著者
古宇田 亮一 小出 仁
出版者
The Society of Resource Geology
雑誌
鉱山地質 (ISSN:00265209)
巻号頁・発行日
vol.28, no.150, pp.233-244, 1978-07-25 (Released:2009-06-12)
参考文献数
37
被引用文献数
3

海底で再生カルデラが生じたなら,環状に分布する岩脈群,正断層系,中心隆起構造と海底地辷り堆積構造がその痕跡として残るであろう.秋田県大館東方地域では,後黒鉱期の石英安山岩群と浅熱水鉱床群が,中心の大滝石英閃緑岩体を環状に取り囲む現象が存在する.深沢鉱床などの黒鉱鉱床群も,やや東南にずれるものの,ほぼこの環状分布に沿って,いくつか地下に存在する.鉱床群は環状分布の片側に集中度が高い.いくつかの層準で発見される海底地辷り堆積構造は上下運動の痕跡と考えられ,ボーリング資料による地下構造からは,中心の大滝石英閃緑岩体付近の隆起と,周囲の環状石英安山岩群の内側に陥没構造が示唆される.このことから,8km程度の直径をもっこの環状構造は,中新世の海底にできた再生カルデラの痕跡と考えられ,鉱床生成もカルデラの形成に関連して説明することが可能である.すなわちSMITH & BAILEY (1968)説をKOIDE & BHATFCHARJI (1975)説で解釈し直せば,尖頭的岩漿溜りの上昇で地表付近に10km前後の直径をもつ火山性陥没構造(cauldron)が発生し,環状の断裂系が発達する.この断裂系に沿って鉱液が上昇し,海底下では黒鉱をつくる.続いて,環状分布内に中心隆起が生じ,環状に石英安山岩が貫入―噴出し,その後海底が浅くなるか陸化する.この時に鉱液が環状断裂系に沿って上昇し,後黒鉱期の浅熱水鉱脈鉱床をつくったと説明できる.北鹿地域には,このような環状構造(再生カルデラ)がいくつか存在し,各鉱床群は各々のカルデラに関係して生成したと推測される.
著者
榎本 祐嗣 長尾 年恭 古宇田 亮一 山辺 典昭 杉浦 繁貴 近藤 斎
雑誌
日本地球惑星科学連合2022年大会
巻号頁・発行日
2022-03-24

日本列島および取り囲む近海には、水溶性メタンガス田やメタンハイドレート賦存域が拡がっていて、その地域で発生する大地震の巨大エネルギーはメタン/メタンハイドレートを賦活化しガス田火災や津波火災を引き起こす可能性がある。実際、歴史地震史料を辿るとそのような事例をいくつか挙げることができる。例えば1923年大正関東地震で起きた被服廠跡の惨劇は、従来周辺で発生した火焔を巻き込んだ“火災旋風”と理解されてきたが、南関東ガス田由来のメタン火焔の噴出による激甚火災を裏付ける資料や証言がある(榎本ほか,2021)。1855年安政江戸地震では夜中だったため大地の割れ目から火が噴き出る様子が目撃された。このとき起きた同時多発火災の発生域は大正関東地震のそれと重っている。その火災発生域の地下の比較的浅いところに、シルト層がキャップロックとなるメタン溜が存在する(。このメタンが地割れでできた新生面との電気相互作用で帯電・静電気着火して地表に火焔となって噴き出したと考えられる。図に示す資料は被服廠跡で起きた惨劇の真因を物語る。新潟や長野地域にも水溶性ガス田が存在していて、1828年越後三条地震や1847年善光寺地震でも地中から火焔が吹き出し、街中の火災を誘発した。一方1993年北海道南西沖で起きた津波は、海底から巻き上げたメタンバブルを運び、奥尻島青苗港の岸壁に衝突して舞い上がった帯電ミストにより静電気火災が発生、飛び火して青苗の街を焼き尽くした。2011年東北沖地震で起きた津波火災件数のうち24%は原因不明とされているが、青苗港で起きたと同様な原因である可能性がある。以上に述べた自然火災害は、しかしながら国の被害想定に含まれていない。対策が立てられないままでは、過去に起きた地震火災害が繰り返される懸念をぬぐえない。首都圏直下地震や南海トラフ地震発生の可能性が増すいま、地下/海底に賦存されるメタン/メタンハイドレートが誘発する地震火災害の想定と対策の実施にむけた活動は喫緊の課題であろう。例えば避難先と指定されている場所でのメタンモニタは欠かせない。沿岸に林立する石油タンクを津波火災の危険からどう守るか、課題はいくつも見えてくる。 具体的な課題を一つあげておこう。東京都は地盤沈下を防止するため、1972年末から天然ガス採取を全面停止、1988年6月から東京都の平野部全体を鉱区禁止地域に指定し揚水を規制した。そのため、東京駅の地下駅(たとえば京葉線)や、上野の新幹線駅などは、地下水位が上昇し地下筐体が浮き上がってきた。このことは地下水位の上昇だけでなく、南関東ガス田由来の天然ガスもかつてないほど蓄積され圧力上昇している可能性が高く、ガス漏れの監視あるいはガス抜きの対策を実施することが、迫る首都直下地震での火災発生被害低減につながるのではないだろうか。まず重要なことは防災・減災に携わる専門家のあいだで、この自然火災害に対する危機意識を共有し、対策の立案・実施が必要なのだが猶予はあまりない。図の説明左図:帝都大震災画報其九「厩橋より本所横網町方面大旋風之惨状」に描かれた被服廠跡の火焔竜巻、大正十二年(すみだ郷土文化資料館提供)、右図:絵葉書「斯如き電車路本所方面」(個人蔵)、石畳は剥がれ、レールは右上に曲がり土砂が噴き出している。1000℃を超える火焔が噴き出したためと考えられる。
著者
浜島 良吉 勝山 邦久 橋本 学 金折 祐司 長尾 年恭 早川 正士 勝山 国久 呉 智深 鈴木 隆次 古宇田 亮一 竹村 友之 西村 進
出版者
埼玉大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1994

不連続体場での弾性、弾塑性、粘弾性の進行性破棄に応用できる解析法が浜島により開発された。本解析手法は熱・流体・応力の連成解析にも適用された。本解析手法は結晶構造のような多角形要素にも適用可能である。変位関数として3角形要素の定ひずみ要素を用いているため、そのままでは結晶構造モデルに対しては変形を十分表現することができない。ハイブリット仮想仕事の原理は、弱形式のつり合い式と弱形式の変形の連続条件となるが、本研究では、変形の連続条件に関して、要素内と要素間の剛性にそれぞれα、βをかけ、これらの値がつり合い式を満足し、かつ変形の誤差が最小となるように定められた。ただし、α、βの間にはα=β/(β-1)の関係がある。1995年1月17日に兵庫県南部地震が発生し、多くの人名が失われた。地殻変動解析の重要性が再認識されたが、本研究では、日本列島をブロック構造に分割し、本研究で開発された不連続体解析手法を用いて解析が行われた。その結果、本解析手法により、日本列島内陸の断層の動きを比較的良く表現できることを明らかにした。本解析ではせん断破壊と引張り破壊を同時に考慮しているが、引張り破壊時には断層面上の応力を全て解放している。引張り破壊領域は危険断層とされている部分に良く対応していることが明らかとなった。本研究では、種々の方法により地殻変動解析がなされたが、目的によりそれらを使い分けて利用することが必要である。今後はこれらの解析手法をうまく融合して、地球規模の地殻変動解析まで適用可能とするようにしたい。
著者
古宇田 亮一
出版者
Japan Society of Geoinformatics
雑誌
情報地質 = Geological data processing (ISSN:0388502X)
巻号頁・発行日
vol.23, no.3, pp.131-136, 2012-09-15
被引用文献数
2

簡易にデスクトップ・インストールでき,オフラインでも直ちに利用可能なフリーのデスクトップ・アプリケーションについて,FOSS(Free and Open Source System)ベースを主としてその動向を略述する.FOSS であることによって,アプリケーション相互の連携とプラグインの形での取り込みや統合化が進み,ソースコード公開によって多数の専門家のボランティアが参加して,より使いやすくアルゴリズムの充実した体系に進歩している.このFOSSによるデスクトップ・アプリケーション環境はビッグデータの処理,クラウドコンピューティング環境で威力を発揮している.様々なFOSSデスクトップ・アプリケーションのうちから,地理情報システム,画像処理とリモートセンシング,3次元モデルと地球統計学の23種のアプリケーションを紹介する.2012年8月現在のバージョンとダウンロードサイトを表に示す.またビッグデータ化しつつあるフリーな地図・地質図・衛星画像のダウンロードサイトも紹介する.