- 著者
-
南 哲人
- 出版者
- 日本神経回路学会
- 雑誌
- 日本神経回路学会誌 (ISSN:1340766X)
- 巻号頁・発行日
- vol.21, no.1, pp.13-19, 2014-03-05 (Released:2014-05-16)
- 参考文献数
- 33
ヒトにとって,顔は,一般的な視覚刺激であり,重要な社会刺激である.われわれは,顔からは,個人,性別,年齢,感情状態などのさまざまな情報を得ることができる.これまで,行動実験やfMRIや脳波などの脳イメージング研究から,顔認知処理に関して,さまざまな研究が行われてきた.その研究のほとんどが,顔の輪郭や顔のパーツ配置など,顔の構造情報に関係するものであった.しかしながら,近年,顔色などの,顔の表面情報も顔認知に重要なことが示されてきた.そこで,われわれは,これまで,顔の色情報が顔認知処理にどのような影響を与えるのかを調べるために,通常の顔色から逸脱した顔色の視覚刺激を見たときの,脳波成分について調べてきた.その結果,顔に関係するN170成分の振幅が大きくなった.N170は顔の初期検出の指標ではないかといわれていることから,本研究におけるN170振幅の増大は,顔色を顔の初期検出の際に使用している可能性を示唆している.