著者
川瀬 良美 森 和代 吉崎 晶子 和田 充弘 松本 清一
出版者
一般社団法人 日本女性心身医学会
雑誌
女性心身医学
巻号頁・発行日
vol.9, no.2, pp.119-133, 2004
被引用文献数
12

本研究の目的は,成熟期の女性のPMSの実態について即時的な記録から明らかにしようとするものである.成熟期の25歳以上45歳以下の141名の388月経周期について月経前期と月経期に記録された身体症状,精神症状そして社会的症状の合計51症状について検討した.月経前症状の頻度,平均値,最大値からみた主症状は,精神症状のイライラする,怒りやすい,身体症状の乳房の張りの3症状といえた.また特定の人に強く経験されている症状も認められた.対象者の諸属性のうち,年齢グループ別,出産経験有無別,就労形態別で検討したところ,それぞれの属性で有意に高い平均値を示す症状群が認められた.月経前期から月経期への推移について検討したところ,月経前期から月経へ減少または消失するというPMSの特徴を統計的に有意に示す症状は15症状であった.それら症状の相互関連をクラスター分析によって検討した結果,イライラ,怒りやすい,そして食欲増加という選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)に反応するような脳レベルの問題と考えられる症状のクラスターAと,乳房の張り,ニキビができやすいなど卵巣ホルモンが直接発症に関与している症状のクラスターBが見いだされた.また,クラスター分析と属性別の結果から出産経験の有無による相違が認められ,出産経験が症状と特異的に関連していることが示唆された.また,月経前期から月経期へ統計的に有意な増加を示す症状は12症状で,クラスター分析の結果,下腹痛など子宮レベルの問題を背景とした症状と精神症状と社会的症状で構成されたクラスターCが見いだされ,成熟期女性にも周経期症候群(PEMS)の概念で説明できる月経前症状が認められた.以上の結果から,本邦における成熟期女性の月経前症状は,脳レベルの問題,卵巣レベルの問題,子宮レベルの問題を背景として,PMSとPEMSという特徴的な臨床像による2つの概念で説明できる.
著者
和田 充弘 Mitsuhiro Wada
出版者
同志社大学日本語・日本文化教育センター
雑誌
同志社大学日本語・日本文化研究 = Bulletin of Center for Japanese Language and Culture (ISSN:21868816)
巻号頁・発行日
no.18, pp.1-20, 2021-03

享保期においては、吉宗の教化政策だけでなく、民間でも生活防衛の観点から教化活動が行われ、石田梅岩の『都鄙問答』『倹約斉家論』や佚斎樗山の『田舎荘子』といった教訓書が作られた。そのうち『田舎荘子』は談義本の初期の段階に位置づけられ、これに類似する作品がその後数多く登場した。こうした系譜に属するのが、大坂の町人学者であると思われる田中友水子である。友水子の作品の一つに、寛保二年(一七四二)頃の成立が推定できる『世間銭神論』がある。本書は中国西晋の『銭神論』の存在を念頭に置き、金銭というきわめて現実的な話題をテーマに掲げている点で、特異な性格を有している。その内容をみてゆくと、梅岩からは儒教的な仁愛の社会的な実現と利得を追求する過程との両立が、樗山からは老荘的な天地の造化に従う生き方が引き継がれるが、両者が異なる形で重視した強固な心の自覚が欠けている。『銭神論』が銭の万能を説きながら、拝金主義の世相と共に金銭の存在を否定的に捉えていた点もみられない。金銭の流通と仁愛との一致を大きな柱とした上で、倹約、勤勉といった道徳、それに知恵や才覚を用いながら、人々が自力で生活を維持しさらに向上させてゆく可能性を説くところに『世間銭神論』の特徴が見いだせる。またその内容は『商売往来』と共通するところも多く、そうしたことが庶民教育と戯作文学や町人文化との間における、接点の所在を示唆しているのではないか。研究論文(Article)
著者
川瀬 良美 森 和代 吉崎 晶子 和田 充弘 松本 清一
出版者
一般社団法人 日本女性心身医学会
雑誌
女性心身医学 (ISSN:13452894)
巻号頁・発行日
vol.9, no.2, pp.119-133, 2004-07-31 (Released:2017-01-26)
被引用文献数
3

本研究の目的は,成熟期の女性のPMSの実態について即時的な記録から明らかにしようとするものである.成熟期の25歳以上45歳以下の141名の388月経周期について月経前期と月経期に記録された身体症状,精神症状そして社会的症状の合計51症状について検討した.月経前症状の頻度,平均値,最大値からみた主症状は,精神症状のイライラする,怒りやすい,身体症状の乳房の張りの3症状といえた.また特定の人に強く経験されている症状も認められた.対象者の諸属性のうち,年齢グループ別,出産経験有無別,就労形態別で検討したところ,それぞれの属性で有意に高い平均値を示す症状群が認められた.月経前期から月経期への推移について検討したところ,月経前期から月経へ減少または消失するというPMSの特徴を統計的に有意に示す症状は15症状であった.それら症状の相互関連をクラスター分析によって検討した結果,イライラ,怒りやすい,そして食欲増加という選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)に反応するような脳レベルの問題と考えられる症状のクラスターAと,乳房の張り,ニキビができやすいなど卵巣ホルモンが直接発症に関与している症状のクラスターBが見いだされた.また,クラスター分析と属性別の結果から出産経験の有無による相違が認められ,出産経験が症状と特異的に関連していることが示唆された.また,月経前期から月経期へ統計的に有意な増加を示す症状は12症状で,クラスター分析の結果,下腹痛など子宮レベルの問題を背景とした症状と精神症状と社会的症状で構成されたクラスターCが見いだされ,成熟期女性にも周経期症候群(PEMS)の概念で説明できる月経前症状が認められた.以上の結果から,本邦における成熟期女性の月経前症状は,脳レベルの問題,卵巣レベルの問題,子宮レベルの問題を背景として,PMSとPEMSという特徴的な臨床像による2つの概念で説明できる.
著者
和田 充弘 Mitsuhiro Wada
出版者
同志社大学日本語・日本文化教育センター
雑誌
同志社大学日本語・日本文化研究 = Bulletin of Center for Japanese Language and Culture (ISSN:21868816)
巻号頁・発行日
no.18, pp.1-20, 2021-03

享保期においては、吉宗の教化政策だけでなく、民間でも生活防衛の観点から教化活動が行われ、石田梅岩の『都鄙問答』『倹約斉家論』や佚斎樗山の『田舎荘子』といった教訓書が作られた。そのうち『田舎荘子』は談義本の初期の段階に位置づけられ、これに類似する作品がその後数多く登場した。こうした系譜に属するのが、大坂の町人学者であると思われる田中友水子である。友水子の作品の一つに、寛保二年(一七四二)頃の成立が推定できる『世間銭神論』がある。本書は中国西晋の『銭神論』の存在を念頭に置き、金銭というきわめて現実的な話題をテーマに掲げている点で、特異な性格を有している。その内容をみてゆくと、梅岩からは儒教的な仁愛の社会的な実現と利得を追求する過程との両立が、樗山からは老荘的な天地の造化に従う生き方が引き継がれるが、両者が異なる形で重視した強固な心の自覚が欠けている。『銭神論』が銭の万能を説きながら、拝金主義の世相と共に金銭の存在を否定的に捉えていた点もみられない。金銭の流通と仁愛との一致を大きな柱とした上で、倹約、勤勉といった道徳、それに知恵や才覚を用いながら、人々が自力で生活を維持しさらに向上させてゆく可能性を説くところに『世間銭神論』の特徴が見いだせる。またその内容は『商売往来』と共通するところも多く、そうしたことが庶民教育と戯作文学や町人文化との間における、接点の所在を示唆しているのではないか。
著者
今井 茂夫 和田 充弘 和田 丈晴 岩﨑 圭 片桐 律子 美濃部 安史 石井 聡子
出版者
紙パルプ技術協会
雑誌
紙パ技協誌 (ISSN:0022815X)
巻号頁・発行日
vol.72, no.11, pp.1243-1250, 2018 (Released:2019-02-01)
参考文献数
29

衛生ナプキンや使い捨ておむつのような衛生用品は,皮膚との長期間の接触で使用されるため,これらの製品に含まれる化学物質が人体に悪影響を及ぼすかどうかを確認することが重要である。衛生用品の主要材料であるパルプは,その白さを増すためにアルカリ薬剤による漂白が行われるが,製造メーカーの環境配慮の高まりによって二酸化塩素に基づくECF漂白が広く採用され,これまでの漂白方法に比べてクロロホルムおよびクロロフェノールの生成は大幅に減少した。しかも,ECF漂白プロセスにおける塩素化合物の発生および持続性に関する知識が蓄積されている。一方,衛生用品に塩素化合物が含まれていると,汗などの体液に溶けて皮膚に吸収される可能性があり,人的影響を把握するためにはその含有量を定量的に測定する必要がある。但し,塩素化合物の悪影響は化学種によって大きく異なるため,塩素の総量のみを計算することでは不十分であり,溶出液中の化学形態を特定することが重要となる。当社では,生理用ナプキンに使用されるパルプ中のダイオキシン類を分析し,たとえ毎日40年間使用されても大丈夫なよう,衛生用品の消費者の健康への影響を評価している。筆者らは,生理用品への漂白パルプの使用可否を決定すべく,皮膚暴露を想定した溶出試験を実施し,溶出された化合物の定量を含む化学形態ベースの定量分析フローを作成,安全性に関する評価方法を確立した。これにより,ECF漂白パルプに含まれる塩素化合物の量的な把握,及び化学的形態の解明に至り,当社製品が安全であることを確認した。本レビューでは,これらの研究成果を紹介する。
著者
松永 和秀 朝村 真一 森 一功 和田 充弘 磯貝 典孝
出版者
日本外科系連合学会
雑誌
日本外科系連合学会誌 (ISSN:03857883)
巻号頁・発行日
vol.36, no.5, pp.758-763, 2011 (Released:2012-10-25)
参考文献数
10

【目的】舌可動部亜全摘後,大胸筋皮弁にて即時再建を施行した舌癌患者9例の術後2カ月目における嚥下機能を評価した.【方法】評価は,ビデオ嚥下造影検査にて行った.【結果】嚥下時,皮弁と口蓋の接触が良好であった症例は6例で,不良は3例であった.喉頭蓋反転による気道閉鎖は7例が良好で,食道入口部の開大は9例とも良好であった.皮弁と口蓋の接触が良好であった6例は,咽頭残留が少なく,気管内侵入や喉頭侵入も認めなかった.皮弁と口蓋の接触が不良であった3例は,嚥下終了後咽頭残留を著明に認め,それに伴って気管内侵入もしくは喉頭侵入を認めた.【考察】気管内侵入や喉頭侵入の原因に,皮弁のボリューム不足による嚥下圧の低下が考えられた.早期嚥下機能の観点からも,舌可動部亜全摘では皮弁と口蓋が接触するように再建することが必要と考えられる.