著者
今村 一歩 橋本 敏章 山口 泉 伊藤 裕司 古井 純一郎
出版者
一般社団法人 日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.47, no.10, pp.596-601, 2014
被引用文献数
1

症例は78歳の女性で,意識消失のため近医に救急搬送され,低血糖発作と診断された.腹部造影CTと選択的動脈内カルシウム注入試験で,膵鉤状突起に径17 mmの単発性の腫瘤を認めインスリノーマと診断された.術前低血糖管理のためブドウ糖点滴を試みるも,認知症のため自己抜去を繰り返し管理困難であった.オクトレオチド皮下注射に変更したところ血糖値は100~250 mg/dlで推移し低血糖発作は認めなかった.術中造影超音波で腫瘍の局在を確認し,腫瘍核出術を行った.術後血中インスリン値は基準値内となった.インスリノーマによる低血糖症状に対してはブドウ糖点滴,経口摂取で対応がなされるが,認知症例では血糖管理困難な場合も存在する.オクトレオチド皮下注射は患者負担の軽減につながり,術前の低血糖管理に有用と考えられた.
著者
大野 毅 古井 純一郎 川上 俊介
出版者
長崎大学
雑誌
長崎醫學會雜誌 : Nagasaki Igakkai zasshi (ISSN:03693228)
巻号頁・発行日
vol.83, no.1, pp.14-18, 2008-03-25

症例は子宮筋腫手術の既往をもつ87歳の女性.2 007年9月21日朝より腹痛出現,翌22日になっても改善せず救急外来受診,腸閉塞と診断され入院した.イレウスチューブからのガストログラフィン造影検査にて骨盤部小腸の先細り狭窄像を認めたこと,一日排液量の減少を認めないことより手術適応と考えられた.外科転科時の腹部所見は膨満なく減圧良好であり,10月2日腹腔鏡下に緊急手術を施行した.気腹操作にて腹腔内を観察すると拡張腸管のヘルニア門への嵌頓を認め,この部の直上で腹壁を小切開しヘルニア門を解放した.嵌頓した腸管は壊死しており小腸部分切除を施行した.ヘルニア門はS状結腸と腹壁の癒着部位で,これを縫合閉鎖した.術後経過は良好で術後13日で退院した.腸閉塞に対する腹腔鏡補助下手術は,術前減圧可能な場合は術中における原因診断に有用であり,小開腹下での低侵襲の治療が可能である.