著者
小野 裕之 八尾 建史 藤城 光弘 小田 一郎 上堂 文也 二村 聡 矢作 直久 飯石 浩康 岡 政志 味岡 洋一 藤本 一眞
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.62, no.2, pp.273-290, 2020 (Released:2020-02-20)
参考文献数
138
被引用文献数
2

早期胃癌に対する内視鏡治療が急速な拡がりを見せている現況において,日本消化器内視鏡学会は,日本胃癌学会の協力を得て,新たに科学的な手法で作成した基本的な指針として,“胃癌に対するESD/EMRガイドライン”を2014年に作成した.この分野においてはエビデンスレベルが低いものが多く,コンセンサスに基づき推奨度を決定しなければならないものが多かったが,近年,よくデザインされた臨床研究が増加している.新しい知見を踏まえて,適応・術前診断・手技・根治性の評価・偶発症・術後長期経過・病理の7つのカテゴリーに関して,改訂第2版を刊行し,現時点での指針とした.
著者
角嶋 直美 矢作 直久 藤城 光弘 井口 幹崇 岡 政志 小林 克也 橋本 拓平 小俣 政男
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.47, no.6, pp.1266-1271, 2005-06-20 (Released:2011-05-09)
参考文献数
12
被引用文献数
1

【背景と目的】内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)の登場により,従来では考えられなかった大型病変も内視鏡的に治療されるようになってきた.しかし,ESDによって生じた大型人工潰瘍の治癒過程についての詳細は明らでかはない.そこで,ESD後の治癒過程を明らかにするため,経時的な内視鏡像の検討を行った.【方法】当科においてESDによって治療された胃粘膜内腫瘍70症例を対象として,ESD後潰瘍の治癒過程および瘢痕形態を,切除サイズ,部位,胃壁の断面区分別に検討した.内視鏡観察は,原則としてESD後1,4,8,12週目に行い,抗潰瘍治療として,プロトンポンプ阻害薬(PPI)及びスクラルファート通常量を投与した.【結果】ESDの切除サイズは平均34.7mm(20.0~90.0mm)であった.ESD後潰瘍は切除サイズや部位・周在によらず,全例において8週までにS1-2stageに治癒・瘢痕化した.【結論】ESD後潰瘍は大型のものでも,消化性潰瘍と同様の治療で術後8週以内に治癒・瘢痕化する.これらは,ESD後のフォローアップや治療計画の立案に非常に有用な知見と考えられた.
著者
田中 信治 樫田 博史 斎藤 豊 矢作 直久 山野 泰穂 斎藤 彰一 久部 高司 八尾 隆史 渡邊 昌彦 吉田 雅博 斉藤 裕輔 鶴田 修 五十嵐 正広 豊永 高史 味岡 洋一 杉原 建一 楠 正人 小池 和彦 藤本 一眞 田尻 久雄
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.61, no.6, pp.1321-1344, 2019 (Released:2019-06-20)
参考文献数
203
被引用文献数
2

大腸腫瘍の内視鏡治療の適応病変としては,早期大腸癌のみでなく前癌病変としての腺腫性病変も多く存在し,大腸EMRとESDの棲み分け,そのための術前診断,実際の内視鏡治療の有効性と安全性を第一線の臨床現場で確保するための指針が重要である.そこで,日本消化器内視鏡学会では,大腸癌研究会,日本大腸肛門病学会,日本消化器病学会の協力を得て,新たに科学的な手法で作成した基本的な指針として「大腸ESD/EMRガイドライン」を2014年に作成した.本ガイドラインでは,手技の具体的な手順や機器,デバイス,薬剤の種類や使用法など実臨床的な部分については,すでに日本消化器内視鏡学会卒後教育委員会編「消化器内視鏡ハンドブック」が2012年5月に刊行(2017年5月に改訂)されているので,技術的内容に関しては可能な限り重複を避けた.大腸ESDは2012年4月に保険適用となったが,2018年4月には保険適用範囲と診療報酬点数が改訂された.「大腸ESD/EMRガイドライン」発刊後,SSA/Pの病態解明やESD症例のさらなる集積もなされており,ガイドライン初版発刊から5年目の2019年に最新情報を盛り込んだ改訂版を発刊するに至った.
著者
後藤 修 竹内 裕也 北川 雄光 矢作 直久
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.57, no.8, pp.1632-1640, 2015 (Released:2015-08-29)
参考文献数
13
被引用文献数
1

内視鏡と腹腔鏡を用いて胃を開放させずに任意の部位を過不足ない範囲で全層切除する非穿孔式内視鏡的胃壁内反切除術(non-exposed endoscopic wall-inversion surgery:NEWS)について概説した.腹腔内汚染や医原性腹膜播種の可能性を理論的に払拭できる本法は,経口的に回収できる腔内もしくは壁内発育型胃粘膜下腫瘍や,リンパ節転移陰性が期待できるが内視鏡治療が技術的に困難な早期胃癌が良い適応となる.さらに,本術式をセンチネルリンパ節ナビゲーション手術と融合させることで,リンパ節転移の可能性が否定できない早期胃癌に対してもより低侵襲な胃機能温存手術を提供することができる.正確な漿膜マーキング,腹腔鏡下漿膜筋層切開・縫合,内反した病変周囲の粘膜切開,縫合糸近傍の粘膜下層切開など,技術的にも新規性に富む過程が満載されている.解決すべき課題は多いが,本法は内視鏡を用いたより理想的な胃癌低侵襲手術の一つとして期待が寄せられている.