著者
横山 貴史
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論 Series A (ISSN:18834388)
巻号頁・発行日
vol.84, no.6, pp.610-625, 2011-11-01 (Released:2016-09-29)
参考文献数
23
被引用文献数
1 3

本稿は,北海道函館市南茅部におけるコンブ養殖業について,養殖方法の地域差とその条件を明らかにした.1950年代以降,南茅部ではコンブの増産と養殖の導入が図られた.1966年の1年促成コンブ養殖試験の成功により,安定したコンブ生産が可能となり,以降,1年促成養殖は南茅部全域に急速に広まっていくが,天然コンブと同様に2年の成長期間を必要とする2年養殖も継続された.地区別にみると,天然コンブの価格序列である浜格差において,高く評価される尾札部地区では,浜格差の影響を強く受ける2年養殖が重要であるが,低位である大船地区では,浜格差の影響を受けずに地区独自の取引を行うことができる1年促成養殖への特化が認められた.以上から,南茅部におけるコンブ養殖業の導入は,既存の天然コンブ漁の状況に基づき,地区ごとに異なった養殖方法の選択的受容につながった.その結果,地区間のコンブの収益格差の解消に結びついたと意義付けることができた.
著者
小林 照明 猿橋 具和 澤田 郁郎 横山 貴大
出版者
石油技術協会
雑誌
石油技術協会誌 (ISSN:03709868)
巻号頁・発行日
vol.82, no.5, pp.355-364, 2017 (Released:2019-05-15)
被引用文献数
1

The D/V Chikyu greeted 11 years operation in 2016. Chikyu expeditions were always targeted to the most challenging and extreme areas which never experienced before. CDEX has overcome technical difficulties caused by the deep water, high current, high temperature and the deep drilling, and achieved world scientific and technical outcomes. This paper look back the establishment of the CDEX operation scheme from the early stage and the technical experiences of the Chikyu's deep sea drilling for 11 years. CDEX would continue to challenge to the new era of the next 10 years.
著者
池口 明子 横山 貴史 橋爪 孝介
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集 2019年度日本地理学会春季学術大会
巻号頁・発行日
pp.188, 2019 (Released:2019-03-30)

磯焼けへの対応には藻場造成と漁業のシフトがあり,漁家は後者を迫られることが多い.日本では各種補助金による漁場整備,資源増殖のほか,代替魚種の資源化,観光化など多岐にわたる事業が実施されている.気候変動への順応をテーマとするコモンズ論では共時的制度の記述から,通時的な制度変化の分析を重視するようになっている.分析概念として,漁業者の生態知を核とした生態-社会関係が用いられる点で,生態地理学と接合しうる.ガバナンス論はより広い政治的文脈や行政の再編に制度変化を位置付けることを可能にすると考える.本報告では,磯焼けによる資源の減少や魚種交替に対応した資源管理制度の変化をガバナンスの視点から明らかにし,地理学的課題を考察する.2017年7月,10月に長崎県小値賀町,2018年9月に北海道積丹町,寿都町において漁協・自治体水産課に聞き取り,および事業報告書等の資料収集をおこなった.また小値賀町では漁業者12名に漁法選択を中心に聞き取りをおこなった.2.磯焼けへの順応と漁村・漁場磯焼け,およびその認知の時期は地域によって異なる.積丹町では1930年頃,小値賀町では1990年頃に漁業者が認識している.したがって漁法選択や生業選択のあり方は,その時期の地域社会が置かれた状況に依存する.磯焼けで起こる資源変動も海域によって異なる.積丹町ではウニとコンブは共同漁業権漁場の水揚げの主力である.磯根資源の減少に対し,資源増殖のほか観光との結びつきを強めるなど多次元化が図られている.一方,温暖海域に位置する小値賀町では180種以上の魚種が利用されてきた.資源シフトとブランド化が磯焼けで減少した磯根資源に代わって漁家経営を支えている.3.漁法選択とガバナンスの変化:小値賀島の事例 小値賀島におけるアワビ資源管理は古くは1899年に記録があり,以来多くの取り組みがなされてきた.1966年のウェットスーツの導入で乱獲が危惧されるようになると,1976年に総量規制によるアワビの資源管理が開始された.しかし,1987年の台風被害からの復興資金として過剰な漁獲が起こった上,磯焼けで餌料不足,成熟不良となり資源減少が加速した(戸澤・渡邉2012).1996年には漁業集団・漁協・町役場・県水産センターからなる「小値賀町資源管理委員会」が発足した. アワビに代わって漁家経営を支えるようになった魚種がイサキである.1977年に夜間の疑似餌釣りが導入され,1999年にブランド化された.漁業者集団によって「アジロ」(縄張り)ルールが形成され,漁協-漁業者集団によって選別ルールが形成された.4.資源ネットワークと地域的条件 小値賀島では沖合のヒラマサ・ブリといった回遊魚が生計に重要な位置を占めるなど資源の選択肢が多い.漁協は市場との取引経験が長く,これらの資源ネットワークが柔軟性を支え,漁場と市場の学習を可能にしてきた.この背景として,共同出荷への切り替え,小値賀町の単独自治など,流通と行政の再編経験が考えられる.市場との関係を軸としたガバナンス形成は一方で,よりローカルなスケールの調整,すなわち村落組織を基盤とする紐帯や仲間関係を必要とし,新規参入という点で工夫が必要と考えられる.
著者
横山 貴史
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
E-journal GEO (ISSN:18808107)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.116-129, 2019 (Released:2019-03-20)
参考文献数
21

アルギン酸は,褐藻類から作られる安定剤として,食料品生産のみならず様々な工業生産に欠かせない製品である.南米,チリ共和国は,世界のアルギン酸原料海藻類の一大生産地である.本稿は,チリにおける近年のアルギン酸原料海藻類の生産動向を,現地調査をもとにして報告するものである.チリでは,2000年代初頭から,アルギン酸原料海藻類生産の急増がみられた.その要因には,中国国内の養殖コンブの工業用から食用への利用用途の変化を背景とした中国の購買力の高まりがあった.そのため,海藻価格は上昇し,第3州ウアスコ地区では,海藻採取人の所得が上昇した.近年では,海藻採取が行われていなかった地域でも海藻採取が開始されるなど,チリではアルギン酸の原料海藻類の採取が過熱している.
著者
清田 陽司 椎橋 怜史 二宮 健 横山 貴央 塙 拓朗 衛藤 剛史 横山 明子 菊地 慧 小林 武蔵 亀田 朱音 瀧川 和樹 齋藤 裕介 花多山 和志
出版者
人工知能学会
雑誌
2019年度 人工知能学会全国大会(第33回)
巻号頁・発行日
2019-04-08

本発表では、人工知能(AI)技術によって不動産分野のユーザーエクスペリエンス(UX)を革新する試みについて述べる.(1) 不動産物件写真にディープラーニングを適用することにより,物件写真への自動アノテーションの実装と、「街頭にスマートフォンのカメラをかざすだけで物件を検索する」という新しいUX創出を実現した.(2) 適正な価格の推定が難しいという不動産売買取引におけるUXの問題に対して、機械学習による参考価格算出アルゴリズムにより、日本全国のマンションの参考価格を地図上に提示するサービスを開発した.
著者
横山 貴一 三原 千恵 横山 登 中江 竜太 山根 冠児
出版者
日本大学医学会
雑誌
日大医学雑誌 (ISSN:00290424)
巻号頁・発行日
vol.68, no.4, pp.244-246, 2009-08-01 (Released:2010-04-20)
参考文献数
12
被引用文献数
4 1

症例は 57 歳の女性.2 年前に高 CEA 血症を伴う結腸癌で根治術を行った.今回,頭部 MRI で小脳テントに接する約 2 cm 大の後頭蓋窩病変を認めた.全身FDG-PET で後頭蓋窩病変以外に高集積を示さず,CEAは 2.0 ng/ml であった.このため悪性髄膜腫を疑い摘出術を行った.病理診断は,結腸癌の小脳転移であった.他臓器に転移のない大腸癌の孤立性小脳転移は少なく診断,治療に注意する必要があると考えられた.
著者
横山 貴裕 濵砂 亮一
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
vol.43, no.3, pp.240-244, 2021 (Released:2021-05-25)
参考文献数
12

要旨:症例は77歳女性.めまいを主訴に近医に搬送され,両側小脳半球の脳梗塞と診断された.翌日に意識障害が進行,小脳梗塞による閉塞性水頭症を認めたため,当院で緊急に脳室ドレナージおよび後頭蓋減圧術を行い,意識障害は改善した.MRAでは,頭蓋外の右椎骨動脈から分岐した後下小脳動脈が正中を頭側へ走行した後に両側の小脳半球へ分岐していた.本症例は未治療の心房細動を有していることから,両側支配の後下小脳動脈(bihemispheric PICA)を責任血管とする心原性脳塞栓症と診断した.両側支配の後下小脳動脈は稀な血管形態であり,何らかの閉塞機転が生じれば,両側小脳半球の広範な脳梗塞を発症し,緊急の外科治療を要するリスクがある.
著者
横山 貴司 石川 博文 坂本 千尋 渡辺 明彦
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.69, no.10, pp.2612-2617, 2008 (Released:2009-04-07)
参考文献数
14

S状結腸憩室炎による結腸膀胱瘻を5例経験した.平均年齢68.4歳,男性3例女性2例で,5例中3例は他院にて大腸癌あるいは膀胱癌と診断され,1例は人工肛門を造設されていた.主訴は4例で糞尿あるいは気尿を認め,1例は腹痛,腹部膨満感のみであった.5例中3例において,注腸検査,膀胱鏡,MRIにより結腸膀胱瘻が描出可能であった.全例で大腸憩室症の既往があったこと,画像上,腫瘤形成を認めないことから,憩室炎に伴う瘻孔と診断し,S状結腸切除,膀胱部分切除術を施行した.術後経過は全例良好であった.結腸憩室炎による結腸膀胱瘻は比較的稀な疾患であり,自験例5例とともに15年間の報告例を集計し,以前の本邦報告例と比較し,若干の文献的考察を加えて報告する.
著者
横山 貴史
出版者
地域漁業学会
雑誌
地域漁業研究 (ISSN:13427857)
巻号頁・発行日
vol.62, no.1, pp.1-7, 2022-05-20 (Released:2022-06-01)
参考文献数
16

This paper examines the geographical viewpoint in the study of fishery region revitalization, mainly based on the research results of human geography. There are two directions for revitalizing fishery region: the promotion of fishing itself, such as resource management and distribution and sales, and the promotion of tourism in fishery region, such as marine leisure. The geographical point of view is effective because the scales of the subject and its activities is variously developed depending on the direction.
著者
小山 尚美 流石 ゆり子 河野 由乃 村松 照美 郷 洋子 林正 健二 小野 興子 横山 貴美子 伊藤 健次 城戸 裕子 波木井 昇
出版者
山梨県立大学
雑誌
山梨県立大学看護学部紀要 (ISSN:18806783)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.27-37, 2009-02-27
被引用文献数
1

過疎農山村地域の独居後期高齢者の現在・今後の生活への思いを明らかにすることを目的にA町の6名に半構成的面接を行った。【猿や猪が農作物を喰い荒らして困る】【欲を言えばもう少し交通の便を良くして欲しい】と山間部特有の問題【年々歳をとってこのまま元気でいられるかどうか先のことはわからず不安だ】【みんな歳をとり昔のようにいかなくなり悔しい】【災害や跡継ぎがないことが心配だ】等の加齢変化の実感と不安を抱えていた。これらに【みんなとの交流は楽しみだ】【みんなが支えてくれてるので安心して生活できる】と田舎ならではの良さが勝り【ここでの今の生活は幸せだ】【子供の所へ行くより住み慣れたここに最期までいたい】と自ら今の生活を選択し【今の生活を維持する為にいろんなことを心掛けている】と日々努力をしていた。鳥獣被害対策、交通サービスの充実、現存の住民支援ネットワークの活用、役割保持の支援の必要性が示唆された。