著者
渡辺 英伸 味岡 洋一 太田 玉紀 本山 悌一 岩渕 三哉 本間 照
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.659-682, 1990-06-25

要旨 炎症性腸疾患を病理学的に鑑別するには,まず病変が肉眼的に,①縦走潰瘍型,②輪状潰瘍型,③円・卵円形潰瘍型,④玉石状所見・炎症性ポリポーシス型,⑤浮腫・充血・出血・びらん型,および⑥腫瘍様多発隆起型,の6基本肉眼型のどれに帰属するかを判定しなければならない.各基本肉眼型はいくつかの病変を含んでいる.次いで,基本肉眼型である基本病変の肉眼的特徴とその周辺粘膜の肉眼的特徴とを組み合わせることで,各疾患は肉眼的に診断できる.これに組織所見を加えることで,炎症性腸疾患の病理学的鑑別診断はより確実なものとなる.
著者
小野 裕之 八尾 建史 藤城 光弘 小田 一郎 上堂 文也 二村 聡 矢作 直久 飯石 浩康 岡 政志 味岡 洋一 藤本 一眞
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.62, no.2, pp.273-290, 2020 (Released:2020-02-20)
参考文献数
138
被引用文献数
2

早期胃癌に対する内視鏡治療が急速な拡がりを見せている現況において,日本消化器内視鏡学会は,日本胃癌学会の協力を得て,新たに科学的な手法で作成した基本的な指針として,“胃癌に対するESD/EMRガイドライン”を2014年に作成した.この分野においてはエビデンスレベルが低いものが多く,コンセンサスに基づき推奨度を決定しなければならないものが多かったが,近年,よくデザインされた臨床研究が増加している.新しい知見を踏まえて,適応・術前診断・手技・根治性の評価・偶発症・術後長期経過・病理の7つのカテゴリーに関して,改訂第2版を刊行し,現時点での指針とした.
著者
橋本 哲 水野 研一 佐藤 裕樹 高綱 将史 横山 純二 市川 寛 渡邉 玄 味岡 洋一 寺井 崇二
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.295-299, 2020-03-25

疾患の概念 食道壁内偽憩室症は,1960年にMendlら1)によって初めて報告された,粘膜および粘膜下層の食道腺導管が囊状に拡張したまれな疾患である.多発する小さい憩室様の所見を呈するが,通常の仮性憩室とは異なり,固有筋層の外側に伸展することはない.明らかな発症原因は不明であるが,真菌や細菌感染,逆流性食道炎,アルコール多飲などに伴う慢性炎症により,食道腺や導管に炎症が波及し病的拡張を来すと推察されている.
著者
味岡 洋一
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.117, no.11, pp.957-964, 2020-11-10 (Released:2020-11-10)
参考文献数
32

潰瘍性大腸炎におけるcolitis-associated cancer(炎症性発癌)早期病変は,通常の大腸に発生する腺腫や腺癌とは病理学的に異なる組織学的特徴,細胞増殖動態,p53免疫染色態度を示すものが多い.現在日本では,炎症性発癌早期病変の病理診断に際しては,①Riddellらのdysplasia分類,②日本の通常の病理診断分類,③厚労省分類,の3つの分類が用いられているが,いずれの分類も炎症性発癌早期病変の的確な病理診断には問題がある.同病変の病理学的特徴を十分把握した上で,再現性や標準化が担保される診断アルゴリズムの作成が必要である.
著者
田中 信治 樫田 博史 斎藤 豊 矢作 直久 山野 泰穂 斎藤 彰一 久部 高司 八尾 隆史 渡邊 昌彦 吉田 雅博 斉藤 裕輔 鶴田 修 五十嵐 正広 豊永 高史 味岡 洋一 杉原 建一 楠 正人 小池 和彦 藤本 一眞 田尻 久雄
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.61, no.6, pp.1321-1344, 2019 (Released:2019-06-20)
参考文献数
203
被引用文献数
2

大腸腫瘍の内視鏡治療の適応病変としては,早期大腸癌のみでなく前癌病変としての腺腫性病変も多く存在し,大腸EMRとESDの棲み分け,そのための術前診断,実際の内視鏡治療の有効性と安全性を第一線の臨床現場で確保するための指針が重要である.そこで,日本消化器内視鏡学会では,大腸癌研究会,日本大腸肛門病学会,日本消化器病学会の協力を得て,新たに科学的な手法で作成した基本的な指針として「大腸ESD/EMRガイドライン」を2014年に作成した.本ガイドラインでは,手技の具体的な手順や機器,デバイス,薬剤の種類や使用法など実臨床的な部分については,すでに日本消化器内視鏡学会卒後教育委員会編「消化器内視鏡ハンドブック」が2012年5月に刊行(2017年5月に改訂)されているので,技術的内容に関しては可能な限り重複を避けた.大腸ESDは2012年4月に保険適用となったが,2018年4月には保険適用範囲と診療報酬点数が改訂された.「大腸ESD/EMRガイドライン」発刊後,SSA/Pの病態解明やESD症例のさらなる集積もなされており,ガイドライン初版発刊から5年目の2019年に最新情報を盛り込んだ改訂版を発刊するに至った.