著者
乾 敏郎
出版者
日本神経回路学会
雑誌
日本神経回路学会誌 (ISSN:1340766X)
巻号頁・発行日
vol.25, no.3, pp.123-134, 2018-09-05 (Released:2018-10-31)
参考文献数
49
被引用文献数
4

本論文では,Fristonの自由エネルギー原理によって多くの脳機能を統一的に説明できることを示した.自由エネルギー原理は純粋視覚(pure vision)を説明するために生まれたものであった.すなわちHelmholtzの無意識的推論が,網膜像から近似事後確率を推定する過程であるとする従来の枠組みに近いものであった.しかし,自由エネルギーの最小化にはもう一つの方法がある.それが能動的推論である.このアイデアによって,自由エネルギー原理が運動制御に適用され新たな制御理論が生まれた.さらに感情や意思決定(行動決定)も同じ原理で説明される.ここでは上記の両推論過程がともに働いて目的が達成される.感情では内受容感覚とアロスタシスにそれぞれ対応し,意思決定では,外在的価値と内在的価値に基づく行動に対応する.また精度(precision)という概念の重要性を強調し,精神医学や認知発達との関連についても議論した.
著者
乾 敏郎
出版者
日本動物心理学会
雑誌
動物心理学研究 (ISSN:09168419)
巻号頁・発行日
vol.60, no.1, pp.59-72, 2010 (Released:2010-06-25)
参考文献数
42
被引用文献数
1

In this paper, we propose three hypotheses about language understanding. One of the fundamental and important components of language processing is assignment of a thematic role to each word in a sentence, based on word order and particles or prepositions. Therefore, we first discuss the brain mechanism of thematic role assignment, followed by a discussion of the brain mechanism for outlining the meaning of a sentence. We then evaluate the function of the mirror neuron system in language understanding. Finally, we discuss the brain mechanisms of mental perspective shift and hierarchical processing in language comprehension.
著者
吉川 左紀子 乾 敏郎
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
vol.57, no.3, pp.175-178, 1986-08-30 (Released:2010-07-16)
参考文献数
6
被引用文献数
1

For use in experiments investigating semantic processing of nonverbal materials, 82 drawings of familiar objects are presented, along with their most common names, the mean ratings of image agreement, adequacy of complexity, and familiarity. Most concepts were exemplars from one of 10 familiar categories (animals, insects, vehicles etc.). Names and ratings were obtained from 81 undergraduates and graduate students. The moderate correlation (r=.40) was found between percentage of the most common name and image-agreement rating, but the other correlations were negligible. The mean ratings of three variables except adequacy of complexity were compared with those of Matsukawa (1983), obtained from Japanese subjects using Snodgrass and Vanderwart's (1980) drawings. The high correlation between familiarity of both studies (r=.88) indicates that this variable is not affected by visual characteristics of the particular stimulus set. The possible uses of the present stimulus set were suggested.
著者
乾 敏郎 得丸 定子
出版者
京都大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2013-04-01

催眠の認知神経科学的研究をレビューし、催眠研究において暗示の効果が脳活動のどのような側面に現れるのかを整理検討した。さらに、最近の瞑想の認知神経科学的研究をレビューし、瞑想初心者vs.熟練者との比較を通し、静止vs.瞑想状態におけるデフォールトモードネットワーク(DMN)内の機能的結合度、脳各領域における活性化/非活性化、共振性、結合度などを検討した。これらをふまえて、自由エネルギー原理に基づくそれらの脳内メカニズムに関する統一理論を提案した。
著者
乾 敏郎
出版者
日本認知科学会
雑誌
認知科学 (ISSN:13417924)
巻号頁・発行日
vol.12, no.3, pp.135-135, 2005 (Released:2009-10-16)
著者
酒井 浩二 乾 敏郎
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
vol.70, no.3, pp.211-219, 1999-08-25 (Released:2010-07-16)
参考文献数
19
被引用文献数
1

We investigated the distortion that occurs during the storage of representations in visual short-term memory by using smooth closed figures with varying stimulus complexity and similarity. In similarity judgments, the results suggested that the psychological similarity between two figures was based on averaging physical similarities of matched features. In a detection experiment, the results showed that the processing of detection was limited in its capacity for the precision of shape, and that it was more difficult to detect the precise shape in the case of complex figures. In a recognition experiment, the results showed that forgetting occured during a one-second retention interval. These two results showed that internal noise distorts both detection and retention processes. These findings suggested that representations of the complex figures with many features were distorted to a larger degree because each feature was individually masked with internal noise. It is concluded that the psychological similarity between an input pattern and a distorted pattern stored in short-term memory is invariant with stimulus complexity.
著者
乾 敏郎
出版者
日本動物心理学会
雑誌
動物心理学研究 (ISSN:09168419)
巻号頁・発行日
pp.1005130062, (Released:2010-05-24)
参考文献数
42
被引用文献数
1

In this paper, we propose three hypotheses about language understanding. One of the fundamental and important components of language processing is assignment of a thematic role to each word in a sentence, based on word order and particles or prepositions. Therefore, we first discuss the brain mechanism of thematic role assignment, followed by a discussion of the brain mechanism for outlining the meaning of a sentence. We then evaluate the function of the mirror neuron system in language understanding. Finally, we discuss the brain mechanisms of mental perspective shift and hierarchical processing in language comprehension.
著者
石川 敦雄 西田 恵 渡部 幹 山川 義徳 乾 敏郎 楠見 孝
出版者
日本環境心理学会
雑誌
環境心理学研究 (ISSN:21891427)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.1-14, 2016 (Released:2017-05-08)
参考文献数
49

室内空間の多くは社会的な相互作用のための場であり,より良い対人関係・行動に配慮した室内空間が期待されている。本研究の主な目的は,一般的な水準の広さや明るさ等の室内空間の物理的要因が印象形成に影響を及ぼすかどうかを検証することである。実験1の156名,実験2の364名の社会人は,室内空間CGと人物の合成画像を見て対人印象と対人関係への期待を評価した。次に,室内空間CGを見て広さ,明るさ等の物理的要因と感情的要因を評価した。実験1および実験2の結果に基づくパス解析により,室内空間の「広々した」印象が対人印象「共同性」因子に影響し,その「共同性」因子が対人関係の期待に影響することが示唆された。これらの実験結果は,日常的な空間としてデザインされる物理的要因が印象形成に影響を及ぼすことを示している。
著者
川村 春美 乾 敏郎 鈴木 智 徳永 幸生
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-2, 情報・システム 2-情報処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.80, no.5, pp.1046-1056, 1997-05-25
参考文献数
7
被引用文献数
5

カラー画像から, 照明光の色を推定する手法の一つに, 物体の平均の色が灰色であると仮定(灰色仮説)し, 画像の平均の色を照明光の色として推定する手法がある. この手法は, 照明光の推定値が物体の平均の色に依存するため, 仮説が成り立たない場合, 推定精度が低下することが問題であった. 本論文では, 相異なる照明光下における共通物体からの反射光の平均の色が, 黒体放射軌跡上にある場合に, 灰色仮説が局所的に成立すること, および, その場合に, 共通物体からの反射光の平均を照明光の色として推定できることを示す. 更に反射光の平均と照明光の色とが知覚的に同一である場合の照明光推定の方法および実験結果を示す. また, 相異なる複数物体における反射光の中から灰色仮説が成立するような色の組合せを選択する方法も示す
著者
前川 亮 成山 雄也 朝倉 暢彦 乾 敏郎
出版者
日本認知心理学会
巻号頁・発行日
pp.20, 2017 (Released:2017-10-16)

他者感情の推定時に自分の中に相手と同じ感情を生じ、感情を共有することで行う感情推定を共感的な感情理解という。この共感感情の生起を、ミラーニューロンの働きによって生じる身体状態の模倣によって説明する試みがなされているが、まだ十分な証拠は得られていない。本研究では特に共感性の個人差に着目し、共感性の高低が模倣的な身体状態の変化に及ぼす影響を検討した。実験参加者は感情推定課題を行い、その際の表情筋活動・心拍・発汗・皮膚温を記録した。さらに質問紙によって共感性を評価し、身体状態の変化と比較した。その結果、共感性の高い群では模倣的な身体状態の変化がほとんど見られなかったのに対し、共感性の低い群では感情推定値と身体状態の間に相関関係がみられた。この結果は、ミラーニューロンの働きが社会的文脈によって抑制されるという知見と一貫しており、共感性の高い参加者はより抑制制御に優れていると考えられる。
著者
乾 敏郎
出版者
日本認知科学会
雑誌
認知科学 (ISSN:13417924)
巻号頁・発行日
vol.2, no.2, pp.2_5-2_20, 1995-05-30 (Released:2008-10-03)
参考文献数
39

The topic of information integration in the brain is discussed at three levels of explanation: computational theory, representation and algorithm, and implementation. We initially discuss how outputs of early vision modules are integrated into one unique representation: a 21/2D sketch. In this problem Bayesian estimation framework is useful to explain many psychophysical data obtained by a cue-conflict paradigm. A method on how to construct a stable visual world through body and eye movements is presented next. Outputs from different modalities are integrated for space constancy. Several recent physiological data support multiple-coordinated-reference-frames view, the notion being that as the body moves relative to external space, the brain updates these different frames of reference and remaps their relationship to each other. Finally, we discuss information integration in shape perception and visual selection. In this section, two new hypotheses for information integration are introduced: principal component analysis (KL-expansion) and integrated competition.
著者
乾 敏郎
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. NC, ニューロコンピューティング (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.103, no.392, pp.19-24, 2003-10-17

アリストテレスは模倣こそが人間の基本的機能であると説き、社会心理学においては親子関係のような社会関係にある場合、模倣学習が重要であることが指摘されている。一方、バンデューラは、観察学習を、社会現象を説明する一つの基礎過程として注目した。さらに人間は、日常生活において適切な行動を選択するためにさまざまなエピソードを内的にシミュレートする能力を持っている。そして、このようなメンタルシミュレーションは高度な創造性の基礎をなす機能であると考えられる。本論文ではまず、身体部位道具化現象に関する臨床検査の結果を報告する。ここでは、左頭頂葉障害の患者と健常者において、身体部位道具化現象の理解や、生成、検出などを比較した。次に模倣と行為の系列の予測学習に関するfMRI実験の結果を紹介した。最後に、模倣とパントマイムの脳内メカニズムについて考察を行った。
著者
飯村 大智 朝倉 暢彦 笹岡 貴史 乾 敏郎
出版者
日本認知心理学会
巻号頁・発行日
pp.20, 2014 (Released:2014-10-05)

吃音症と呼ばれる言語障害の背景には発話運動制御の問題が示唆されている。本研究では、吃音者は聴覚フィードバックへの依存度が高いこと、及びその背景としてフィードバックの予測・照合の精度が悪いという2つの仮説を立て、行動実験を行った。実験は、自分の声が遅れて聞こえる状態を順応させた上で(0ms;順応なし、66ms、133ms)、自分の声の同時性判断(0ms~150ms)が各条件でどのように変化するかを調べた。結果は非吃音者と比べて吃音者で順応によって同時性判断の判断基準が大きく変化し、フィードバックに依存した運動制御を行っていることが示唆された。一方で同時性判断の精度は非吃音者との有意差はなかったが、吃音者で回答の判断基準と精度の両変数には有意な相関係が見られた。吃音者では聴覚フィードバックへの依存と予測・照合の精度の問題には関連性があり、吃音者に特異的な発話の運動処理の問題が推察される。
著者
鎌田 東二 河合 俊雄 鶴岡 賀雄 棚次 正和 町田 宗鳳 津城 寛文 井上 松永 倉島 哲 篠原 資明 斎木 潤 乾 敏郎
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2011-04-01

「身心変容技法」とは[身体と心の状態を当事者にとってよりよいと考えられる理想的な状態に切り替え変容・転換させる諸技法/ワザ]を指すが、本科研では祈り・祭り・元服・洗礼・灌頂などの伝統的宗教儀礼、種々の瞑想・イニシエーションや武道・武術・体術などの修行やスポーツのトレーニング、歌・合唱・ 舞踊などの芸術や芸能、治療・セラピー・ケア、教育プログラムなどの領域の領域で編み出され実践されてきた身心変容技法を文献・フィールド・臨床・実験の4手法によって総合的に研究し、その成果を研究年報『身心変容技法研究』(1~4号、2012~15年)にまとめ、国際シンポジウムと大荒行シンポジウムで総括し、社会発信した。
著者
津田 一郎 西浦 廉政 大森 隆司 水原 啓暁 相原 威 乾 敏郎 金子 邦彦 山口 陽子 奥田 次郎 中村 克樹 橋本 敬 阪口 豊
出版者
北海道大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2009-07-23

領域の事後評価はAであり、その成果を冊子体の形で集約し、広く社会・国民に情報提供することには大きな意義がある。取りまとめ研究成果は以下のとおりである。1.成果報告書の冊子体での編集と製本を行った。計画班11、公募班44の全ての計画研究・公募研究の班員が、計画班各8ページ、公募班各4ページで執筆し、研究の狙いとその成果を文書と図でわかりやすくまとめた。これらを冊子として製本し、領域に参加する研究者と関係者に配布した。2.成果報告書のCDを作成し、冊子体に添付する形で配布した。3.本成果をWeb上のデータベースDynamic Brain Platformとして成果公開するための準備を完成させた。これまで当領域の成果報告の場として作成公開して来たホームページは、領域終了後に管理できなくなる。そこで、この領域ホームページをINCF 日本ノードDynamic Bain Platform (DB-PF)に移管した。また、成果報告書の電子版をDB-PFにアップロードするための準備を行った。本公開は、広範な分野の人々から永続的な閲覧を可能にするもので、成果を社会・国民に発信する方法として有効であると期待できる。
著者
仁科 繁明 乾 敏郎
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. HIP, ヒューマン情報処理
巻号頁・発行日
vol.96, no.306, pp.7-12, 1996-10-17
参考文献数
14
被引用文献数
2

視点依存表現に基づく物体認識の理論では, 一つの物体に対していくつかの視点からのviewを記憶することによって任意の視点からの認識が達成されると考えられている. そこでは3次元的な構造情報の利用は全く考慮されていない. 本研究では2次元情報のみでは識別が困難であるように作成した刺激の組を用いて, 人間の物体認識システムが3次元構造情報をどのように利用しているかを検討した. 得られた結果はGRBF的な2次元的比較モジュールと3次元的比較モジュールの2つのモジュールが同時並行的に働いていることを示唆した. さらに, 試行を繰り返すことによって見いだせる学習の効果は特に3次元的比較プロセスで大きいことを示した.
著者
乾 敏郎
出版者
日本失語症学会 (現 一般社団法人 日本高次脳機能障害学会)
雑誌
失語症研究 (ISSN:02859513)
巻号頁・発行日
vol.20, no.3, pp.194-201, 2000 (Released:2006-04-25)
参考文献数
16

本論文では,まず文理解課題と動作の系列予測課題に関するfMRI実験を紹介した。続いて,これらの実験結果と多くのイメージング研究で得られている知見を基礎にして,構文処理における前頭—頭頂ループの役割について考察を行った。その結果,中心前回と下頭頂葉のループにより,手や構音のイメージ生成・操作が実現されることが示唆された。文を処理するときには,ブローカ野と縁上回の間の情報交換により構音情報が生成され,これに基づき,ブローカ野および中前頭回に蓄えられた構文的知識と,45野と側頭葉との相互作用により生成された意味情報が統合される。さらに,前頭葉背外側部,補足運動野と頭頂間溝,下頭頂葉の相互作用により,イメージの生成・操作がなされるものと考えられた。さらにわれわれが提案した「運動系列予測学習仮説」によって,このモデルがより広い枠組みでとらえられることを示した。
著者
乾 敏郎
出版者
一般社団法人 日本ロボット学会
雑誌
日本ロボット学会誌 (ISSN:02891824)
巻号頁・発行日
vol.28, no.4, pp.383-385, 2010 (Released:2012-01-25)
被引用文献数
1 1