著者
藤崎 渉 澤木 佑介 横山 哲也 山本 伸次 丸山 茂徳
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.64, no.5, pp.341-348, 2015-05-05 (Released:2015-06-09)
参考文献数
33
被引用文献数
3

顕生代に起きたとされる5度の大量絶滅の原因を明らかにすることは生命と地球の共進化を明らかにする上で非常に重要な課題である.特に約2億年前のトリアス紀─ジュラ紀境界(T-J境界)で起きた大量絶滅の原因として,隕石衝突説や大規模火成活動説の相反する2説が主張されてきた.本研究ではこの大量絶滅事変の原因を特定するため,T-J境界前後の遠洋深海層状チャートの間に挟まれている頁岩を採取し,その内の28試料を用いて高精度白金族元素濃度測定を行った.Pd/Pt比とIr/Pt比の関係性,及び白金族元素濃度パターンから,T-J境界前後の白金族元素の濃集は大規模火成活動に伴う玄武岩からの混入によって説明できることが明らかになった.また化石記録と比較すると,白金族元素濃度(OsとPd)の最大濃集層はジュラ紀放散虫が出現するチャート層の1層準上位の頁岩層であることも明らかになった.これらのことは,T-J境界絶滅前後において大規模火成活動の寄与が大きかったことを示す.

2 0 0 0 冥王代地球

著者
丸山 茂徳 横山 哲也 澤木 佑介 大森 聡一 鳴海 一成 ドーム ジェームズ 丹下 慶範
出版者
東京工業大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2014-07-10

本計画研究班では、地球史研究から導かれる「生命誕生の器」としての原始地球表層環境を定量的に復元し、冥王代地球表層環境進化の過程を具体的に解明することを目的としている。H29年度の研究は主に5つのテーマで実施された。[1]生命誕生場と生命誕生のプロセスの解明:生命が誕生するためには、水があるだけでは不十分で、それ以外にも複数の環境条件が満たされることが必要である。そこで、諸条件の中から生命誕生場に必要な9つの条件を抽出してまとめた。[2]白馬地域の地質の継続調査と古環境の分類:冥王代類似環境としての白馬地域の特殊な水環境について比較分析し、水環境場を4つのタイプに分類した。白馬で特徴的な蛇紋岩熱水系温泉水は、高アルカリかつ水素ガスを大量に含んでおり、特に、H2を含むため貧酸素水であり、そのため冥王代型の微生物生態系が形成されていることが明らかになった。[3]オクロの自然原子炉の研究:ガボン国内の数地域で露頭周辺の調査を集中的に行い、最適と思われる掘削地点を三か所抽出した。[4]地球の起源と新たな太陽系惑星形成論の展開:太陽系進化の初期条件を決めるうえで、太陽系組成ガスから凝縮した最古の物質であるCAIの理解を深めることが重要である。そこで、始原的隕石ALLENDEに含まれる3種類のCAIに注目し、それらの核合成起源Sr同位体異常(μ84Sr)を高精度で測定した。その結果、μ84Sr値の大きさはFTA > Type B > FSの順であることが判明した。[5]継続的なブレインストーミングの実施:2件の国際ワークショップと4件の国内向けワークショップ実施した。
著者
深海 雄介 木村 純一 入澤 啓太 横山 哲也 平田 岳史
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集 2010年度日本地球化学会第57回年会講演要旨集
巻号頁・発行日
pp.272, 2010 (Released:2010-08-30)

IIIAB鉄隕石と石鉄隕石のパラサイトメイングループ(PMG)は化学組成や酸素同位体組成により、その起源について強く関連があると考えられている。本研究ではこれら隕石の金属部分のタングステン安定同位体組成をレニウム添加による外部補正法を用いて多重検出器型誘導結合プラズマ質量分析計により測定した。また、W濃度の測定を同位体希釈法により行った。IIIAB鉄隕石のW安定同位体比には質量に依存する同位体分別による変動幅が存在し、また、W安定同位体比とW濃度の間には強い相関が見られた。これらは母天体上での金属核固化過程に伴う同位体分別である可能性が示された。PMGの金属相のW安定同位体組成からはPMGの起源がIIIAB鉄隕石の母天体と関連があることが示唆される。
著者
横山 哲也 深井 稜汰 辻本 拓司
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集 2017年度日本地球化学会第64回年会講演要旨集
巻号頁・発行日
pp.201, 2017 (Released:2017-11-09)

従来、太陽系に存在するr-核種の起源は重力崩壊型超新星爆発であると考えられてきたが、いくつかの理論モデルや天文観測からは、質量数130以降の重いr-核種の起源として、連星中性子星の合体が示唆されている。本研究では、未だ不明点の多いr-核種の起源に関し、隕石全岩に見られる重元素同位体異常から制約することを試みた。コンドライト隕石はSr, Zr, Mo, Ruといった元素に関し、地球に比べr-核種に富む傾向を持つ。これは微惑星形成以前の初期太陽系において、これら元素の同位体が不均質分布していたことを意味する。地球組成で規格化したr-核種の濃縮度をコンドライト隕石について計算したところ、濃縮度はZrで最大となった後、質量数の増加とともに低下し、Sm以降はほぼゼロとなった。従って、超新星粒子はSm以降のr-核種を含んでいなかった可能性が高く、太陽系内のSm以降の重いr-核種の起源は連星中性子星の合体が有力である。
著者
増田 雄樹 横山 哲也 岡林 識起 石川 晃
雑誌
JpGU-AGU Joint Meeting 2020
巻号頁・発行日
2020-03-13

Micro-scale isotopic analysis of geologic materials is getting more important in recent geochemistry. Although in-situ isotopic measurements with LA-ICP-MS or SIMS have played a central role in geochemical applications, these techniques are not necessarily suitable for isotopic analysis that requires chemical separation prior to mass spectrometry. In such cases, sampling with micro milling [1] or Laser Ablation in Liquid (LAL) [2] has been applied. However, these sampling techniques could cause cross contamination from the micro-drill material, relatively low recovery yield, and longer sampling time.To overcome these problems, we developed the Laser Ablation with Filter (LAF) method in which sample particles ablated by a fs-laser (IFRIT, Cyber Laser) are carried via the flow of He gas in a Teflon tube and then caught by a membrane filter (pore size: 0.1 µm). The performance of the LAF method was evaluated by using a glass standard (NIST SRM 610), which was ablated by a spiral analysis mode with a fluence of 28 J cm-2, repetition rate of 500 Hz, pulse lengths of 240 fs, wavelength of 260 nm, and raster speed of 100 µm/s. The typical pit size was 20 µm in width and 20 µm deep, which required 1.4 h for sampling an area of 1×1×0.1 mm3. The sample particles retrieved by the filter were dissolved by a mixture of HF and HNO3, then treated with HClO4 to decompose insoluble fluoride precipitates. The sample solution was split into two aliquots; one dedicated for the analysis of trace element abundances with ICP-MS (Xseries 2, Thermo) and the other for isotopic analysis with TIMS (TRITON plus, Thermo) after chemical separation. We found that the recovery yields of trace elements ranged from 80-90%, in which the effect of elemental fluctuation was suppressed owing to the use of the fs-laser [2, 3]. The 87Sr/86Sr of NIST 610 collected by the LAF method was 0.7096787 ± 0.0000016 (2SE), which is consistent with that for NIST 610 (87Sr/86Sr = 0.7096779 ± 0.0000028) separately measured by dissolving a piece of the glass standard. The procedural blank of the LAF method was negligible to perform the trace element and isotopic analyses. The new method can be applied to small minerals and inclusions in terrestrial rocks and meteorites for understanding the carrier phases that cause isotope heterogeneities in mantle rocks and refractory inclusions in carbonaceous chondrites.[1]Myojo, K. et al. (2018) Astrophys. J. 853, 48. [2]Okabayashi, S. et al. (2011) J. Anal. At. Spectrom, 26, 1393-1400. [3]Fernández B. et al. (2007) TrAC. 26, 951–966.
著者
岩森 光 横山 哲也 中村 仁美 石塚 治 吉田 晶樹 羽生 毅 Tatiana Churikova Boris Gordeychik Asobo Asaah Festus T. Aka 清水 健二 西澤 達治 小澤 恭弘
出版者
国立研究開発法人海洋研究開発機構
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2014-04-01

全地球に分布する主に第四紀に噴火した玄武岩の組成に基づき、地球内部の不均質構造を調べた。これは人体の血液検査に例えることができる。特に、最近提案された「マントルの東西半球構造」に注目し、(1)半球構造の境界付近の詳細研究、(2)地球全体のデータに関する独立成分分析、(3)水を含むマントル対流シミュレーションを行った。その結果、東半球はより親水成分に富み、かつマントル浅部から内核にいたるまで、超大陸の分布に支配される「Top-down hemispherical dynamics」を介して長波長の大構造を有することが示唆された。