著者
山元 正継 西澤 達治 三森 俊亮 業田 顕行 緒方 武幸
出版者
一般社団法人 日本鉱物科学会
雑誌
岩石鉱物科学 (ISSN:1345630X)
巻号頁・発行日
vol.46, no.3, pp.81-107, 2017 (Released:2017-10-07)
参考文献数
62
被引用文献数
3

Two suites of xenoliths and an associated scoria-bearing pyroclastic fragment were sampled near Kampu volcano on Oga Peninsula of the northeast Japan arc. These scoria-hosted xenoliths consist of hornblende-bearing clinopyroxenite, hornblendite, and hornblende gabbro cumulates, hornblende megacrysts, and minor amounts of lower crustal pyroxene-plagioclase granulites. The minerals within the cumulates are euhedral and the interstitial glass is interconnected with the hosting scoria. The cumulates and their hornblende megacrysts have 87Sr/86Sr and 143Nd/144Nd ratios (0.70316-0.703390 and 0.512877-0.512974) similar to those of the Kampu magmas (0.702917-0.703409 and 0.512883-0.512988). However, these samples are not in isotopic equilibrium with each other or with the hosting scoria, with the latter having relatively constant Sr isotopic compositions (average of 0.703187). This is exemplified by two hornblende megacrysts with unusually high Al2O3 contents (< 17 wt%) that have different Sr isotopic ratios (0.703039 and 0.703235) and are isotopically homogenous from core to rim. This suggests that each melt that coexisted with the megacrysts was separated as a discrete batch without any isotopic mixing near the base of the lower crust. The host scoria was derived from discrete batches of magma having different isotopic compositions, but the scoria itself is isotopically homogeneous, indicating magma mixing and homogenization during the rapid ascent and transportation of these xenoliths from the lower crust to the Kampu volcano. This was most likely caused by the injection of upper-mantle-derived mafic magma into the base of the lower crust, as evidenced by micro-hornblende within the hosting volcanic glass that contains more Mg than the hornblende megacrysts.   The granulite xenoliths have mosaic textures, contain plagioclase with deformation twins, are closely inter-locked, and do not contain any hosting glass material. They have Sr and Nd isotopic compositions (0.70501-070532 and 0.51260-0.51263) that contrast with the cognate hornblende megacrysts, the cumulates, and the Kampu lavas, but are similar to less metasomatized lower-crustal amphibolites (amphibole with compositions of 0.70524 and 0.51261) from Ichinomegata maar near Kampu volcano. Rare hornblendes within these granulites record the onset of metasomatism, although the isotopic composition of these samples remained relatively unchanged until a subsequent cryptic metasomatic event that generated the wide range of isotopic and trace element compositions present within the Ichinomegata amphibolites.
著者
藤本 幸雄 山元 正継
出版者
地学団体研究会
雑誌
地球科学 (ISSN:03666611)
巻号頁・発行日
vol.64, no.3, pp.127-144, 2010
参考文献数
93
被引用文献数
1

白神山地には七つ滝,大沢川南部・北部,菱喰山,白神岳複合の白亜紀花崗閃緑岩体が分布し,花崗岩・トーナル岩を伴う.白神岳東部岩体はドーム,中央部岩体は南東開きベーズン,西部岩体は北開きベーズン構造で,西部・中央部岩体間に左横ずれマイロナイト帯が位置する.白神山地ではRb-Sr全岩アイソクロン年代が110Ma,鉱物K-Ar年代が89Maのマグマ活動(白神岳東部,西部,大沢川南部,七つ滝)と,白神岳東部岩体と同源の磁鉄鉱系トーナル岩質マグマが,深部で地殻物質を同化して生じたと考えられる菱喰山花崗閃緑岩質マグマ活動が,Rb-Sr全岩アイソクロン年代86Ma,黒雲母K-Ar年代71Maにあった.また66Ma頃に300℃程度に冷却する花崗岩質マグマ活動が続き,西部では左横ずれせん断帯の活動と白神岳西部岩体の上昇運動も重複して西部岩体を変形させた.既報の放射年代値から,北上帯花崗岩類はRb-Sr全岩アイソクロン・角閃石と黒雲母K-Ar法とも135-105Maで比較的急冷を,阿武隈帯は125-100Ma,120-95Ma,115-85Maと閉鎖温度の低下とともに若く徐冷を示す.朝日・八溝・筑波山地は110Ma以降複数回の花崗岩活動があった.SrI値の年代変化は北部北上がII帯からIV帯に漸増,南部北上は0.7045以下で漸増,阿武隈帯は0.7047-0.7052で漸増,朝日・八溝・筑波山地は0.7048以上で急増する.放射年代とSrI,NdI値から,白神・太平山地の花崗岩類は阿武隈花崗岩類に対比される.
著者
本多 朔郎 長尾 敬介 山元 正継 北 逸郎 高島 勲 秋林 智
出版者
秋田大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1989

タイの地熱は、ヒマラヤ造山帯の後背地の安定地塊上に発達するもので、火山活動を伴っていない。しかし、高い地殻熱流量で特徴づけられ、沸騰泉を含む多数の温泉が認められる。そのような非火山性の地熱活動の熱源・湧出機構等を解明し、火山性地熱で発達した探査法の有効性を検証するため、以下のような項目の調査・研究を行い次のような成果を得た。(1)温泉・土壌ガスの分析ーー第1次の調査では、主要地熱地域について研究を行い、地熱貯留層に関連するとみられる断裂付近では、CO_2ガス中の^<13>C同位体の異常およびラドンガスの濃集が認められ、地下の高温を示すH_2ガスも一部の地域の温泉に伴ってみられるのみで、全体としては少なく、火山性地熱とは異なった傾向を示した。第2次の調査では、広域的なガス特性を求めるため、北部地域全体の約40ケ所の温泉付随ガスを採取し、He同位体比(^4He/^3He)を主体に検討した。分析は現在進行中であり、詳細な議論はできないが、深部断裂が発達する花崗岩体の周辺部でHe同位体比が高いことが確認され、同時にマントル物質の寄与の可能性が指摘された。(2)ガンマ-線による探査ーータイの地熱貯溜層を構成する花崗岩は放射性元素の含有量が高く、地熱流体の上昇通路となる断層の位置検出には最適である。また、典型的な岩相については、地下の地質を推定することもできた。(3)新期火山岩の解析ーー第四紀後期の玄武岩溶岩について、アルカリ元素等の分析を行い、マグマの形態、深さ等の情報の推定を行った。その結果、マグマは基本的に深部の独立したマガマ溜まりからもたらされており、熱源としての寄与はそれほど大きくないと推定された。しかし、層序的な解析から、年代値は既存の70万年(KーAr年代)より若く、年代的に熱の寄与を無視することはできないと思われる。(4)岩石中の放射性元素の分析ーー花崗岩を中心に約100個の試料を採取し、放射性元素(U,Th,K)の分析を行った。その結果、日本の花崗岩の5ー10倍という非常に高い含有量が記録され、その値から計算された発熱量として8ー18HGUが得られた。この値は、地下3ー5kmで300℃という高温を可能にするものである。(5)変質岩の年代測定ーー変質岩は石英脈、方解石脈を主体に年代測定を行い、現在の地熱徴侯地以外では数10ー100万年を超える古い年代が得られ、非火山性地熱が長期間継続することが確かめられた。(6)流体包有物の測定ーー年代測定を行ったのと同じ石英脈、方解石脈試料について測定を行い、ボ-リング・コアでは現在の地下温度とほぼ同じ値が得られた。(7)貯留層モデルの作成ーー最も開発の進んでいる地域について、坑井位置、水位、温度、圧力などのデ-タをもとに貯留層のコンピュ-タモデリングを行い、510,3510,8610年後の貯留層の状態を推定した。また、より広域的なモデル計算のため、可能な地下温度分布、岩石物性の変化等のデ-タを収集した。以上の結果および昭和63年度に実施した現地調査のデ-タを総括すれば、タイの地熱は主として放射性元素の崩壊熱による高温部を通過した水が熱の供給を受け、高温になったものと思われるが、He同位体や、若い玄武岩の存在から火成起源の熱の寄与もあるものと思われる。探査法については、非火山性地熱でも火山性地熱とほぼ同じ手法が利用できることが明らかとなったが、放射能探査が特に注目された。残された問題として、異常に高いHe同位体比の原因、流体包有物から予想される地下温度が地化学温度計で求められた温度より低いことなどがあるが、今回の調査が本研究の最後であり、今後の室内実験結果により最も適切な成因を提示したい。
著者
根岸 義光 丸山 孝彦 山元 正継
出版者
地学団体研究会
雑誌
地球科學 (ISSN:03666611)
巻号頁・発行日
vol.56, no.5, pp.269-288, 2002-09-25

栃木県足尾山地北部には西南日本内帯の濃飛流紋岩類に対比される後期白亜紀〜古第三紀珪長質火山岩類が分布する.同火山岩類のうち最も広い露出面積を持つものは,中禅寺湖南岸に分布するいろは坂溶結凝灰岩類である.いろは坂溶結凝灰岩類は野外観察および顕微鏡観察結果に基づき,6つの火砕ユニット,1つの火砕サブユニット,そして3つの火山ステージに区分されることが判明した.岩石化学的性質に基づくと,いろは坂溶結凝灰岩類を噴出したマグマはマグマ溜りの下方から上方へと珪長質成分に富む累帯マグマであり,マグマの形成は大きく3回の時期に分かれていたと思われる.また帯磁率値から推定されるマグマを取り巻く形成環境は,ステージ初期において酸化的状態,ステージ中期〜後期において還元的状態であったことが示された.さらにステージIIから得られたSr同位体比初生値(0.71173±0.00028)を加味すると,いろは坂溶結凝灰岩類のステージ中期〜後期に噴出したマグマの形成は,起源物質と基盤岩類との混成作用を通して行われたことが示唆される.加えて,いろは坂溶結凝灰岩類を供給したマグマメカニズムとYellowstoneやTaupoにおける大規模珪長質火砕流堆積物を供給したマグマメカニズムとの類似性に着目すると,いろは坂溶結凝灰岩類の主要ユニットマグマは,引張応力が卓越する中,地殻歪み速度の遅い静穏な環境のもとで形成されたと推定される.いろは坂溶結凝灰岩類から今回得られた岩石学的諸性質に基づくと,いろは坂溶結凝灰岩類の火山活動は原山ほか(1985)による西南日本内帯中部地方の火成ステージ区分のうちステージIIIチタン鉄鉱系の活動に対比され,笠ケ岳流紋岩類や大雨見山層群の火山活動に相当することが明らかになった.