著者
向井 洋介 賀川 義規 木村 慶 向坂 英樹 加藤 健志
出版者
日本大腸肛門病学会
雑誌
日本大腸肛門病学会雑誌 (ISSN:00471801)
巻号頁・発行日
vol.68, no.3, pp.173-177, 2015 (Released:2015-02-27)
参考文献数
35
被引用文献数
1

症例は80代,女性.直腸脱の既往があり,1年前に当科にて修復術を施行されたが術後早期より再発を認め経過観察されていた.今回,自宅トイレにて急激な腹痛と会陰部より腸管脱出認め救急搬送となった.来院時身体所見でも会陰部より腸管脱出を認め,直腸診にて直腸脱穿孔部からの腸管脱出と診断した.脱出した小腸は会陰部の疼痛が激しく徒手整復は困難であったため手術の方針となった.術式は単孔式腹腔鏡下直腸切断術,S状結腸人工肛門造設術を行った.術後経過は良好で術後27日目に独歩にて退院となった.会陰部からの小腸脱出の報告は直腸脱や子宮脱を既往のある症例が半数を占め,本症例においても慢性的な直腸脱の既往があり菲薄化した直腸前壁に温水洗浄便座のノズルが刺さり穿孔をきたしたものと受傷起点から考えられた.これまで温水洗浄便座のノズルによって大腸穿孔をきたした症例は世界でも報告されておらず,非常に稀な病態と考えられた.
著者
植村 守 加藤 健志 三宅 正和 宮崎 道彦 関本 貢嗣
出版者
日本大腸肛門病学会
雑誌
日本大腸肛門病学会雑誌 (ISSN:00471801)
巻号頁・発行日
vol.71, no.10, pp.393-405, 2018 (Released:2018-10-25)
参考文献数
16

StageIII結腸癌に対する術後補助化学療法は,種々の臨床試験を経て意義が確立され,本邦のガイドラインにも標準治療として明記されている.治療レジメンに関してはオキサリプラチン(OX)の上乗せ効果が示されて以降は,ベバシズマブやセツキシマブといった分子標的治療薬の上乗せ効果が否定され,新たな治療レジメンの早期確立は難しい現状である.OX併用レジメンの有用性が示された一方,末梢神経障害の発現が臨床上大きな問題になっており,補助化学療法の有効性を担保しつつ,治療期間を短縮し有害事象の負担軽減のためにIDEAが計画され,補助化学療法が開始より3ヵ月経った時点で,治療レジメンや再発リスクによっては,治療を終了させたり,OXを中止させたりする根拠になり得る結果であった.また,IDEA試験の結果に示されたように,結腸癌術後補助化学療法における個別化医療の重要性が明らかになってきている.