- 著者
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岡村 毅
- 出版者
- 一般社団法人 日本自殺予防学会
- 雑誌
- 自殺予防と危機介入 (ISSN:18836046)
- 巻号頁・発行日
- vol.39, no.2, pp.9-16, 2019-09-01 (Released:2022-06-30)
- 参考文献数
- 15
我々の社会は変化を続けている。経済的発展、医学の進歩、都市化などの変化は、社会学の観点からみると単身、独居、無縁、低所得の高齢者の増加に帰結する。また老年医学の観点からは、認知症をもつ人が増加すること、高齢期に初めて住まいを失う人が増加することが新たな課題である。我々は新たな課題に挑み解決方法を探すために、社会の中で最も困難な状況に置かれている人々を支援する組織(ホームレス支援団体)と共同研究を続けてきた。その結果、住まいを失う人々は、中高年男性が多い、学歴資本が少ない、精神的健康が損なわれている、自殺関連行動が多い、自殺関連行動の関連要因はうつ以外にはソーシャルサポートの欠如と住まいの欠如である、精神疾患の合併が多い、刑事施設や病院から路上への経路がある、などの知見を得てきた。さらにホームレス支援団体の実装する支援論が、精神医学の到達した支援と共鳴することも見いだした。