著者
古川 壮一 平山 悟 森永 康
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.109, no.4, pp.228-238, 2014 (Released:2018-03-12)
参考文献数
157
被引用文献数
1 2

日本の伝統的発酵食品に関与する微生物は,麹菌,乳酸菌,酵母,酢酸菌などであり,これらの微生物は古くから生育環境が類似しているため共に協力しながら,共存・共生する環境で利用されてきました。こうした微生物内の相互作用が,発酵プロセスの安定化に重要な役割を果たしてきたと思われます。ここでは伝統的発酵食品として,清酒・ワイン・ビール・蒸留酒・酢・醤油・味噌・乳製品などに関わる微生物の共存と共生の意義について解説して頂きました。
著者
荻原 博和 露木 朝子 古川 壮一 森永 康 五十君 靜信
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.50, no.3, pp.109-116, 2009-06-25 (Released:2009-07-15)
参考文献数
22
被引用文献数
2 1

E. sakazakii における感染リスクの低減対策として,PIFの調乳湯温による殺菌効果とその保存温度に対するE. sakazakii の消長を検討した.加熱の指標とされているD 値は,ATCC 29004株が60℃で3.6分,HT 022株が1.9分で,HT 028 株については52℃において1.6分であった.PIFの調乳湯温におけるE. sakazakii の殺菌効果については,湯温60℃では1 log CFU/mL以下,湯温70℃では1~2 log CFU/mL,湯温80℃では5 log CFU/mL以上の殺菌効果が得られた。室温ならびに低温下でのE. sakazakii の増殖は,5℃ではすべての供試菌株の発育が抑制され,10℃ではHT 028株のみ増加する傾向が認められた。25℃では保存4時間後には供試3菌株とも増殖し,保存16時間後には8 log CFU/mLに増加した.以上のことから,調乳に使用する湯温は70℃以上で調製することが E. sakazakii の死滅に有効と考えられた.さらに調乳後は5℃以下での保存が好ましく,2時間以上の保存は避けることが E. sakazakii の感染リスク低減に有効と考えられた.
著者
荻原 博和 河原井 武人 古川 壮一 宮尾 茂雄 山崎 眞狩
出版者
日本食品微生物学会
雑誌
日本食品微生物学会雑誌 (ISSN:13408267)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.98-106, 2009
被引用文献数
5

京都で製造されているすぐきの製造工程における微生物叢および化学的成分の変遷を検討した.製造工程における菌数の推移は,工程が進むにつれてグラム陰性菌や大腸菌群数が減少するのに対して,乳酸菌数が増加する傾向を示し,室発酵終了時には10<sup>8</sup> CFU/gに増加した.製造工程における微生物叢の推移は,原料からは多種多様な菌が検出され,なかでも<i>Pseudomonas</i> 属菌が多く検出された.荒漬および本漬工程後では<i>Microbacterium</i> 属菌の占める割合が高く,<i>M. testaceum</i> が多く検出された.追漬工程では<i>Lactobacillus</i> 属菌が優占種となり,なかでも<i>L. sakei</i> と<i>L. curvatus</i> が多く検出された.室工程後では<i>L. plantarum</i> と<i> L. brevis</i> が優占種であった.塩濃度は原料および面取り工程では低く,荒漬工程では6.3%を示し,その後の工程では塩濃度は3%程度の数値で推移した.pHについては製造工程が進むにつれて低下する傾向が認められ,室工程後では4.2を示した.酸度ならびに乳酸値は原料から荒漬工程までは大きな変化は認められなかったものの,室工程から数値が増加し,熟成後が最も高い数値を示した.
著者
古川 壮一 平山 悟 森永 康
出版者
日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 = Journal of the Brewing Society of Japan (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.109, no.4, pp.228-238, 2014-04

日本の伝統的発酵食品に関与する微生物は,麹菌,乳酸菌,酵母,酢酸菌などであり,これらの微生物は古くから生育環境が類似しているため共に協力しながら,共存・共生する環境で利用されてきました。こうした微生物内の相互作用が,発酵プロセスの安定化に重要な役割を果たしてきたと思われます。ここでは伝統的発酵食品として,清酒・ワイン・ビール・蒸留酒・酢・醤油・味噌・乳製品などに関わる微生物の共存と共生の意義について解説して頂きました。
著者
森永 康 平山 悟 古川 壮一
出版者
日本乳酸菌学会
雑誌
日本乳酸菌学会誌 (ISSN:1343327X)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.101-108, 2015-06-29 (Released:2016-07-29)
参考文献数
30

伝統発酵食品福山酢は、その発酵過程に、麹菌、酵母、乳酸菌、酢酸菌が関与し、糖化、嫌気的アルコール発酵と好気的酢酸発酵が自然に進行する。それは東アジアで生まれた最も原始的な発酵様式であり、自然環境で起こっている炭水化物代謝を模したとも言えるものである。我々は、福山酢の製造工程から分離した乳酸菌と酵母及び酢酸菌の異種間相互作用を研究することを目的として、共培養系でのバイオフィルム形成について検討してきた。その結果、乳酸菌と酵母が共存すると細胞同士の接着により両細胞が組み込まれた特異な複合バイオフィルムが培養容器底部の固液界面に形成されることや、乳酸菌と酢酸菌が共存すると培養液の気液界面に形成される酢酸菌のバイオフィルム(ペリクル)が顕著に増加することを見出した。さらに詳細に相互作用を調べてみると、これら3種の発酵微生物の共存系は、それぞれの菌が機能分担することで、栄養欠乏や酸化ストレス、外敵侵入などのさまざまな生存リスクに対応可能なきわめて巧妙な共生系であることが分かってきた。本稿では、こうした伝統発酵に見出した発酵微生物の共生系の特徴について、我々の成果を中心に紹介し、そこからうかがい知ることができる発酵微生物の進化についても論じてみたい。
著者
荻原 博和 河原井 武人 古川 壮一 宮尾 茂雄 山崎 眞狩
出版者
日本食品微生物学会
雑誌
日本食品微生物学会雑誌 (ISSN:13408267)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.98-106, 2009-07-31 (Released:2009-08-27)
参考文献数
25
被引用文献数
1 5

京都で製造されているすぐきの製造工程における微生物叢および化学的成分の変遷を検討した.製造工程における菌数の推移は,工程が進むにつれてグラム陰性菌や大腸菌群数が減少するのに対して,乳酸菌数が増加する傾向を示し,室発酵終了時には108 CFU/gに増加した.製造工程における微生物叢の推移は,原料からは多種多様な菌が検出され,なかでもPseudomonas 属菌が多く検出された.荒漬および本漬工程後ではMicrobacterium 属菌の占める割合が高く,M. testaceum が多く検出された.追漬工程ではLactobacillus 属菌が優占種となり,なかでもL. sakei とL. curvatus が多く検出された.室工程後ではL. plantarum と L. brevis が優占種であった.塩濃度は原料および面取り工程では低く,荒漬工程では6.3%を示し,その後の工程では塩濃度は3%程度の数値で推移した.pHについては製造工程が進むにつれて低下する傾向が認められ,室工程後では4.2を示した.酸度ならびに乳酸値は原料から荒漬工程までは大きな変化は認められなかったものの,室工程から数値が増加し,熟成後が最も高い数値を示した.
著者
福田 典子 新井 のぞみ 藤原 翠 古川 壮一 荻原 博和
出版者
日本食品微生物学会
雑誌
日本食品微生物学会雑誌 (ISSN:13408267)
巻号頁・発行日
vol.31, no.4, pp.204-208, 2014-12-31 (Released:2015-01-27)
参考文献数
27
被引用文献数
1

調製された乳幼児用食品にCronobacter sakazakii を接種し,25℃,10℃,5℃の温度に48時間保存し,これらの保存期間中におけるC. sakazakiiの挙動を検討した.その結果,調製された乳幼児用食品の野菜粥(VRP),混合野菜と小麦ペースト(MVWP),レバ-・野菜と小麦ペースト(LVWP)中でのC. sakazakiiの挙動は,25℃ではいずれも急激な増殖が認められたのに対し,5℃と10℃では保存期間中菌数の増殖は認められなかった.一方,リンゴ果汁(AJ)では他の乳幼児用食品3種の結果と異なり,いずれの保存温度でも菌数の減少が観察され,特に25℃では著しい減少が認められた.以上のことより,乳幼児用食品4種のうち,AJを除き,VRP, MVWP, LVWPでは,室温(25℃)において急激な増殖が確認されたことから,これらの乳幼児用食品を調製した後には室温に長時間放置せず,速やかに消費することが感染リスクの低減になるものと考えられた.