著者
大舘 智志
出版者
低温科学第81巻編集委員会
雑誌
低温科学 (ISSN:18807593)
巻号頁・発行日
vol.81, pp.81-88, 2023-03-20

北海道などの寒冷地域に生息し冬季間も活動するトガリネズミ類の越冬生態について概観した.トガリネズミ類はおもに土壌表面や土壌中に生息している小型無脊椎動物を食べている.トガリネズミ類では冬期には餌資源量の減少が考えられるが,ある程度の安定した餌の供給は保たれていると考えられている.またトガリネズミ類では冬期には一旦,体サイズや頭骨サイズが縮小し,越冬後に急激にサイズが増大する.この現象はデーネル現象と言われており,トガリネズミ類の越冬生態と密接に関わっていると思われるが,そのメカニズムはほとんど解明されていない.
著者
大舘 智志
出版者
アカデミスト株式会社
雑誌
academist journal
巻号頁・発行日
2017-02-10

キューバソレノドンは、真無盲腸目のソレノドン科に属している頭胴長30cm、体重500~800グラム程度の哺乳動物です。真無盲腸目とは聞き慣れない言葉かもしれません。この分類群の設定と有効性には論議がありましたが、我々の最新の研究発表により真無盲腸目が有効であることがほぼ確実となり、そこには、モグラ科、トガリネズミ科、ハリネズミ科とソレノドン科が含まれています。ソレノドン科には、キューバに生息している今回の話題のキューバソレノドンと東隣のイスパニョーラ島にいるハイチソレノドンの2種しか現存しませんが、第4期の地層からはソレノドン属の別の2種が両島より出土しています。ソレノドン類は2種しか現存していないだけでなく、生息数も少なく絶滅危惧種です。ソレノドン類は唾液に毒を持ち、また原始的な形態や特異な形状からから生きた化石や珍獣などと称されています。
著者
高橋 裕 松村 秋芳 新屋敷 文春 藤野 健 原田 正史 大舘 智志
出版者
防衛医科大学校
雑誌
防衛医科大学校進学課程研究紀要
巻号頁・発行日
vol.32, pp.109-116, 2009-03

アズマモグラ (Mogera wogura,imaizumi) は足の母指側に指様の [内側足根突起 ; Medial tarsal process] を持つ。突起に収まる [内側足根骨 ; Medial tarsal bone] の顕微解剖所見も既に報告している。今回は、内側足根突起が、他の国産食虫目動物でも認められるのか調べた。
著者
北 将樹 武仲 敏子 別所 学 Andres D. Maturana 木越 英夫 大舘 智志 上村 大輔
出版者
天然有機化合物討論会実行委員会
雑誌
天然有機化合物討論会講演要旨集 第60回天然有機化合物討論会実行委員会 (ISSN:24331856)
巻号頁・発行日
pp.109-114, 2018 (Released:2021-09-26)

1.はじめに 新規神経毒の化学的解明は,薬理学,神経科学,精神医学など,広範な生命科学の発展に寄与する.自然界からは様々な生物から有毒物質が見いだされているが,毒を持つ哺乳類は非常に稀であり,食虫目トガリネズミやソレノドン,単孔目カモノハシなどしか知られていない.またこれらの毒は稀少かつ不安定であり,活性物質は長らく未解明であった.トガリネズミは唾液に毒を持ち,ミミズなど獲物を麻痺させる小型哺乳類である.北米に棲息するブラリナトガリネズミBlarina brevicaudaは特に強い毒を持ち,カエルやネズミなど脊椎動物も餌としてしまう(図1).演者らはこれまでに,この種の顎下腺から脊椎動物に対して麻痺と痙攣を引き起こす致死毒ブラリナトキシンを発見し,その構造を分子量35 kDaの糖タンパク質と決定した1).ブラリナトキシンはセリンプロテアーゼの一種カリクレインと高い相同性を示し,またセリンプロテアーゼ阻害剤によりその酵素活性およびマウス致死活性が阻害されることから,致死毒の本体であると結論づけた. 一方で,ブラリナトキシンを獲物に注入してから毒性を示すまで数時間以上かかること,およびトガリネズミが主な餌とするミミズや昆虫など無脊椎動物には効かないことから,この動物の唾液成分にはタンパク毒素とは異なる麻痺物質が含まれると予想し,顎下腺抽出物の分離を再検討することとした.