著者
北 将樹
出版者
筑波大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2009

陸棲哺乳類由来の特異な麻痺性神経毒の研究を行った。ブラリナトガリネズミの顎下腺より分子量約5 kDaの神経毒をほぼ精製した。またカモノハシの毒液から,ヘプタペプチド (HDHPNPR) など11種の新物質を単離し,その生物活性を解明した.さらに爬虫類やトガリネズミの毒と同様,カモノハシ毒にもカリクレイン様プロテアーゼが含まれることを示した.これら神経毒の作用機序解明により,新たな鎮痛剤や血圧降下剤などへの展開が期待される.
著者
北 将樹 武仲 敏子 別所 学 Andres D. Maturana 木越 英夫 大舘 智志 上村 大輔
出版者
天然有機化合物討論会実行委員会
雑誌
天然有機化合物討論会講演要旨集 第60回天然有機化合物討論会実行委員会 (ISSN:24331856)
巻号頁・発行日
pp.109-114, 2018 (Released:2021-09-26)

1.はじめに 新規神経毒の化学的解明は,薬理学,神経科学,精神医学など,広範な生命科学の発展に寄与する.自然界からは様々な生物から有毒物質が見いだされているが,毒を持つ哺乳類は非常に稀であり,食虫目トガリネズミやソレノドン,単孔目カモノハシなどしか知られていない.またこれらの毒は稀少かつ不安定であり,活性物質は長らく未解明であった.トガリネズミは唾液に毒を持ち,ミミズなど獲物を麻痺させる小型哺乳類である.北米に棲息するブラリナトガリネズミBlarina brevicaudaは特に強い毒を持ち,カエルやネズミなど脊椎動物も餌としてしまう(図1).演者らはこれまでに,この種の顎下腺から脊椎動物に対して麻痺と痙攣を引き起こす致死毒ブラリナトキシンを発見し,その構造を分子量35 kDaの糖タンパク質と決定した1).ブラリナトキシンはセリンプロテアーゼの一種カリクレインと高い相同性を示し,またセリンプロテアーゼ阻害剤によりその酵素活性およびマウス致死活性が阻害されることから,致死毒の本体であると結論づけた. 一方で,ブラリナトキシンを獲物に注入してから毒性を示すまで数時間以上かかること,およびトガリネズミが主な餌とするミミズや昆虫など無脊椎動物には効かないことから,この動物の唾液成分にはタンパク毒素とは異なる麻痺物質が含まれると予想し,顎下腺抽出物の分離を再検討することとした.
著者
北 将樹
巻号頁・発行日
2013

科学研究費助成事業(科学研究費補助金)研究成果報告書:若手研究(A)2009-2012
著者
北 将樹
巻号頁・発行日
2012

科学研究費助成事業(科学研究費補助金)研究成果報告書:挑戦的萌芽研究(2009-2011)
著者
木越 英夫 北 将樹 早川 一郎
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究では,抗腫瘍性および腫瘍細胞増殖抑制活性を持つ研究代表者独自の化合物であるアプリロニンA,オーリライド,ハテルマライド類の抗腫瘍性および腫瘍細胞増殖阻害活性の発現機構に関する研究を行った.アプリロニンAについては,人工類縁体(ハイブリッド化合物)を合成し,その生物活性を検定した.オーリライドについては,その標的分子がプロヒビチンであることを確認し,活性発現機構を解明した.ハテルマライドについては,その人工類縁体を調製し,構造活性相関を得た.
著者
上村 大輔 有本 博一 吉田 久美 北 将樹 大野 修
出版者
慶應義塾大学
雑誌
学術創成研究費
巻号頁・発行日
2004

自然界での生物現象から真摯に学び、特異な生態系でくり広げられる生物現象を「生態系ダイナミズム」という視点で着目し、現象に関与する切れ味の良い有用天然有機分子の探索を試みた。また、新規化合物の単離・構造決定のみで満足することなく、化合物の展開利用までを視野に入れた姿勢で化学合成と生物学的意義の解明を目指した研究に取り組み、複数の重要化合物の発見及びその機能解明を達成した。本研究により、サンゴ幼生誘引物質や哺乳類毒の解明等これまで未解明であった現象に関与する物質を解明するとともに、関連科学分野への波及性を発揮する新規天然有機化合物の発見を導くことができ、生物分子科学の新領域を創成した。