著者
武田 輝之 平井 郁仁 矢野 豊 高田 康道 岸 昌廣 寺澤 正明 別府 剛志 小野 陽一郎 久部 高司 長浜 孝 八尾 建史 松井 敏幸 植木 敏晴
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.163-168, 2018-02-25

要旨●現在,潰瘍性大腸炎を評価するための内視鏡スコアは多数存在するが,スコアの統一化についての一定のコンセンサスはない.これまでのスコアは検者内・検者間一致率などの信頼性評価が十分ではなかったことがその要因の一つである.2012年に提唱されたUCEISはその問題を指摘し検討した上で作成された内視鏡スコアである.今回,筆者らは現在汎用されているMESとUCEISの両者に関して検者間一致率を検討した.その結果,UCEISはMESと比較し,検者間一致率が高い傾向にあった.今後の課題として,UCEISによる粘膜治癒の定義や長期予後との検討などが挙げられるが,妥当性の検証結果からは今後の臨床研究などで使用するスコアとしてより適したものであると考えられた.
著者
二村 聡 田邉 寛 小野 貴大 太田 敦子 久部 高司 岩下 明德
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.359-362, 2021-03-25

概念・定義 T細胞リンパ腫はT細胞(Tリンパ球)を正常対応細胞とするリンパ系腫瘍と定義される.これに基づくと,同疾患は未熟T細胞に近い性質を示す腫瘍細胞から成るTリンパ芽球性白血病/リンパ腫(T-lymphoblastic leukemia/lymphoma)と,より分化した成熟T細胞に近い性質を示す腫瘍細胞から成る末梢性T細胞リンパ腫(peripheral T-cell lymphoma;PTCL)に大別される.2016年に概要が公表され1),翌2017年に公刊された最新のWHO分類2)に掲載されているT細胞リンパ腫の病型・疾患単位の多くは,このPTCLに帰属する.なお,末梢性という用語はT細胞の分化・成熟段階において末梢に位置し,より分化・成熟しているという意味で使われており,決して腫瘍の発生部位を意味するものではない. 他稿で解説されているB細胞リンパ腫の各病型は,B細胞の生物学的な各分化段階と明確に関連づけられており,その分類はかなり整然としている.一方,胸腺以降の末梢性T細胞の細胞形態やリンパ組織における分布域はT細胞の分化段階とはあまり関連しておらず,T細胞リンパ腫では正常対応細胞が細胞形態学的にも免疫組織化学的にも容易に識別できない.このことがT細胞リンパ腫の分類をいっそう困難にしている.
著者
田中 信治 樫田 博史 斎藤 豊 矢作 直久 山野 泰穂 斎藤 彰一 久部 高司 八尾 隆史 渡邊 昌彦 吉田 雅博 斉藤 裕輔 鶴田 修 五十嵐 正広 豊永 高史 味岡 洋一 杉原 建一 楠 正人 小池 和彦 藤本 一眞 田尻 久雄
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.61, no.6, pp.1321-1344, 2019 (Released:2019-06-20)
参考文献数
203
被引用文献数
2

大腸腫瘍の内視鏡治療の適応病変としては,早期大腸癌のみでなく前癌病変としての腺腫性病変も多く存在し,大腸EMRとESDの棲み分け,そのための術前診断,実際の内視鏡治療の有効性と安全性を第一線の臨床現場で確保するための指針が重要である.そこで,日本消化器内視鏡学会では,大腸癌研究会,日本大腸肛門病学会,日本消化器病学会の協力を得て,新たに科学的な手法で作成した基本的な指針として「大腸ESD/EMRガイドライン」を2014年に作成した.本ガイドラインでは,手技の具体的な手順や機器,デバイス,薬剤の種類や使用法など実臨床的な部分については,すでに日本消化器内視鏡学会卒後教育委員会編「消化器内視鏡ハンドブック」が2012年5月に刊行(2017年5月に改訂)されているので,技術的内容に関しては可能な限り重複を避けた.大腸ESDは2012年4月に保険適用となったが,2018年4月には保険適用範囲と診療報酬点数が改訂された.「大腸ESD/EMRガイドライン」発刊後,SSA/Pの病態解明やESD症例のさらなる集積もなされており,ガイドライン初版発刊から5年目の2019年に最新情報を盛り込んだ改訂版を発刊するに至った.
著者
久部 高司 松井 敏幸 宮岡 正喜 二宮 風夫 石原 裕士 長浜 孝 高木 靖寛 平井 郁仁 池田 圭祐 岩下 明徳 東 大二郎 二見 喜太郎
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.54, no.8, pp.2269-2277, 2012 (Released:2012-10-22)
参考文献数
29
被引用文献数
1

【背景】潰瘍性大腸炎(UC)は,大腸病変のみならず回腸嚢炎など他臓器に様々な合併症を引き起こすことがある.その中で大腸病変に類似したびまん性の胃十二指腸炎がまれながら報告されている.【目的】UCに関連した上部消化管病変の定義を試み,その頻度と臨床経過を検討する.【方法】上部消化管内視鏡検査が施行されたUC 322例を対象とした.大腸病変に類似したびまん性胃十二指腸炎のうち,他疾患が否定され以下の定義に合致するものをUCに関連したulcerative gastroduodenal lesion(UGDL)と定義した.1)UCの治療により胃十二指腸病変が改善する.and/or 2)病理組織学的所見がUCに類似する.【結果】この定義に合致したUGDLは322例中15例(4.7%)で,15例の大腸病変の病型は全大腸炎型または大腸全摘出術後だった.病型別では全大腸炎型146例中9例(6.2%),大腸全摘術後81例中6例(7.4%)に認められ,大腸全摘出術後のうち4例は回腸嚢炎を合併していた.【結論】今後UCの診断治療に際してはUGDLの存在も考慮しなければならない.またUGDLは回腸嚢炎との関連も示唆された.
著者
久部 高司 松井 敏幸 二宮 風夫 佐藤 祐邦 大門 裕貴 武田 輝之 長浜 孝 高木 靖寛 平井 郁仁 八尾 建史 東 大二郎 二見 喜太郎 岩下 明德
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.471-478, 2013-04-25

要旨 潰瘍性大腸炎(ulcerative colitis ; UC)にも小腸病変が存在することが明らかとなってきたが,その病態については不明である.今回,小腸用カプセル内視鏡を施行した活動期UC 30例,大腸全摘出後11例の内視鏡所見および臨床所見について検討した.小腸病変(浮腫,潰瘍)は41例中15例(36.6%)に認められ,このうち小腸の広範囲に多数存在する潰瘍は6例だった.小腸の広範囲に多数存在する潰瘍6例と,それ以外の35例の臨床背景の比較検討では,潰瘍を有する群では検査時平均年齢24.8±10.8歳,発症時平均年齢20.8±8.7歳と有意に若く(p<0.05),病型は6例とも全大腸炎型または回腸囊炎であり,有意に高い頻度だった(p<0.05).経過観察できた3例は全例小腸病変が消失し,うち2例はプレドニゾロンによる治療で比較的速やかに病変が消失した.さらに,6例のうち4例に上部消化管病変を伴っていたことはUCとの関連を示唆する所見と考えられた.今後,さらにUCにおける小腸病変の臨床的意義について詳細に検討する必要がある.
著者
松井 敏幸 久部 高司 矢野 豊 平井 郁仁
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.237-249, 2014 (Released:2014-02-26)
参考文献数
66

炎症性腸疾患(IBD)である潰瘍性大腸炎(UC)とクローン病(CD)はそれぞれ長期罹患者が増加し,種々の合併症が発症する.その中でも大腸癌(CRC)は最も重大な合併症であり,生命予後にも強く関与するため,その軽減に努力が重ねられてきた.本稿では,IBDにともなうCRCの近年の疫学的特徴について述べ,特に欧米とは異なったわが国独自の特徴にも触れた.CRC早期発見にはサーベイランス内視鏡(SC)の意義は高い.その適応などについて概要を解説する.