著者
山口 心美 栗屋 直子 中嶋 名菜 北野 直子 松添 直隆
出版者
美味技術学会
雑誌
美味技術学会誌 (ISSN:21867224)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.21-28, 2017-01-31 (Released:2018-10-15)
参考文献数
18
被引用文献数
1

食味向上という観点から100ºC以下の低温度帯での加熱に着目し,それらがミニトマトの果実成分に及ぼす影響を調査した。特に食味に関する成分に焦点をあて,糖,有機酸およびアミノ酸をHPLCにより定性・定量した。糖のうち,90℃-10 minおよび90℃-15 minで加熱した場合に,スクロースが有意に増加した。一方で,グルコースおよびフルクトースの減少は見られなかった。有機酸であるクエン酸とリンゴ酸は,加熱処理に対して同様の変化を示し,70ºCの処理区で最小値であった。食味に重要な役割を果たしているグルタミン酸とアスパラギン酸の比は有意に変化しなかった。これらのことから,トマトの食味に関与する成分である糖および有機酸は,加熱温度や浸漬時間によって影響されることが明らかとなった。さらに,加熱温度の違いによって食す際に甘味や酸味が変化する可能性が示された。
著者
中嶋(坂口) 名菜 高野 優 福島 英生 北野 直子 森 政博
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.70, no.6, pp.331-336, 2012 (Released:2013-01-08)
参考文献数
21

【目的】マゲイシロップは血糖指数(GI: glycemic index)が低い甘味料として注目されている。そこでグラニュー糖の代わりにマゲイシロップを配合した食品を摂取してもらい,マゲイシロップの食後高血糖抑制効果について検討した。【方法】疾患を認めない若年成人女性7名を対象に,2006年4~9月の間に実施した。約12時間の絶飲・絶食後,早朝空腹時の血糖値を測定した。WoleverとJenkinsの方法に基づき,基準食の血糖曲線下面積(AUC: areas under the curve)を算出し,糖質量を基準食と同量に調整した8種類の試験食(ロールケーキ,アイスクリーム,ジャム,糖尿病食にグラニュー糖もしくはマゲイシロップを配合)を基準食と同じ方法で摂取させ,同一被験者による基準食,グラニュー糖配合,マゲイシロップ配合の3群比較を4食品ごとに行った。基準食のAUCを100として各試験食のAUCの割合を求めGIを算出した。【結果・結論】一般的に用いられるグラニュー糖を使用した食品(対照食)に比べ,マゲイシロップを配合した食品(ロールケーキ,アイスクリーム,ジャム)においてAUC,GIの有意な低下が示された(p<0.05)。本研究により一定量以上のグラニュー糖と置換したマゲイシロップ含有食品3種類(ロールケーキ,アイスクリーム,ジャム)において食後高血糖抑制効果が確認された。
著者
中嶋 名菜 福山 豊 松添 直隆 北野 直子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.25, 2013

【目的】近年、農業人口の減少、核家族化、食生活の洋風化などの社会的変化により行事食を家庭で作る機会が減り、伝統的な行事食が次の世代へ伝承されない傾向にある。そこで阿蘇神社を中心に現在でも数々の農耕祭事が行われている阿蘇地域において、行事食ならびに郷土料理の喫食状況を明らかにすることを目的とした。【方法】2012年4-8月、阿蘇7市町村在住の女性780名を対象に、日本調理科学会特別研究の質問票を基に、行事食、郷土料理に関する調査を行った。基本属性(性、年齢、居住地区、家族構成)に不備のある者を除いた430名を解析対象とし、喫食状況について年代(40歳代以下、50・60歳代、70歳代以上)、世帯別(単身世帯、同世帯、2世帯、3世帯以上)に比較した。【結果】阿蘇地域においては、正月、節分、上巳、土用の丑の日、大晦日の行事の経験はどの年代においても90%以上が経験していた。七草・春分の日・盂蘭盆・お月見・秋分の日・春祭り・秋祭りが40歳代以下の者が50歳代以上より経験率が有意に低かった(p<0.05)。また、お節料理では、年代が高いほど家庭で作る割合が高かったが、世帯別では有意な差は見られなかった。郷土料理では、高菜飯やだご汁、いなりずしなどは全体の喫食経験がほぼ100%であるのに対し、すぼ豆腐に関しては70歳代以上でも経験率が60%未満であり、赤ど漬け、とうきび飯、ひこずり、すぼ豆腐、のっぺ汁、栗飯において年代間で喫食経験に有意差が見られ、年代が高いほど高かった(p<0.05)。以上より、阿蘇地域の行事食や郷土料理は年代が低いほど伝承度合が低く、行事、調理法や食品の種類によって伝承の容易さに相違がある可能性が示唆された。
著者
江藤 ひろみ 北野 直子 南 久則
出版者
日本食生活学会
雑誌
日本食生活学会誌 (ISSN:13469770)
巻号頁・発行日
vol.20, no.3, pp.195-202, 2009-12-30 (Released:2010-01-26)
参考文献数
21
被引用文献数
3 1

Children's development is affected by food habits, which are influenced by guardians' dietary awareness. We conducted a nutritional survey using a questionnaire about school meal system and guardians' knowledge of children's food and health in 41 public and 115 private kindergartens in Kumamoto prefecture. We also surveyed lunch programs at 9 kindergartens.  There were 4 groups of lunch programs, as follows: (1) Taking one's own lunch box and drinking milk provided by kindergarten, (2) Providing lunch from public school lunch center, (3) Providing lunch prepared by kindergarten and (4) Providing lunch through a catering service. There was no nutritional management system in kindergarten, using (1), (3) or (4). We observe that there were significant differences in the contents of breakfast and snack among the 4 groups and that suppertime was also significantly different among the groups. Looking at the contents of breakfast, intake of sweet rolls was [significantly] high in (4). In (4), also, suppertime was significantly later than in the other three groups. These results indicated that the eating habits of children were influenced by the daily life patterns of their families.  Only the meal contents of group (2) were managed by a school dietician. Dietary awareness of the guardians of group (2) was relatively high, and it seemed that their meal contents were appropriate.
著者
秋吉 澄子 原田 香 小林 康子 柴田 文 川上 育代 中嶋 名菜 北野 直子 戸次 元子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.32, 2021

<p>【目的】日本調理科学会特別研究「次世代に伝え継ぐ 日本の家庭料理」において、地域に残されている特徴ある家庭料理を、地域の暮らしの背景とともに記録し、各地域の家庭料理研究の基礎資料、家庭・教育現場での資料、次世代へ伝え継ぐ資料などとして活用することを目的に、聞き書き調査を行った。【方法】熊本県内を6地区(阿蘇、県北、熊本近郊、県南、天草、球磨)に分類し、昭和35〜45年頃に各地域に定着していた家庭料理について、11名の協力者を対象に聞き書き調査を行った。その調査結果や参考文献を基に、熊本県の行事食の特徴を検討した。【結果】正月には「雑煮」、「辛子蓮根」、「のっぺ」の他、「吉野ずし」、「このしろの姿ずし」、「ねまりずし」などが各地域で作られていた。御正忌にはお寺で「こしょう大根」が作られ、参拝者に振る舞われた。ひな祭りには「ひともじのぐるぐる」や「みなみそ」が、6月中旬の田植えを終えた頃には「さなぼりまんじゅう」が食べられた。7月や8月の盆には「あんこかし」、「棒だら」が作られ、それ以外にも人が集まる際には地元で採れる山菜を使ったおこわや煮しめが作られた。地域の行事では、2月初午に天草地区で「がね揚げ」、3月上旬益城町木山地区の初市で「市だご」、3/16人吉・球磨地区の猫寺さんの祭りで「お嶽だんご」、5/31〜6/1八代地区の氷室祭で「雪もち」、10/25多良木地区の天神さんの祭りで「つぼん汁」、11/15和水地区の山太郎祭で「がね飯」、その他の祭りや結婚式などで天草地区では「ぶえんずし」が作られた。行事食は地元で採れる四季折々の旬の食材を活用し、地域の人々の楽しみとして暮らしに根付いていることが分かった。</p>
著者
秋吉 澄子 小林 康子 柴田 文 原田 香 川上 育代 中嶋 名菜 北野 直子 戸次 元子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.31, 2019

<p>【目的】日本調理科学会特別研究「次世代に伝え継ぐ 日本の家庭料理」において,地域に残されている特徴ある家庭料理を,地域の暮らしの背景とともに記録し,各地域の家庭料理研究の基礎資料,家庭・教育現場での資料,次世代へ伝え継ぐ資料などとして活用することを目的に,聞き書き調査を行った。本研究では,熊本県の「副菜」の特徴について検討した。</p><p>【方法】熊本県内を6地区(阿蘇,県北,熊本近郊,県南,天草,球磨)に分類し,昭和35〜45年頃に各地域に定着していた家庭料理について,11名の協力者を対象に聞き書き調査を行った。その調査結果や参考文献を基に,熊本県の副菜の特徴を検討した。</p><p>【結果および考察】野菜のおかずでは,本県の郷土料理として全国的にも有名な「一文字のぐるぐる」,大根を使った「こしょう大根」,「煮なます」,「のっぺ」,旬の食材を使った「たけのこのひこずり」,「菜やき」,「どろりあげ」が日常の食事によく作られていた。保存食(漬物)では,阿蘇の「高菜漬け」や「ふさぎり漬け」,県南の山間部で作られる「豆腐のみそ漬け」,もろみ味噌である「しょんしょん(しょうゆの実)」が作られていた。汁物では,大豆を使った「呉汁」や人吉・球磨地方の「つぼん汁」が挙げられた。その他,熊本近郊(西原地区)の「落花生豆腐」や阿蘇(高森地区)の「田楽」,天草の「みなみそ」が副菜として挙げられた。熊本県の副菜の特徴として,地元で採れる旬の食材を使用し,しょうゆ・みそでシンプルに味付けをした料理が多く,油で炒めるなどの方法により,うまみやコクをプラスする工夫が見られた。採れた食材を無駄にすることなく,すべて頂くといった先人の知恵も生かされていた。</p>
著者
北野 直子 中嶋 名菜 福山 豊 中嶋 康博 松添 直隆
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.47, no.5, pp.254-259, 2014 (Released:2014-11-07)
参考文献数
17

2010,2012年に,熊本市と農耕祭事の行事が残っている阿蘇地域において質問紙調査を行った。質問は,年中行事の認知・経験と喫食状況であった。対象は,熊本市が136名,阿蘇地域が168名の食生活改善推進員であった。年中行事は,正月,節句,七夕など15行事であった。両地域の90%以上の者が,ほとんどの行事について認知,経験をしていた。「春祭り」,「秋祭り」の認知度,経験度は他の年中行事より低く,地域差は認められなかった。稲作儀礼を中心とした行事は,農業従事者の高齢化,農業就業人口の減少とともに廃れていき,行事食の伝承も難しくなっていると考えられた。行事食を家庭で作る割合は熊本市より阿蘇地域が高かった。熊本市に比し阿蘇地域が3世代世帯は多かった。その結果,年長者から子どもへ継承されやすいと考えられた。
著者
中嶋(坂口) 名菜 高野 優 福島 英生 北野 直子 森 政博
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.70, no.6, pp.331-336, 2012

【目的】マゲイシロップは血糖指数(GI: glycemic index)が低い甘味料として注目されている。そこでグラニュー糖の代わりにマゲイシロップを配合した食品を摂取してもらい,マゲイシロップの食後高血糖抑制効果について検討した。<br>【方法】疾患を認めない若年成人女性7名を対象に,2006年4~9月の間に実施した。約12時間の絶飲・絶食後,早朝空腹時の血糖値を測定した。WoleverとJenkinsの方法に基づき,基準食の血糖曲線下面積(AUC: areas under the curve)を算出し,糖質量を基準食と同量に調整した8種類の試験食(ロールケーキ,アイスクリーム,ジャム,糖尿病食にグラニュー糖もしくはマゲイシロップを配合)を基準食と同じ方法で摂取させ,同一被験者による基準食,グラニュー糖配合,マゲイシロップ配合の3群比較を4食品ごとに行った。基準食のAUCを100として各試験食のAUCの割合を求めGIを算出した。<br>【結果・結論】一般的に用いられるグラニュー糖を使用した食品(対照食)に比べ,マゲイシロップを配合した食品(ロールケーキ,アイスクリーム,ジャム)においてAUC,GIの有意な低下が示された(<i>p</i><0.05)。本研究により一定量以上のグラニュー糖と置換したマゲイシロップ含有食品3種類(ロールケーキ,アイスクリーム,ジャム)において食後高血糖抑制効果が確認された。
著者
秋吉 澄子 小林 康子 柴田 文 原田 香 川上 育代 中嶋 名菜 北野 直子 戸次 元子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.29, 2017

【目的】地域に残されている特徴ある家庭料理を、聞き書き調査により地域の暮らしの背景とともに記録し、各地域の家庭料理研究の基礎資料、家庭・教育現場での資料、次世代へ伝え継ぐ資料などとして活用することを目的とし、(一社)日本調理科学会の特別研究「次世代に伝え継ぐ 日本の家庭料理」が実施された。<br /><br />【方法】熊本県内を6地区(阿蘇、県北、熊本近郊、県南、天草、球磨)に分類し、11名の協力者を対象に聞き書き調査を行った。その調査結果や参考文献を基に、おやつの特徴を検討した。<br /><br />【結果】おやつは農繁期の小昼(こびる=熊本弁でおやつのこと)としてよく食べられ、小麦粉を使用したものが多かった。熊本近郊では小麦粉の団子に大豆を混ぜた「豆だご」や、輪切りにしたからいもを包んだ「いきなり団子」が挙げられた。県北ではその土地で採れる里芋や栗を小麦粉の団子で包んだ「里芋団子」や「栗団子」、米の粉にゆずの皮、味噌、砂糖、水を加えて練り、竹の皮に包んで蒸した「ゆべし」があった。県南では夏場に「みょうがまんじゅう」が作られ、八代地区では神社の祭りで「雪もち」が食べられていた。天草では特産であるからいもを使った「こっぱ餅」や﨑津名物の「杉ようかん」があった。球磨では3月の神社の祭りで作られる「お嶽まんじゅう」や、からいもともち米を一緒に炊いてついた「ねったんぼ」が食べられていた。その他、小麦粉を使って簡単にできるおやつとして「あんこかし」や「べろだご」、「焼きだご」が県内各地で作られていた。