著者
荻原 博和
出版者
日本食品保蔵科学会
雑誌
日本食品保蔵科学会誌 = Food preservation science (ISSN:13441213)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.29-37, 2010-01-29
参考文献数
57

近年、日本もライフスタイルの変化とともに豊かな食生活を享受することになり、食品に対するニーズも多様化してきた。食品流通のグローバル化が進み、様々な形態の食材や食品が輸入されるようになり、食肉や食肉製品も盛んに輸入されるようになった。しかし、これらの食のグローバル化と連動するかのように、食品を取り巻く環境も急激に変動し、従来の食品媒介病原細菌だけでなく、新しいタイプの病原菌による食中毒も発生するようになり、食品に対する安全性の対策が急務となってきている。特に食肉や食肉製品の業界においては食品の安全性の確保は重要な課題となっている。その対策として1995年には、総合衛生管理製造過程(HACCP)の承認制度が施行され、1996年には本格的に食品業界へのHACCPが導入されるようになり運用が進んだ。最近では農場から食卓までの衛生管理の考えに基づく、生産、製造、流通、保存を経て消費に至るまでの衛生管理を通して、食の安全を確保する考えが主流になっている。さらにこれらの考え方を踏まえた、新しい食品安全マネジメントであるISO 22000の導入も進んでいる。本総説では食肉および食肉製品の非加熱技術による微生物の制御について、環境雰囲気の制御(ガス置換)による食品関連細菌の発育抑制効果や、ガス置換包装における最適なガス組成について述べる。次に、高圧処理ならびに高圧二酸化炭素処理による殺菌効果とその殺菌メカニズムについて考察を行い、さらに非加熱技術を利用した微生物制御法の食品へ応用について解説する。研究。
著者
荻原 博和 露木 朝子 古川 壮一 森永 康 五十君 靜信
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.50, no.3, pp.109-116, 2009-06-25 (Released:2009-07-15)
参考文献数
22
被引用文献数
2 1

E. sakazakii における感染リスクの低減対策として,PIFの調乳湯温による殺菌効果とその保存温度に対するE. sakazakii の消長を検討した.加熱の指標とされているD 値は,ATCC 29004株が60℃で3.6分,HT 022株が1.9分で,HT 028 株については52℃において1.6分であった.PIFの調乳湯温におけるE. sakazakii の殺菌効果については,湯温60℃では1 log CFU/mL以下,湯温70℃では1~2 log CFU/mL,湯温80℃では5 log CFU/mL以上の殺菌効果が得られた。室温ならびに低温下でのE. sakazakii の増殖は,5℃ではすべての供試菌株の発育が抑制され,10℃ではHT 028株のみ増加する傾向が認められた。25℃では保存4時間後には供試3菌株とも増殖し,保存16時間後には8 log CFU/mLに増加した.以上のことから,調乳に使用する湯温は70℃以上で調製することが E. sakazakii の死滅に有効と考えられた.さらに調乳後は5℃以下での保存が好ましく,2時間以上の保存は避けることが E. sakazakii の感染リスク低減に有効と考えられた.
著者
荻原 博和 河原井 武人 古川 壮一 宮尾 茂雄 山崎 眞狩
出版者
日本食品微生物学会
雑誌
日本食品微生物学会雑誌 (ISSN:13408267)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.98-106, 2009
被引用文献数
5

京都で製造されているすぐきの製造工程における微生物叢および化学的成分の変遷を検討した.製造工程における菌数の推移は,工程が進むにつれてグラム陰性菌や大腸菌群数が減少するのに対して,乳酸菌数が増加する傾向を示し,室発酵終了時には10<sup>8</sup> CFU/gに増加した.製造工程における微生物叢の推移は,原料からは多種多様な菌が検出され,なかでも<i>Pseudomonas</i> 属菌が多く検出された.荒漬および本漬工程後では<i>Microbacterium</i> 属菌の占める割合が高く,<i>M. testaceum</i> が多く検出された.追漬工程では<i>Lactobacillus</i> 属菌が優占種となり,なかでも<i>L. sakei</i> と<i>L. curvatus</i> が多く検出された.室工程後では<i>L. plantarum</i> と<i> L. brevis</i> が優占種であった.塩濃度は原料および面取り工程では低く,荒漬工程では6.3%を示し,その後の工程では塩濃度は3%程度の数値で推移した.pHについては製造工程が進むにつれて低下する傾向が認められ,室工程後では4.2を示した.酸度ならびに乳酸値は原料から荒漬工程までは大きな変化は認められなかったものの,室工程から数値が増加し,熟成後が最も高い数値を示した.
著者
荻原 博和 河原井 武人 古川 壮一 宮尾 茂雄 山崎 眞狩
出版者
日本食品微生物学会
雑誌
日本食品微生物学会雑誌 (ISSN:13408267)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.98-106, 2009-07-31 (Released:2009-08-27)
参考文献数
25
被引用文献数
1 5

京都で製造されているすぐきの製造工程における微生物叢および化学的成分の変遷を検討した.製造工程における菌数の推移は,工程が進むにつれてグラム陰性菌や大腸菌群数が減少するのに対して,乳酸菌数が増加する傾向を示し,室発酵終了時には108 CFU/gに増加した.製造工程における微生物叢の推移は,原料からは多種多様な菌が検出され,なかでもPseudomonas 属菌が多く検出された.荒漬および本漬工程後ではMicrobacterium 属菌の占める割合が高く,M. testaceum が多く検出された.追漬工程ではLactobacillus 属菌が優占種となり,なかでもL. sakei とL. curvatus が多く検出された.室工程後ではL. plantarum と L. brevis が優占種であった.塩濃度は原料および面取り工程では低く,荒漬工程では6.3%を示し,その後の工程では塩濃度は3%程度の数値で推移した.pHについては製造工程が進むにつれて低下する傾向が認められ,室工程後では4.2を示した.酸度ならびに乳酸値は原料から荒漬工程までは大きな変化は認められなかったものの,室工程から数値が増加し,熟成後が最も高い数値を示した.
著者
福田 典子 新井 のぞみ 藤原 翠 古川 壮一 荻原 博和
出版者
日本食品微生物学会
雑誌
日本食品微生物学会雑誌 (ISSN:13408267)
巻号頁・発行日
vol.31, no.4, pp.204-208, 2014-12-31 (Released:2015-01-27)
参考文献数
27
被引用文献数
1

調製された乳幼児用食品にCronobacter sakazakii を接種し,25℃,10℃,5℃の温度に48時間保存し,これらの保存期間中におけるC. sakazakiiの挙動を検討した.その結果,調製された乳幼児用食品の野菜粥(VRP),混合野菜と小麦ペースト(MVWP),レバ-・野菜と小麦ペースト(LVWP)中でのC. sakazakiiの挙動は,25℃ではいずれも急激な増殖が認められたのに対し,5℃と10℃では保存期間中菌数の増殖は認められなかった.一方,リンゴ果汁(AJ)では他の乳幼児用食品3種の結果と異なり,いずれの保存温度でも菌数の減少が観察され,特に25℃では著しい減少が認められた.以上のことより,乳幼児用食品4種のうち,AJを除き,VRP, MVWP, LVWPでは,室温(25℃)において急激な増殖が確認されたことから,これらの乳幼児用食品を調製した後には室温に長時間放置せず,速やかに消費することが感染リスクの低減になるものと考えられた.
著者
小柳津 周 荻原 博和 成瀬 宇平
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
調理科学 (ISSN:09105360)
巻号頁・発行日
vol.22, no.4, pp.305-311, 1989-12-20
被引用文献数
1

白焼きうなぎの保存性を高める目的で、低温貯蔵における"たれ"と脱酸素剤封入包装の効果について検討した。白焼きうなぎに"たれ"を塗ったものと、"たれ"を塗らないものについて、それぞれKON/PE製の袋に脱酸素剤とともに包装して、2℃および5℃での貯蔵試験を行い、"たれ"を塗らないPE包装のものと微生物学的、理化学的に比較検討し、次のような結果を得た。1)"たれ"と脱酸素剤封入包装を併用した区で、菌の増殖および脂質の酸化に対する抑制効果が認められた。2)大腸菌群の増殖に対し、5℃においては"たれ"と脱酸素剤封入包装の顕著な併用効果が見られなかったが、2℃においては顕著な併用効果が見られた。3)保存温度では、低温の2℃でより顕著な保存効果が認められた。