著者
鹿野 和彦 大口 健志 林 信太郎 矢内 桂三 石塚 治 宮城 磯治 石山 大三
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.126, no.5, pp.233-249, 2020-05-15 (Released:2020-09-17)
参考文献数
38
被引用文献数
2

田沢湖カルデラから2-1.8Maのある時期に噴出した火砕流密度流起源のテフラを記載した.下部は多面体~平板型ガラス片と岩片に富むテフラで,マグマ水蒸気爆発に伴ってカルデラ崩壊が始まったことを示唆する.上部は淘汰不良無層理の気泡型ガラス片に富むテフラで,岩屑なだれ堆積物と共存しており,カルデラ形成噴火最盛期に放出されたことを示唆する.これらは長期的にわたって侵食され田沢湖近傍でさえほとんど残っていない.カルデラ形成後の1.8-1.6Maには2つの溶岩ドームがカルデラ床に,2つの溶岩流が外輪山に噴出している.また,カルデラ形成前にはカルデラ南縁で少量の安山岩が噴出している.
著者
海野 進 仙田 量子 石塚 治 田村 明弘 草野 有紀 荒井 章司
雑誌
日本地球惑星科学連合2018年大会
巻号頁・発行日
2018-03-14

地球の全マントルの50–70 wt%を占める枯渇したマントルは大陸地殻を形成した融け残り岩とされている[1]。これらの枯渇したマントルは,クラトン下のリソスフェアや海底下の対流するアセノスフェアを構成するが,それらがいつ地球創生期の始原的マントル(PUM)から分化し,どのようなプロセスで形成されたかを明らかにすることはマントルの物質的進化を理解する上で重要である。 カンラン岩の溶融時にOsの親核種であるReがメルトとともに完全に融け残り岩から失われると,融け残り岩のOs同位体比はそれ以降変化しない。この仮定のもとに始源的マントル(PUM)から融け残りカンラン岩を生成したRe枯渇年代が決められる。クラトン下のリソスフェアの多くはOs同位体比(187Os/188Os)が0.11以下と低く,始生代末~原生代初めのRe枯渇年代を示すことから,その頃にPUMが大規模に融解し,対流するマントルから切り離された融け残り岩と考えられる[2, 3]。一方,中央海嶺玄武岩(MORB)のソースとなる対流するマントル(DMM)は,Os同位体比が0.116–0.135と幅広く,多くは10億年前より若いRe枯渇年代を示すことから,原生代以降の様々な時期に対流による溶融と混合・攪拌を通じて形成されたと考えられてきた。しかし,高枯渇ハルツバージャイトを主体とするクラトン下リソスフェアとは異なり,DMMの多くはPUMからメルトを3–4 wt%取り去った程度の低枯渇度で,溶融後も相当量のReが残存していたはずである。すなわちDMMは従来考えられた以上に古い時代に分化した可能性がある。 そこでRe-Osアイソクロンが適用困難な融け残りカンラン岩について,Re/Os比の初期値をメルト組成から独立に推定する方法を提案する [4]。PUMからの分化時に融け残りカンラン岩と平衡であったメルトのREE組成についてモデル計算をし,融け残り岩のYb濃度を推定することによってPUMの部分溶融度,すなわち融け残り岩のRe/Os比の初期値を決めることができる。このRe/Os比と Os同位体比をもとにOs同位体進化曲線を計算すれば,分化年代が得られる。最近,著者らは伊豆―小笠原―マリアナ(IBM)前弧域の無人岩マグマ由来のCrスピネルとメルト包有物の解析から,初生無人岩マグマのソースマントルが2種類あり,それぞれ37–32億年前と17–15億年前にPUMから分化した融け残り岩であることを明らかにした[4]。同様に,Os同位体比0.125を有する平均的なDMMは26–22億年前にPUMから分化したことがわかった。これらの3つの年代は丸山[2002]が示した大陸形成が最も活発であった時期と合致する(図1)。また,平均的なDMM分化が起きた26–22億年前はクラトン下リソスフェアのRe枯渇年代と一致する。このことから,大規模な大陸形成をもたらしたマントル対流の活動期パルスが幅広いOs同位体比を示すDMMの生成にも関与したと考えられる。[1] Zindler, A., and Hart, S., 1986. Ann. Rev. Earth Planet. Sci.,14, 493 - 571[2] 仙田量子ほか,2012. 岩石鉱物科学,41, 211 – 221[3] Walker, R. J., 2016. Geochemical Perspectives, 5[4] Umino, S. et al., 2018. Island Arc, doi: 10.1111/iar.12221[5] 丸山, 2002.プルームテクトニクスと全地球史解読, 岩波書店
著者
鹿野 和彦 谷 健一郎 岩野 英樹 檀原 徹 石塚 治 大口 健志 Daniel J. Dunkley
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.118, no.6, pp.351-364, 2012-06-15 (Released:2012-11-07)
参考文献数
76
被引用文献数
7 8

赤島層デイサイト溶結火山礫凝灰岩についてジルコンのU-Pb年代とフィッション・トラック(FT)年代,斜長石のAr-Arプラトー年代を測定し,それぞれ72 Ma,65〜63 Ma,34 Maの値を得た.ジルコンは自形に近い外形とこれに調和的な累帯構造を保持し,かつ溶結した基質や軽石もしくは緻密なレンズの中に散在しており,本質結晶と考えられる.個々のジルコンのU-Pb年代値は集中して標準偏差も1〜2 Maと小さく,マグマの噴出年代を示している可能性が高い.FT年代値は,FTの短縮化が確認できるので,噴出後に熱的影響を受けて若返ったと考えることができる.斜長石のAr-Ar年代値は,段階加熱の広い範囲で安定しているものの,プラトー年代値は上位の門前層火山岩の同位体年代値の範囲内にあり,門前層の火山活動によってアルバイト化して若返った可能性が高い.得られたU-Pb年代は,東北日本においても後期白亜紀の後半に酸性火山活動が活発であったとする見解を支持する.
著者
佐々 政孝 石塚 治志 中田 育男
出版者
日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータ ソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.10, no.3, pp.3_212-3_228, 1993-05-19 (Released:2018-11-05)

1パス型属性文法に基づくコンパイラ生成系Rie(りえ)について述べる.LR構文解析と同時に解析木を作らずに属性評価ができる属性文法のクラスにLR属性文法というものがあるが,Rieはそれに同値類を導入したECLR属性文法というものに基づいている.Rieは属性文法によるコンパイラの記述から1パスのコンパイラを生成する.Rieにより種々の言語処理系が開発されている.生成されたコンパイラは,手書きのものに比べて1.8倍程度の時間で動き,形式的な記述から生成されたコンパイラとしてはかなり効率がよいことが確認された.
著者
石塚 治
出版者
特定非営利活動法人 日本火山学会
雑誌
火山 (ISSN:04534360)
巻号頁・発行日
vol.61, no.1, pp.91-100, 2016-03-31 (Released:2017-03-20)

How subduction begins and its consequences for global tectonics remain one of the essential outstanding problems of plate tectonics. Two different endmember mechanisms for subduction initiation have been hypothesized: spontaneous, and induced (or forced). Numerical models suggest that subduction initiation is induced by externally forced compression along a preexisting discontinuity in an oceanic plate such as a fracture zone or transform faults. However, it has been pointed out that spontaneous subduction must have occurred at some points in Earth's history to initiate plate tectonics, and recent numerical models demonstrated that lateral thermal/compositional buoyancy contrast along plate discontinuity or within lithosphere can cause spontaneous subduction initiation. Recent geological and geophysical surveys in the Izu-Bonin-Mariana fore-arc have revealed igneous processes in the initial stages of subduction. The oldest magmatism after subduction initiation generated MORB-like fore-arc basalts, which was associated with seafloor spreading caused by onset of sinking of slab into mantle. Then boninitic magmatism followed by tholeiitic to calc-alkaline arc lavas collectively makes up the extrusive sequence of the fore-arc crust. This magmatic evolution from initial basaltic magmatism to establishment of normal arc magmatism took several million years. Fore-arc stratigraphy observed in the Izu-Bonin-Mariana arc shares some of the key geologic and petrologic characteristics with many supra-subduction zone ophiolite, which implies that fore-arc crustal section produced in the initial stage of oceanic island arc formation could correspond to in-situ section of supra-subduction zone ophiolite prior to obduction. Recent ocean drilling projects targeting initial stage of the Izu-Bonin-Mariana arc inception revealed that subduction initiation to form the Izu-Bonin-Mariana arc took place spontaneously. The drilling results also revealed that the whole arc was established on the ocean crust produced associated with subduction initiation.
著者
宇都 浩三 石塚 治
出版者
石油技術協会
雑誌
石油技術協会誌 (ISSN:03709868)
巻号頁・発行日
vol.64, no.1, pp.63-71, 1999 (Released:2008-03-27)
参考文献数
28
被引用文献数
5 8

Current situation and future possibility of the K-Ar and 40Ar/39Ar dating methods are reviewed focusing their utilization to the Tertiary volcanic rocks. As Tertiary volcanic rocks in general are not completely free from weathering and alteration, special attention should be made in choosing appropriate samples for age analyses. K-Ar and 40Ar/39Ar analytical results are shown for two contemporaneous rocks of Middle Miocene age, one is a porphyritic intrusive rock with holocrystalline groundmass and the other is an extrusive lava with glassy groundmass. The former gives concordant K-Ar and 40Ar/39Ar ages, while the latter shows considerably younger K-Ar and 40Ar/39Ar total gas ages with the obviously disturbed 40Ar/39Ar age spectra in the low temperature fractions. These results suggest that holocrystalline rocks are preferable to glassy rocks in K-Ar and 40Ar/39Ar dating, because glass tends to easily loose the accumulated radiogenic 40Ar not only by decomposition but also by hydration. Accurate and precise age determinations can be achieved by the 40Ar/39Ar incremental heating experiments along with the age spectrum and isochron interpretations. Total fusion 40Ar/39Ar dating for single to a few grains of fresh K-bearing phenocrysts like biotite, sanidine and plagioclase is also useful in knowing the ages for glassy and/or altered rocks. Multiple analyses on such mineral separates ensure the reproducibility of the analyses and reduce the analytical uncertainty by statistical treatments. Systematic 40Ar/39Ar studies are now underway to construct the accurate and precise tectonic history of the Japanese island arc.
著者
岡村 聡 坂本 泉 金 容義 石塚 治 湯浅 真人 冨士原 敏也 藤岡 換太郎 倉本 能行 前田 仁一郎
出版者
一般社団法人日本鉱物科学会
雑誌
日本鉱物科学会年会講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.2007, pp.7, 2007

孀婦岩構造線は,伊豆・小笠原弧を北部と南部に二分する大構造線であり,北北東―南南西方向の走向を示し,その東側斜面に沿って比高最大1500mの急崖が発達し,地殻の深部断面を観察することができる.<Br> 孀婦岩構造線の南東に位置する沢海山は,鮮新世の活動年代を示す火山フロント帯火山であり,島弧玄武岩の化学組成を示す.<Br> 孀婦岩構造線沿いに観察される地殻断面(孀婦地塊)は,後期中新世を示す塊状の溶岩・貫入岩とハイアロクラスタイト及び,それらを供給するフィーダーダイク・溶岩が観察される.孀婦地塊を基盤とする背弧側には中新世~鮮新世に活動した小海丘群が存在する.孀婦地塊と小海丘群の火成岩類は,いずれも背弧海盆玄武岩の特徴を示す点で共通するが,後者はIndian Ocean MORBタイプアセノスフェアの寄与が大きかったことを示唆する.
著者
岩森 光 横山 哲也 中村 仁美 石塚 治 吉田 晶樹 羽生 毅 Tatiana Churikova Boris Gordeychik Asobo Asaah Festus T. Aka 清水 健二 西澤 達治 小澤 恭弘
出版者
国立研究開発法人海洋研究開発機構
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2014-04-01

全地球に分布する主に第四紀に噴火した玄武岩の組成に基づき、地球内部の不均質構造を調べた。これは人体の血液検査に例えることができる。特に、最近提案された「マントルの東西半球構造」に注目し、(1)半球構造の境界付近の詳細研究、(2)地球全体のデータに関する独立成分分析、(3)水を含むマントル対流シミュレーションを行った。その結果、東半球はより親水成分に富み、かつマントル浅部から内核にいたるまで、超大陸の分布に支配される「Top-down hemispherical dynamics」を介して長波長の大構造を有することが示唆された。