著者
福田 大輔 力石 真
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.69, no.5, pp.I_497-I_510, 2013 (Released:2014-12-15)
参考文献数
80
被引用文献数
2

本稿では,離散-連続モデルの研究動向に関するレビューを行った.まず,研究の系譜を (1) ミクロ経済理論より演繹的に導出される構造型モデル,(2) 現象記述の自由度を高めることに主眼を置いた誘導型モデルに大別し,各特徴を整理した.その上で,(a) 経済理論への整合性を重視する場合にはキューンタッカー条件より導出される構造型モデルの適用が望ましいこと,(b) 現象記述や不完全観測下での行動モデルを構築する場合には誘導型モデルの方が現象記述の自由度が高いこと,(c) 両系譜の特徴を活かすことで,経済理論を踏まえつつ現象記述の自由度を高めた折衷型モデルの構築が可能であること等を明らかにした.最後に,交通行動分析分野における離散-連続モデルの適用事例を体系的に整理し,今後の研究の方向性についての展望をまとめた.
著者
福井 のり子 力石 真 藤原 章正
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.52, no.2, pp.209-219, 2017-10-25 (Released:2017-10-25)
参考文献数
35
被引用文献数
1

多くの農村地域のコミュニティでは,持続可能なコミュニティに向けた取り組みへの一歩が踏み出せない地域住民とそれを後押ししようとする行政の在り方の模索が続いている.本研究では,地域の活性化に向けた初動期において,地域や個人がどのような課題に直面し,またそれをどのように乗り越えていったか,グラウンデッド・セオリー・アプローチ(GTA)と複線経路・倒至性アプローチ(TEA)を活用して,その成長プロセスを記述した.具体的には,住民と行政が協働して住民ボランティアによる自治会輸送活動を行うプロジェクトを立ち上げ,2ヵ年に渡り交通の視点から地域活性化に取り組んだ事例を取り上げ,複数回にわたる住民代表者と行政職員との討議録をもとに分析を行った.GTAの分析では,2回の社会実験を通じて,1)行政からの提案,2)組織の課題の浮上,3)将来に向けた地域ビジョンの作成のように,循環型の成長プロセスが存在することが確認できた.さらにTEAの分析では,同様の成長プロセスの過程においても,個人によって異なる社会的ガイドや方向付けが存在することが確認された.