者に対するソーシャルワーク論では、特に、(4)、(4)に関し議論することが課題であると指摘した。
著者
副田 あけみ 山田 裕子
出版者
東京都立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

東京都の単独事業である子ども家庭支援センター事業は、現在17の区市で実施されている。本調査対象とした府中市子ども家庭支援センターしらとりは、支援センター事業と子ども家庭在宅サービス事業とを統合的に実施し、総合的な子育ての支援センターとして機能するとともに、家庭が問題を抱えてしまわないよう、予防福祉の機能を担っていることが、利用者データの分析、資料の検討、面接調査等の結果、明らかとなった。(1)電話相談の件数は年間約300件であるが、相談者も「専業主婦」、「共働き世帯の母親」、「母子世帯の母親」、「父子世帯の父親」、「子ども本人」、「親戚・知人」等と多様であるだけでなく、相談内容も「出産時や病気時の子どものケア]、「育児不安」、「子どもの躾・健康」、「残業時の子どものケア」、「ドメステック・ヴァイオレンス」、「性の悩み」等々幅広く、地域の子ども家庭に対する総合的な相談機能を果たしている。(2)相談者に対するきめ細かなアセスメントとサービス援助計画の作成、サービス利用者と提供者へのサポート活動というケースマネジメントサービスを、相談者の約35%に提供している。(3)ショートステイは「専業主婦」の「出産」や「病気」時等における一時保育サービスとして、トワイライトは「母子世帯」や「父子世帯」、「共働き世帯の母親」の「遅い終業」や「残業」、「出張」時等における夜間保育サービスとして機能し、交流事業は「専業主婦」に対するストレス緩和と予防相談の機能を果たしている。(4)ショートステイやトワイライトのサービス提供を通して、職員は夫婦間等のコミュニケーションや相互支援の促進援助を図ったり、親子、とくにひとり親家庭の親と子どもとの関係の調整援助を行い、ファミリーソーシャルワーク機能を果たしている。
著者
副田 あけみ
出版者
東京都立大学人文学部
雑誌
人文学報 (ISSN:03868729)
巻号頁・発行日
no.339, pp.37-68, 2003-03
被引用文献数
1

地域ケアの展開に必要なチームアプローチやネットワーク形成の方法を探るために、シドニーにあるホーンズーACATのチームアプローチを事例分析した。その結果、地位が確立している専門職から成る多職種チームは、公式には、メンバーの意思決定による自主性を重んじるが、非公式には、チーム内相互作用によってメンバーの意思決定や行為などを管理するというチームアプローチをとっていることがあきらかとなった。