著者
下坂 将史 呉 修一 山田 正 吉川 秀夫
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B (ISSN:18806031)
巻号頁・発行日
vol.65, no.2, pp.106-122, 2009 (Released:2009-06-19)
参考文献数
24
被引用文献数
1

本論文は,ダム貯水池の洪水調節機能向上を目的としダム放流量の新しい決定方法を提案するものである.著者らは従来から,現在まで降った降雨のうち確実にダム貯水池へ流入する量を,実際に流入する以前に放流する事前放流方法を提案している.本論文では,放流開始までの準備時間及び下流懸案地点における水位上昇速度を考慮してダムからの放流シミュレーションを行う.これにより各種法律,施設の放流能力,放流開始までの準備時間を考慮した実務に即した放流が可能な事を示すとともに,洪水低減効果向上のためには放流開始に要する準備時間を短くする必要がある事を示した.また,出水直前のダム貯水位が夏期制限水位以下の場合でも,初期水位低下量を考慮した事前放流を行うことで出水以降には夏期制限水位へと貯水位が回復することを明らかにした.
著者
呉 修一 地引 泰人 サッパシー アナワット 有働 恵子 真野 明
出版者
水文・水資源学会
雑誌
水文・水資源学会研究発表会要旨集
巻号頁・発行日
vol.27, 2014

2013年台風30号(ハイエン)はフィリピンレイテ島やサマール島に甚大な被害をおよぼした.本台風は上陸時の中心気圧895hPa,瞬間最大風速100m/s以上と史上最大規模のスケールであり,高潮,高波や強風を伴い7000人を超える死者・行方不明者が生じた(呉ら, 2014).特にレイテ島北東沿岸部に位置するタクロバン市,パロ町,タナウアン町(図-1)に死者・行方不明者が集中しており,サンペドロ湾奥に発生した高潮の規模の大きさやレイテ島沿岸部地域の脆弱性を示唆するものである.<br>&nbsp;著者らは,台風30号ハイエンに伴い甚大な被害が発生したフィリピンレイテ島北東部を中心に,高潮の浸水状況や避難実施時の問題点などを明らかにするための調査を,2014年1月から3月にかけて複数回実施した.調査より本台風の外力の強さと被災地沿岸部の脆弱性,多くの社会的問題が明らかとなった.<br>&nbsp;本報告では,台風ハイエンの特徴や水文特性および現地調査より明らかとなった被害拡大要因および様々な問題点に関して報告する.
著者
呉 修一 Bambang WINARTA 武田 百合子 有働 恵子 梅田 信 真野 明 田中 仁
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集G(環境) (ISSN:21856648)
巻号頁・発行日
vol.69, no.5, pp.I_183-I_190, 2013 (Released:2014-01-21)
参考文献数
20

2006年5月,インドネシア・シドアルジョ市で泥火山が噴出した.噴出に伴い,2011年6月の時点で6.5km2の範囲が泥水で覆われ,高速道路や鉄道が影響を受け,3万人以上の近隣住民の生活に影響が及んだ.堆積・貯蔵限界を超えた泥水は,隣接するポロン川へ導水路を通じて排出されている.噴出した泥には硫黄などの有毒成分が含まれるため,河川・海洋の環境汚染および汚泥の堆積による河川の洪水疎通能力の低下が懸念されている.本論文は,ポロン川における汚泥の堆積・流出状況を評価するため,河川横断面データを収集し河床形状の時間的な変化を解析した.解析結果により,ポロン川への汚泥の流入に伴い,乾期に汚泥の堆積が顕著に進むが雨期には流出し, その堆積量は年々減少していることが明らかとなった.
著者
呉 修一 山田 正 吉川 秀夫
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B (ISSN:18806031)
巻号頁・発行日
vol.65, no.3, pp.231-245, 2009 (Released:2009-09-18)
参考文献数
41

本論文は,物理的観点に立脚した降雨流出機構の解明および様々な流域に普遍的に適用可能な降雨流出計算手法の構築を目的とし,有効降雨に対して実測流量データから逆推定を行ったものである.実測流量データから求めた有効降雨と流域の保水能分布から求めた有効降雨の比較を行うことにより,有効降雨の時間変動特性および物理的解釈に対して考察を行った.これにより,有効降雨の物理的解釈は降雨の形で有効降雨をとる場合と流出寄与域の形で有効降雨をとるという二つのタイプを考える必要があることを示した.また,累積降雨量に応じた流出寄与面積,流出寄与斜面長の変動を考慮した流出計算手法を新たに提案し,草木ダム流域へ実際に適用することでその合理性・実用性を示した.