著者
古賀 万由里
出版者
日本宗教学会
雑誌
宗教研究 (ISSN:03873293)
巻号頁・発行日
vol.81, no.1, pp.143-164, 2007-06-30 (Released:2017-07-14)

「サンスクリット化」とは、インド出身の文化人類学者のシュリニバスが提示した概念であり、それは、低位カーストは高位カーストの生活を模倣することにより、社会的地位を上昇させる動きである。南インドのケーララ州のテイヤム信仰をみると、その神話は、プラーナ神話と地域神話の二つの型がみられ、結合している場合が多いが、それは必ずしも近年のカースト上昇志向によって生じたのでなく、長い年月の中で融合していったものである。また儀礼では、ブラーマン司祭の関与がみられるが、主な担い手であるパフォーマーは不可触民であり、ブラーマン儀礼は部分的にとりいれられているにすぎない。さらに、パフォーマーで地位が上昇しているものは、上昇志向があってサンスクリット文化を模倣しているわけではない。また、社会的地位向上の手段としては、経済的状況の改善が重要視されている。
著者
古賀 万由里
出版者
三田哲學會
雑誌
哲学 (ISSN:05632099)
巻号頁・発行日
vol.107, pp.261-275, 2002-01

1. はじめに2. ヴァヤナードゥ県部族の状況3. アーユルヴェーダ4. 民俗医療 (1) クルマ族のVヴァイディヤン (2) カートゥナーイカ族のKヴァイディヤン (3) 衰退する蛇毒治療 (4) 州政府の奨励したAヴァイディヤン (5) 妊娠儀礼,ガッディガ(gaddika)5. 民俗医療の特徴と展望特集文化人類学の現代的課題研究ノート
著者
古賀 万由里
出版者
学校法人 開智学園 開智国際大学
雑誌
開智国際大学紀要 (ISSN:24334618)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.83-96, 2022-03-15 (Released:2022-04-28)

マレーシアのエスニシティについて語る際、「マレー人」、「華人」、「インド人」という分類がよくなされる。これは政府が政策上分けたものであり、フォーマル・エスニシティといえる。インド人コミュニティは、出身地別、宗教別、カースト別に細分化されており、多数のサブ・エスニック集団が存在する。代表的な事例として、タミル人、テルグ人、マラヤーリ人、スリランカ・タミル人、ヒンドゥー教徒、ムスリム、シーク教徒、チェッティアールとサービス・カーストをとりあげた。結論として、マレーシア全体のエスニシティは、1)マレーシア人であるというナショナル・エスニシティ、2)インド人であるというフォーマル・エスニシティ、3)タミル人やテルグ人といった文化エスニシティから構成されるといえる。誰しもが二重、三重のエスニシティを持っている中で、時と場に応じてエスニシティが揺れ動いている。またエスニシティの複雑性は、各々の文化維持を可能にしているのと同時に、インド人として団結できない要因となっている。
著者
古賀 万由里
出版者
「宗教と社会」学会
雑誌
宗教と社会 (ISSN:13424726)
巻号頁・発行日
no.7, pp.91-110, 2001-06-17

不幸の説明原理として用いられる概念や技法には、地域や時代により特色が見られる。アフリカでは妖術・邪術、死霊・悪霊などが多く見られ、特に妖術や邪術の場合は、日常の葛藤や対立関係が顕在化する。インドでは「カルマ」(業)理論が浸透しているのが特色である。南インド・ケーララ州北部では、不幸は「ドーシャム」(障り)によると考え、占星術師を訪れて、その解決法を求める。個人的な問題の場合は呪術(マントラワーダム)を、タラワードやコミュニティに関わる問題の場合は、神霊に捧げる儀礼「テイヤム」を行うように指示される。呪術、儀礼、占星術の担い手はカーストによる世襲であり、霊的なるものに関わる職能者はお互いを正当化し、依存関係にある。人々は不幸の原因を、実際の葛藤ではなく、神の怒りや悪霊などに転嫁し、儀礼の中で霊的な力(シャクティ)を様々な力で操作することにより、間接的な解決を図っているといえる。