- 著者
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加藤 尊秋
- 出版者
- 北九州市立大学
- 雑誌
- 若手研究(B)
- 巻号頁・発行日
- 2006
本研究は,原子力発電のリスクが発電所の周辺地域で受け入れられる条件を探り,既存の発電所立地地域での住民の心理的負担を軽減させる方策を考察することを目的とし。ケーススタディとして新潟県の柏崎刈羽原子力発電所を対象とした。平成19年度の実施内容は,以下である。1)発電所の操業に伴うさまざまな経済的利点が市町村によって異なることに着目し,その大きさと発電所のリスクに対する補償としての認知度の関連を,既存の社会調査(2005年度実施)の結果をまじえて検討した。その結果,公共的な資金の流入が大きな市町村では,発電所のリスクが補償されたとみなす人の割合が高まることがわかった。ただし,当該資金が補償として十分であると考える人は,1人あたりの額がもっとも大きい刈羽村でも最大限にみて4割にとどまることがわかった。この結果は,「日本原子力学会和文論文誌」に掲載された。2)柏崎刈羽原子力発電所から15km圏内の住民を対象とした訪問面接形式の社会調査をもとに,原子力発電所のリスクおよび原子力防災に対する住民の認知内容を調べた。とくに,発電所から2.3km圏(柏崎市の重点的な対策区域),10km圏(国や県の対策の基本となる緊急時計画区域),15km圏(明示的な対策区域の外)に分け,住民の認知内容を分析した。この結果は,日本リスク研究学会で発表されるとともに,「化学工学」に関連する論考が掲載された。3)上述の社会調査のデータを用い,発電所の経済的利点の認知と防災意識の間にみられる関連性について検討した。