著者
古土井 光昭 小林 正樹
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集C (ISSN:1880604X)
巻号頁・発行日
vol.65, no.4, pp.998-1017, 2009 (Released:2009-12-18)
参考文献数
22

関西国際空港は大阪湾南東部の泉州沖に,世界初の本格的な海上空港として建設された.建設予定地は水深が大きく,海底下には軟弱な沖積粘土層が20m以上堆積し,その下には数百mにわたって洪積粘土層が堆積している.したがって当初から沖積粘土層に対する地盤改良の実施や,洪積粘土層の圧密沈下が生じる深度方向の範囲やその大きさを見通すことが重要な課題であった.そのため事前に大深度のボーリング調査を行うなど,地盤工学的問題への対応に取り組んできた.本文は,関西国際空港の建設にかかる事前の調査や,事前予測に対する沈下の実態を記しつつ,沈下予測手法の変遷および現場における地盤挙動への対応について述べるものである.
著者
福井 勝則 辻本 知範 大久保 誠介 松永 昌太
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集C (ISSN:1880604X)
巻号頁・発行日
vol.65, no.1, pp.19-28, 2009 (Released:2009-01-20)
参考文献数
13

地震の前後に観測される電磁波の発生は興味深いことと考えられており,古くから研究されてきた.しかしながら,その現象は極めて複雑であり,電磁波の発生原因を明快に説明することは現状では難しいとされている.本研究では従来あまり検討されていない,AM波に混在する電磁ノイズに着目することとし,日本各地に設置されているAM波帯の電磁ノイズ観測装置による,過去の観測データを調べ,地震前後の電磁ノイズ発生状況の検討を行った.その結果,地震の2週間から5週間前より電磁ノイズは通常より多くなり始め,地震の1,2週間前に最大値を迎えた後,減少し,地震を迎える事例が多いことを示した.
著者
山本 浩之 西形 達明 八尾 眞太郎 西田 一彦 笠 博義
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集C (ISSN:1880604X)
巻号頁・発行日
vol.66, no.1, pp.43-57, 2010
被引用文献数
3

城郭石垣の動的状態での安定性を力学的に評価することを目的に,実物大の石垣の大型振動台実験をした.石垣は,"打込みはぎ"による反りを有する形状とし,背面は栗石と土で充填した.実験方法は,入力波形を3Hzの正弦波,入力方向を水平一方向とし,加速度振幅を段階的に増加させ,各材料(石材,栗石,背面地山)の応答状態を計測した.その結果,688gal付近を境界に,石垣の変形が"転倒モード"から"孕み出しモード"へ移行し,各材料の応答加速度や各材料間の位相差に変化があることが捉えられた.また,このような石垣の変形過程は,栗石の沈下等による背面土圧の増加や岩盤の内部摩擦角に相当する石材間の摩擦角の低下に伴い発生することが明らかになった.
著者
寒川 旭
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集C (ISSN:1880604X)
巻号頁・発行日
vol.64, no.3, pp.672-679, 2008 (Released:2008-08-20)
参考文献数
30
被引用文献数
1

本稿では,地震考古学の研究によって得られた成果の概要を紹介する.まず,液状化現象について,噴砂の流出に伴う礫や砂の級化や地層の流動など,遺跡で得られた新しい知見を示した.また,液状化現象の痕跡を強震動の証拠と考えて,南海トラフから発生する巨大地震の発生年代の解明に用いた.内陸地震については,活断層のトレンチ調査や文字記録に地震痕跡を加えて解釈することで地震の全体像が把握できる.さらに,千数百年前頃に各地に築造された古墳については,地滑りなどの地変を量的に検討できる.
著者
里見 知昭 酒匂 一成 安川 郁夫 深川 良一
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集C (ISSN:1880604X)
巻号頁・発行日
vol.65, no.2, pp.564-578, 2009
被引用文献数
1

本論文では,京都市の重要文化財後背斜面を対象に,現地計測結果(10分間雨量, 間隙水圧, 地表面変位)を用いて降雨による斜面の崩壊危険度をリアルタイムに評価することを目的としている.具体的には多変量解析手法の一つである主成分分析を適用した評価方法を提案した.分析結果に基づく有効な雨量指標の組み合わせ,主成分得点を評価指標とした際の避難勧告・解除等のタイミングの基準設定の有効性を検討するため,3ケースの計測結果を用いて斜面の崩壊危険度を評価した.その結果,主成分分析を使うことで多変量データ間の関係を効果的に表現でき,避難勧告・解除等のタイミングがより具体的に設定できることが分かった.さらに,人工降雨装置を用いた室内土槽崩壊試験を行い,本手法の実効性を示した.
著者
中谷 郁夫 早川 清 西村 忠典 田中 勝也
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集C (ISSN:1880604X)
巻号頁・発行日
vol.65, no.1, pp.196-212, 2009 (Released:2009-02-20)
参考文献数
22

高架道路橋を振動源とする特に低周波域の地盤環境振動の遠距離伝播現象を検討するために,実際に振動問題が発生した高架道路橋での現地計測を行い,大型車両が高架道路橋を走行する際に発生された振動が地盤を経由して遠距離まで伝播されていることを確認した.この現象を検討するため,重力場における相似則を用いた模型実験および2次元FEMによる数値シミュレーション解析を実施した.その結果,ア)高架道路橋の橋脚下部構造である杭が鉛直・水平2方向に同時挙動し,その際の振動が支持層に入射されて深い位置から発せられること,イ)この振動入力が支持層と表層との波動インピーダンス比により増幅され,一部の振動数成分が地盤の波動分散特性から減衰されずに遠距離まで伝播されることが解明された.
著者
安原 英明 木下 尚樹 操上 広志 中島 伸一郎 岸田 潔
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集C
巻号頁・発行日
vol.63, no.4, pp.1091-1100, 2007
被引用文献数
3

高レベル放射性廃棄物処分坑道近傍では,廃棄体からの発熱により化学作用が活発化し,岩盤の力学 · 水理学特性に大きな影響を及ぼすことが考えられる.本論文では,圧力溶解現象を考慮した概念モデルを用いて,熱 · 水 · 応力下における化学作用を定量化し,珪質岩石の透水性評価を行った.特に,珪質岩石の構成主鉱物である石英,クリストバライト,アモルファスシリカの溶解 · 沈殿特性に着目し,深地層下における圧力,廃棄体からの発熱作用を考慮し,透水特性の変化を定量的に評価した.その結果,90 °Cの温度条件下で時間と共に透水性が低下する傾向が得られた.また,クリストバライト,アモルファスシリカを多く有する珪質岩石は,石英系岩石よりも透水性の変化がより顕著となることが確認された.
著者
石澤 友浩 國生 剛治
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集C (ISSN:1880604X)
巻号頁・発行日
vol.62, no.4, pp.736-746, 2006 (Released:2006-11-20)
参考文献数
6
被引用文献数
1

地震時の斜面安定は,静的震度を考慮した滑り面法や加速度時刻歴を用いたNewmark 法により評価されてきたが,これらの方法は破壊後の大きな変形量や下流への影響範囲の評価には無力である.本研究では,地震時の斜面崩壊に関わるエネルギーに着目したエネルギー的評価方法の開発を目指し,新たに工夫した振動台実験により乾燥砂模型斜面の滑り破壊に関わるエネルギーと斜面の残留変位量を計測した.模型実験では,斜面変形に関わるエネルギーが破壊後の変形量と密接に関係していることが示された.振動台の振動数と斜面勾配の斜面変形量への影響を検討し,これらの結果と剛体ブロックモデルでのエネルギーバランスに基づき,実用レベルへの課題はあるものの,エネルギー的な斜面変形量の簡便な評価法の基本的な可能性を明らかにした.
著者
崔 瑛 岸田 潔 木村 亮 野々村 政一 井浦 智実
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集C
巻号頁・発行日
vol.66, no.4, pp.718-728, 2010

NATMを用いて未固結地山に小土被りトンネルを掘削するトンネル工事区間では,地表面とトンネルが同程度沈下するとも下がり現象が報告されている.沈下の抑制が重要な課題となるこれらの現場では,対策のひとつとしてサイドパイル工が適用され,地表面沈下抑制効果を発揮している.本研究では,様々な施工条件下でのトンネル掘削数値解析を行い,トンネルと地盤が同等に沈下するとも下がり現象について検討を行った.つづいて,とも下がり発生時サイドパイルの地盤沈下抑制効果について数値解析により検討した.解析結果よりサイドパイルは,内圧効果,またすべり線を交差することでせん断補強効果と荷重再配分効果を発揮し,地盤およびトンネルの沈下を抑制できることを確認した.
著者
渡邊 保貴 小峯 秀雄 安原 一哉 村上 哲 ベ ジェヒョン 豊田 和弘
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集C
巻号頁・発行日
vol.66, no.4, pp.788-799, 2010

水道事業から排出される浄水汚泥を道路構成材料として有効利用する上で,浄水汚泥の排出量が少量であることから一般の土質材料と混合して利用することが検討されている.しかしながら,こうした混合利用の効果は力学的側面から検討されることが多く,環境負荷低減の側面からは十分に検討されていない.本研究では,最終処分量の削減や天然資材の保全の観点から浄水汚泥の環境価格を定義し,浄水汚泥を砂質土と混合利用したときの環境負荷低減効果を貨幣価値に換算した.その結果,浄水汚泥の混合利用は必ずしも環境負荷低減に結びつかず,浄水汚泥を単体で利用することが最も望ましいこと,そして,浄水汚泥を混合する場合には,混合する天然資材の量を減少させることが重要であることを示した.
著者
秦 吉弥 一井 康二 土田 孝 加納 誠二
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集C (ISSN:1880604X)
巻号頁・発行日
vol.65, no.2, pp.401-411, 2009 (Released:2009-05-20)
参考文献数
34
被引用文献数
1

盛土の耐震性については,排水溝の整備状況によるが,降雨の浸透等により盛土の地盤物性が変化することを考慮する必要がある.そこで本研究では,盛土地盤の粘着力の低下を飽和度に応じて設定する方法を提案し,既往の人工降雨による盛土の振動台実験を対象として,有限要素法を用いた再現解析ならびにパラメトリックスタディを実施した.その結果,地下水位が生じない程度の降雨による盛土の耐震性低下については,提案手法により表現できることを示した.またパラメトリックスタディにより,盛土表層のみならず盛土内部の粘着力の値が耐震性に大きな影響を及ぼすことを示し,盛土の耐震性評価において特に粘着力の値が重要となる領域を示した.
著者
秦 吉弥 一井 康二 土田 孝
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集C (ISSN:1880604X)
巻号頁・発行日
vol.63, no.3, pp.677-690, 2007 (Released:2007-07-20)
参考文献数
23
被引用文献数
1

盛土構造物の耐震設計法においては,地震時におけるすべり破壊の有無の判定あるいは地震後における残留変形量の評価に主眼をおいたものとなっており,斜面の崩壊範囲については検討の対象となっていない.一方で,自然斜面は耐震設計の対象ではないが,各都道府県の崖条例によって崩壊の危険による建築の禁止範囲が存在する.そこで本研究では,2001年芸予地震により崩壊した宅地を対象として,法肩から天端におけるすべり面の位置までの水平距離に着目した検討を行った.そして解析結果と崖条例による規定を比較検討することによって,現在の日本国内の崖条例で用いられている崩壊範囲の評価法の問題点を明らかにし,その問題点を踏まえた新たな提案を行った.
著者
長谷川 憲孝 松井 保 田中 泰雄 高橋 嘉樹 南部 光広
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集C (ISSN:1880604X)
巻号頁・発行日
vol.63, no.4, pp.923-935, 2007 (Released:2007-10-19)
参考文献数
10

神戸空港は神戸港沖に埋立造成して築造されたが,海底地盤には沖積粘土層が厚く堆積している.埋立造成にあたっては,これら沖積粘土層の圧密特性を把握する必要があり,その特性を把握するために事前土質調査と各種計測器による計測を行ってきた.その結果,沖積粘土層は擬似過圧密状態であり,その程度は西~北西域で高いことが明らかとなった.施工の進行に伴って,過圧密比の高いエリアにおいて,室内土質試験結果による解析値よりも大きな沈下実測値が得られ,圧密進行後の間隙比も室内土質試験結果より小さい値を示すことが分かった.このことより,これらエリアにおいては解析を行う際に過圧密比を低減する必要が生じた.見直し後の解析値は,その後の実測値とほぼ一致しており,見直しの妥当性が確認できた.
著者
山本 浩之 緒方 辰男 日下 裕 蓮井 昭則 佐々木 康
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集C (ISSN:1880604X)
巻号頁・発行日
vol.64, no.4, pp.718-731, 2008

計画された長大切土のり面の中央部に三成分(X, Y, Z 方向)地中変位測定孔を埋設し,掘削期間中の三成分の地山挙動を計測した.その結果,掘削時における鉛直変位(リバウンド)や水平変位などの変形量および収束時期の傾向,掘削除荷(土被り荷重が減少)することにより鉛直ひずみが非線形で増加する傾向が捉えられた.そして,掘削による除荷の大きさと鉛直変位から見掛けの弾性係数を整理するとともに,掘削前に実施した孔内載荷試験の除荷過程の応力−変位曲線から得られる除荷重と弾性係数との関係を比較した.さらに,切土のり面の変形挙動の予測手法として,掘削前の孔内載荷試験に基づく解析モデルの構築方法,また掘削時の管理基準値設定方法の考え方について提案した.
著者
山口 晶 吉田 望 飛田 善雄
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集C (ISSN:1880604X)
巻号頁・発行日
vol.66, no.2, pp.407-417, 2010 (Released:2010-06-18)
参考文献数
13

本研究では,一度液状化した地盤が別の地震によって再度液状化する現象(再液状化現象)が発生する理由として土粒子の水中落下に着目した.これは,液状化後の体積減少によって発生する土粒子の水中落下現象を想定したものである.土槽に作製した模型地盤を強制的に水中落下させ,その前後でせん断抵抗の変化を調べた.この結果,土粒子の水中落下距離が大きいほど,土層のせん断抵抗が減少する層厚が増加した.この実験から,土粒子の水中落下現象が,再液状化が発生する原因の一つであることを示した.
著者
京谷 孝史 平出 壮司
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集C (ISSN:1880604X)
巻号頁・発行日
vol.62, no.4, pp.747-756, 2006 (Released:2006-11-20)
参考文献数
12

本論文では,均質化理論に基づくトポロジー最適化手法を応用したロックボルトの最適配置設計法を提案する.ロックボルトを挿入することによる岩盤の弾性係数と強度の増加は,均質化理論に基づく解析を通して定量的に評価することを通して,弾性係数と強度を配置間隔と挿入角度の関数として近似表現することができる.それらを基本関数として,岩盤構造物全体のグローバルコンプライアンスや破壊に対する安定性を表す汎関数を定義することにより,制約条件下でのそれら汎関数の最大化あるいは最小化問題としてロックボルトの間隔と挿入角度を最適化する最適配置設計問題を定式化する.例題として,提案法を道路トンネルの標準支保パターンに適用してその有効性を検証する.