著者
南 憲治
出版者
神戸親和女子大学
雑誌
神戸親和女子大学研究論叢 (ISSN:13413104)
巻号頁・発行日
vol.41, pp.121-126, 2008-03

小学校の3・4・5年生168名を対象に,73項目からなる「ひとり言尺度」を実施した。各質問項目に記されているそれぞれの状況においてどの程度,ひとり言を発するかについて4件法で回答を求めた。因子分析の結果,ひとり言が発せられる状況として4つの因子が抽出された。これらのひとり言が発せられる4つの状況から考えて,小学生はひとり言を発することによって,自分の気もちや行動を調整していることが示唆された。また,5年生は4年生よりもひとり言をより多く発していることも示された。
著者
南 憲治
巻号頁・発行日
vol.17, pp.A67-A80, 1984-02-01

本研究では,性役割に対する考え方が大きく異なると思われる2つの地域の小学生に質問紙調査を行い,児童の性役割の受容度に地域差がみられるか否かを検討しようとした。具体的には男尊女卑の傾向が根強く残っており,これと結びついて男女それぞれに望ましい行動様式が決まっている沖永良部島の1小学校と,男女を差別的に扱う伝統的な性役割観から男女の役割の違いを強調しない方向へ変わりつつあると考えられる兵庫県の2小学校を取り上げた。沖永良部島は鹿児島市から約500km南にある,人口,約17,000人の離島である。調査を行ったO小学校の児童の大半は農家の子どもたちである。田畑において男は主に農機具を使い,力を要する作業に従事しているのに対して,女は補助的な仕事(草を取ったり,花を摘むなど)をするだけであり,男女の役割は明確に区別されている。家庭でも男女の仕事は異なり,母親が炊事をしている間,父親は牛などの家畜の世話をしている。そして,男子は父親,女子は母親の仕事を手伝いながら大きくなり,男女それぞれに期待される役割は小さい時からはっきりと異なっている。これに対して兵庫県の2小学校は,大阪のベッド・タウンに当たる宝塚市のN小学校と,神戸市近郊に位置する三木市のM小学校で,ともに新興住宅地にあり両小学校ともサラリーマン家庭の児童が多い。また,共働き家庭の児童も多く,「男は仕事,女は家庭」といった伝統的な性役割観にも変化がみられ,男女の違いが強調されることは比較的少ないと考えられる。ところで,従来の調査によると,小学校の中学年頃から性役割の受容度において男女差が現れ,女子の性役割の受容が困難になることが指摘されている。たとえば,高橋(1968)は,小学校の1年生から中学3年生までの子どもに,自分の性に生まれてよかったか否かを尋ねた。それによると,男子は一貫して自分の性に対する評価が高いのに,女子の場合は,自分の性に生まれてよかったと回答する者の割合が,小学校の4,5,6年から急速に減少している。そこで,本調査では,性役割の受容において男女差が生じてくると思われる小学校の4,5,6年生を調査対象に選び,前述の性役割の受容度における地域差と同時に,男女差もあわせて明らかにしようとした。
著者
南 憲治
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.26, no.3, pp.152-161, 1978-09-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
29

本研究の第1の目的は, 幼児が新しい性役割行動をモデルの観察によって習得する際のモデルの効果について, モデルの示範行動 (視覚的手がかり) とモデルが発する言語的手がかりの2つの面から実験的に検討することであった。第2の目的は, 性役割の習得の程度に関してどのような性差がみられるかを明らかにすることにあった。被験児は, 幼稚園児で年長児群, 男児55名 (平均6才0か月), 女児55名 (5才11か月), 年少児群, 男児57名 (5才0か月), 女児37名 (5才0か月) からなる。実験群の幼児は, モデルが中性玩具で遊んだり, あるいは, 中性玩具に対して「男の玩具」, 「女の玩具」といった言語的手がかりを与えるのをVTRで観察した後, 中性玩具で自由に遊ばされ, その行動が観察された (5分間)。結果の分析は, モデルが玩具で遊んでいるのを観察するという視覚的手がかりとモデルが発する言語的手がかりが, 幼児の玩具遊びにどのように影響するかについてなされた。主な結果は, 次の通りである。(1) モデルの示範行動 (視覚的手がかり) に言語的手がかりがつけ加えられると, 新しい性役割行動を習得する上で効果が大きかった。特に, 言語的手がかりの重要性が示された。(2) 年少児より年長児の方が, 性役割行動を習得する上でモデルの観察効果が大きく, また, より分化した性役割行動を示す。(3) 表面的なレベルでは, 女児より男児の方がより分化した性役割行動を示すが, より内面化された性役割に関しては, 女児の方がより安定していることが示唆された。