著者
樋口 隆太郎 林田 定男 出口 由美 山田 嘉徳 金田 純平
出版者
関西大学教育開発支援センター
雑誌
関西大学高等教育研究 (ISSN:21856389)
巻号頁・発行日
no.3, pp.69-79, 2012-03

関西大学文学部は、2010(平成22)年度より、文部科学省GP の支援のもと、「文学士を実質化する〈学びの環境リンク〉」のテーマで、本学部の教育課程の特性を活かし、文学士を実質化できるような学びの環境作りのプロジェクトを開始した。2011年度後期は、その年次スケジュールおいて、検証と改善フェーズに該当する。そこで、検証と改善に資するため、学生アンケート調査を実施した。文章力に対する学生のイメージおよびアカデミック・ライティング環境の整備状況、この2点についての現状を把握することが目的である。関西大学文学部生457名を対象に、アンケート調査を実施した。分析結果を摘記すると、文章力に対する学生のイメージについては、進級に伴って文章力に対する自信の上昇と不安の低減が見られたこと、年次を通じて文章力の必要性およびそれを向上させるための努力の認識に差異が見られなかったことが明らかになった。アカデミック・ライティングの環境については、ワンポイント講座等の啓発事業についての学生の認知度が低く、広報の質・量ともに十分ではないことが明るみになった。また、年次や時期によって変化する学生の(潜在的)ニーズを考慮してテーマを選定する必要があることもわかった。来年度は、GPプロジェクトの本格的運用期間をむかえる。今回の調査によって顕在化した広報における問題点や学生のニーズ等を勘案しつつ、学生にとってより有益な事業を展開する必要がある。
著者
山田 嘉徳 森 朋子 毛利 美穂 岩﨑 千晶 田中 俊也
出版者
関西大学教育開発支援センター
雑誌
関西大学高等教育研究 (ISSN:21856389)
巻号頁・発行日
no.6, pp.21-30, 2015-03

本稿では学びに活用するルーブリックの評価に関する方法論を検討する。ルーブリックを用いた評価が注目されるようになった背景を確認し、ルーブリックのタイプとその特徴を整理する。ルーブリックを用いた評価主体・方法に着目しながら、クラスルーブリック、コモンルーブリック、VALUE ルーブリックのそれぞれの活用実態を示す。また、先行研究の知見を踏まえ、ルーブリックによる評価にまつわる課題を指摘した上で、学びに活用するルーブリックの評価の質を保証するための方法論について検討する。特に、質的研究における妥当性に関する議論を手がかりに、ルーブリックを学びに活用するための知見を提示する。具体的には、ルーブリックの評価基準の妥当性の担保において、トライアンギュレーション概念が有効であるのに対し、ルーブリックの学びへの活用という点においては、妥当化、決定に至る足跡といった概念が有効であることを示す。最後に、評価活動への参加という観点から、学びとしての評価における学習メカニズムの仔細な検討が学びに活用するルーブリックの可能性を議論する上で重要な課題となることを指摘する。
著者
山田 嘉徳
出版者
京都大学
雑誌
京都大学高等教育研究 (ISSN:13414836)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.1-14, 2011-12-01
被引用文献数
1

The present study examined the effect of a seminar organized according to the pair system to contribute to the collaborative learning between Senpai and Kouhai. The pair system in which the Senpai plays the part of a mentor of the Kouhai, is referred to as a Brother and Sister (B&S) system in the seminar. The research explored how to learn with each other collaboratively through peer support based on the B&S system. In this qualitative research of narrative data, 38 students were subject to analysis in the semi-structured interviews. The results revealed these categories of collaborative learning: an intention to the learning as Senpai, a formation of the learning as Senpai and Kouhai, a strategy of the learning and a commitment in the learning. Additionally these categories explained the effectiveness of the pair system underpinning the instruction unit of relationship between Senpai and Kouhai from the notion of situated learning theory. Finally, the potential and the limitations of the pair system were also discussed.
著者
溝上 慎一 森 朋子 紺田 広明 河井 亨 三保 紀裕 本田 周二 山田 嘉徳
出版者
京都大学高等教育研究開発推進センター
雑誌
京都大学高等教育研究 (ISSN:13414836)
巻号頁・発行日
vol.22, pp.151-162, 2016-12-01

本研究では、アクティブラーニング(AL)の効果検証において大きな課題の一つとなっている、アクティブラーニングそれ自体の質を測定する「アクティブラーニング(外化)尺度(AL(外化)尺度)」を開発した。研究1 では、作成された12 項目を因子分析し、最終的には、第1 因子の12 項目から成る「AL」(一般因子)とAL に寄与する外化3 項目だけの「AL 外化」(グループ変数)の2 因子からなるBifactor モデルによって解を見いだした。確認的因子分析をおこなった結果も、Bifactor モデルがもっとも適合度が高く、妥当なモデルだと判断された。研究2 では、異なるサンプルに研究1 の結果を適用し、同様の因子構造、確認的因子分析、信頼性を確認し、そのうえで外部変数として学習向上、能力向上、成績との相関関係を検討した。妥当な相関関係があると認められた。The purpose of this study is to develop the "Active Learning (Externalization) Scale" that measures the quality of active learning—a task central to testing the effects of active learning. In Study 1, the factors were analyzed against 12 active-learning items, and we finally found out, in the Bifactor model, the first general factor, "AL" consisting of 12 items and the second group factor consisting of 3 items, "AL-externalization" that contributed to AL. That Bifactor model is ultimately identified as a more viable model, more suitable by the Confirmatory Factor Analyses (CFA). In Study 2, these findings were further confirmed by using different samples: we also identified valid correlations when using learning and competency or achievement as the outer variables.
著者
山田 嘉徳
雑誌
大阪産業大学論集 人文・社会科学編 (ISSN:18825966)
巻号頁・発行日
vol.30, pp.1-14, 2017-06-30

本研究は,ラーニング・コモンズにおける学びと活用可能性について,状況的学習論を理論的枠組みとして用いて検討するものである。A大学のラーニング・コモンズをフィールドとし,ラーニング・コモンズという場について調べ考えるという学習活動に取り組んだ65名の学生を対象に,学習活動に使用したワークシートから得られた自由記述文に対して共起ネットワーク分析を施した。結果,【通常教室と異なる場】,【個人・協働学習の場】,【友達同士で集まる場】,【飲み物を楽しみながら授業の宿題に関して相談し合える場】,【気分転換を図りながらリラックスして勉強できる場】,【発表練習ができる場】,【多様な形のコミュニケーションが可能な場】,【その他】の8 つの群が抽出された。得られた群を参照しつつ,文化的透明性概念を手がかりに,ラーニング・コモンズにおける学びと活用可能性について分析的に論じた。またLCの学びを分析する際の視点として,学習者にとっての学習概念の更新を促す「照射」の概念を取り入れることの有効性を論じ,LCの学習論の構築に向けた今後の展望を述べた。
著者
岩崎 千晶 村上 正行 山田 嘉徳 山本 良太
出版者
関西大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

研究課題①「正課と学習支援の連環によるディープラーニングを促すデザイン要件の提示」に関しては、日本語ライティングにおいてライティングセンターを活用した学習者の個別傾向を分析し、リピーターへとつなげるための学習支援の手立てを検討した。また学習の深化を目指し、ICTを活用したライティング指導の実践研究を行った。学習支援には、個別指導に加えて、自主学習用の教材開発も含まれるため、英語・日本語ライティング教材を開発し、正課と学習支援の連環による学びの深化に取り組んでいる。「研究課題②多様なアクターが関わるラーニング・コモンズにおける学びのプロセスモデルの提示」では、各大学がどのように学習者の学びを評価しているのかについて調査を行った。具体的にはCiNiiを活用し、ラーニング・コモンズの評価を扱う論文66件を分析した。調査の結果、質問紙調査、観察調査、インタビュー調査の順で調査法が採用され、量的な調査が75%を占めた。今後、学びのプロセスや成果を明らかにするためには、質的な調査やラーニング・コモンズにおける理念(育むべき学習者像)に関する議論の重要性を示した。特に学習成果に関しては汎用的な能力が評価指標となっていたため、本研究で指摘した学習者にとっての学習概念の更新を促す「照射」の概念を取り入れる必要性を確認した。「研究課題③学習支援を提供する組織における学生スタッフを含めた教職員を対象としたSD・FD研修プログラム・eラーニングの開発と評価」では、教育の質保証、授業設計、評価方法、ICT活用、学習環境をテーマに研修プログラムを開発し、運営・評価をした。またライティング研修の中から、ライティングの理念・学習支援の歴史等のプログラムをeラーニング教材として提供するための資料教材を完成させた。またライティングの学習支援に関する指導モデルを提供するため、eラーニング教材を開発した。