著者
吉田 晶樹
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.121, no.12, pp.429-445, 2015
被引用文献数
2

プレートテクトニクス理論確立後の1970年代半ばに,プレートに働くさまざまな力が分類され,それらの大きさについて定量的な議論が行われるようになった.この研究はプレート運動を球面上の剛体的な回転運動として扱うことで可能であり,地表のテクトニックな情報のみを用いた理論解析の結果,スラブ引っ張り力がプレート運動の主要な原動力の候補とされてきた.しかし実際のプレートは有限の粘性率を持つので,完全な剛体運動をするのではなく,内部変形をしながら運動しているはずである.最近のマントル対流の数値シミュレーション結果や大規模地下構造探査による地震学的証拠から,プレート直下のマントルの流れが生み出すマントル曳力もプレート運動や大陸移動の主要な原動力となり得ることが明らかになってきた.その場合,プレート運動や大陸移動の原動力として,スラブ引っ張り力とマントル曳力のどちらが大きいのかという新たな難題が生まれる.
著者
岩森 光 中村 仁美 吉田 晶樹 柳 竜之介
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集
巻号頁・発行日
vol.62, 2015

若い玄武岩質溶岩組成の大規模データベースを構築し、多変量統計解析により独立な組成空間基底ベクトルの抽出と化学的解釈を行った。その結果、マントルは、「Dupal anomaly」のような南北分割ではなく、「日付変更線付近を境とする東西半球構造」を持つことが分かった。また、この構造は、2.5~9億年前の間、東半球に分布していた複数の超大陸に向かっての沈み込みと親水成分の集中に関連すること、およびマントル東西半球構造が内核の地震波速度構造と酷似し、マントルの長波長対流パターン・温度分布が、核にまで影響を及ぼしている可能性があることが分かった。大陸の離合集散を含むマントル対流モデルは、大陸集合時の「沈み込み帯のかき集め」が、超大陸下に効率的な親水成分集中と冷却をもたらすことを示している。東半球に濃集する親水成分は、地球ニュートリノの偏在をもたらす可能性があり、これは日本とイタリアの検出器を用いて検証可能である。
著者
吉田 晶樹
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.121, no.12, pp.429-445, 2015-12-15 (Released:2016-03-15)
参考文献数
78
被引用文献数
1 2

プレートテクトニクス理論確立後の1970年代半ばに,プレートに働くさまざまな力が分類され,それらの大きさについて定量的な議論が行われるようになった.この研究はプレート運動を球面上の剛体的な回転運動として扱うことで可能であり,地表のテクトニックな情報のみを用いた理論解析の結果,スラブ引っ張り力がプレート運動の主要な原動力の候補とされてきた.しかし実際のプレートは有限の粘性率を持つので,完全な剛体運動をするのではなく,内部変形をしながら運動しているはずである.最近のマントル対流の数値シミュレーション結果や大規模地下構造探査による地震学的証拠から,プレート直下のマントルの流れが生み出すマントル曳力もプレート運動や大陸移動の主要な原動力となり得ることが明らかになってきた.その場合,プレート運動や大陸移動の原動力として,スラブ引っ張り力とマントル曳力のどちらが大きいのかという新たな難題が生まれる.
著者
岩森 光 横山 哲也 中村 仁美 石塚 治 吉田 晶樹 羽生 毅 Tatiana Churikova Boris Gordeychik Asobo Asaah Festus T. Aka 清水 健二 西澤 達治 小澤 恭弘
出版者
国立研究開発法人海洋研究開発機構
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2014-04-01

全地球に分布する主に第四紀に噴火した玄武岩の組成に基づき、地球内部の不均質構造を調べた。これは人体の血液検査に例えることができる。特に、最近提案された「マントルの東西半球構造」に注目し、(1)半球構造の境界付近の詳細研究、(2)地球全体のデータに関する独立成分分析、(3)水を含むマントル対流シミュレーションを行った。その結果、東半球はより親水成分に富み、かつマントル浅部から内核にいたるまで、超大陸の分布に支配される「Top-down hemispherical dynamics」を介して長波長の大構造を有することが示唆された。