著者
南島 和久
出版者
特定非営利活動法人 日本評価学会
雑誌
日本評価研究 (ISSN:13466151)
巻号頁・発行日
vol.9, no.3, pp.3_17-3_27, 2009 (Released:2014-05-21)
参考文献数
43

本稿はNPM(New Public Management)1と評価との関係に論及する。ここでいうNPMは、政治学的にいえば20世紀最終四半期に展開した世界的な行政改革の思潮である。具体的にはイギリスのサッチャー政権下のサッチャリズムやアメリカのレーガン政権下のレーガノミクス、あるいはニュージーランドのロンギ政権下のロジャーノミクスがその源流である。とりわけ日本では、行政改革のみならず政策評価の理論的背景として紹介されることもおおい。本稿は、これらをふまえながら公的部門における「評価」についてNPMの理論的影響があったのか、あったとすればどのような意味であったといえるのかという点を検討する。またこのことを明らかにした上で本稿は、NPM論者として著名なHoodの所説に寄り添いながらNPMが惹起するもうひとつの論点、すなわち「統制の多元化」現象を指摘する。
著者
南島 和久
出版者
日本公共政策学会
雑誌
公共政策研究 (ISSN:21865868)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.83-95, 2017-11-30 (Released:2019-06-08)
参考文献数
25
被引用文献数
1

政策評価と行政管理はどのような関係にあるのか。そもそも政策評価は現実の行政活動を管理しうるツールたりえているのか。日本においては,評価制度の導入から20年の時間が経過した。しかし,上記の問いに対する公共政策学からの解答は不鮮明である。上記の問いは,「学」と「実務」の交錯を掲げる公共政策学にとっても,またその一分野を構成するはずの政策評価論にとっても拒否できるものではない。政策評価制度は,実務主導で設計・導入され,実務の現場で提起される諸課題に対処し,実務上の実用的道具として洗練されてきた。この間,公共政策学はどれほどの建設的な議論を提供してきたといえるのだろうか。本稿では,上記の論点について,「プログラム」の観念がその鍵であることおよび政策評価論においてこの観念が議論されてきたことを指摘する。本稿の結論においては公共政策学と実務とをつなぐ媒介項としての「プログラム」の観念と,これを重視してきたという意味において,政策評価論の意義を強調する。
著者
土山 希美枝 南島 和久 高野 恵亮
出版者
法政大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2022-04-01

本研究は、2015年5月に85歳で逝去した政治学者・松下圭一の政治理論が社会科学と社会に与えた影響を可視化し、包括的に把握することを目的とする。松下の政治理論は社会科学にも社会にも大きな影響を与えた。地方自治、行政学、政治学の分野での活動は、革新自治体、2000年地方分権改革の理論的支柱となった。松下は、丸山眞男と並び「その理論が社会を動かした」研究者だが、影響が広範なために分野ごと時代ごとで分断され、体系的・包括的な把握や評価がなされていない。本研究で、関係者のヒアリングや資料を用い、松下圭一の「社会科学と社会に与えた影響」を、高度成長期以降の現代史的視角とともに進め、明らかにしていく。