著者
嘉田 由紀子
出版者
日経BP社
雑誌
日経ビジネス (ISSN:00290491)
巻号頁・発行日
no.1642, pp.56-59, 2012-05-21

5月5日に北海道電力泊原子力発電所3号機が定期検査のために停止したことで、国内で稼働する原発はなくなった。「原発ゼロ」を回避するため、政府は全国に先駆けて福井県の関西電力大飯原発3、4号機の安全性を妥当と判断、再稼働に向けて福井県や同県おおい町など原発を抱える自治体の同意を得るために動いていた。
著者
嘉田 由紀子 中谷 惠剛 西嶌 照毅 瀧 健太郎 中西 宣敬 前田 晴美
出版者
環境社会学会
雑誌
環境社会学研究
巻号頁・発行日
no.16, pp.33-47, 2010-11-10

滋賀県は,生活者の視点から環境問題をとらえる生活環境主義に立脚した治水政策として,"流域治水"を標榜している。流域治水を政策現場で展開するには,(1)生活者の経験的実感を総体としてとらえ科学的に定量化すること,(2)現場主義に基づくボトムアップ型の議論展開により部分最適ではなく全体最適を図る行政判断を導くこと,(3)既存の政策システムの否定ではなく不足を補完するという立場で新たな施策の必要性を説明すること,という3つのアプローチが必要となることがわかった。そのため,滋賀県では地形・気象・水文等の基礎調査や数値解析等を駆使し,生活者が実感できるリスク情報として,個別の"治水施設"の安全性(治水安全度)ではなく,生活の舞台である"流域内の各地点"の安全性(地先の安全度)を全県下で直接計量し,治水に関する政策判断の基礎情報として活用している。「地先の安全度」に関する情報を基に新しい治水概念を構築し,実際に政策への導入を図る場合には,住民,自治体など多様な当事者の幅広い合意が必要となる。行政組織にとっては,縦割りの部分最適が組織的責務となっており,担当以外の業務に自発的に手出しすることが難しい。そのため,生活現場の当事者である地域住民からボトムアップ型で議論を展開し,それらを判断材料とすることで,縦割りゆえの意思決定の困難さを克服しようとしている。また,新たな政策展開には,新旧両概念のwin-win関係を意識した問題解決が重要であることがわかってきた。そこで,流域治水に係る制度の設計にあたっては,新旧概念間に生じる対立構造のみが強調されすぎて本質的な議論が妨げられないように,既存治水計画を所与の条件とし,それらを補完する選択肢を追加する立場をとりながら政策の実現化を図っている。前記のような滋賀県での流域治水に関する一連の取り組みは,試行錯誤の積み重ねの結果であり,公共政策に生活者の経験的実感を取り入れるための貴重な先行事例となりうる。
著者
嘉田 由紀子
出版者
環境社会学会
雑誌
環境社会学研究 (ISSN:24340618)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.72-85, 1997-09-20 (Released:2019-03-26)

所有関係は、かつて人と人の関係としてとらえられてきたが、環境問題が社会問題化されるにつれて、人と自然のかかわりの中でアプローチする立場があらわれてきた。本稿は、これまで所有関係へのアプローチが観念的、制度的であった限界を越えて、人と自然のかかわりが埋め込まれている地域社会での日常的な生活実践の中から、所有意識とその実態を探る。方法は、写真による「資料提示型インタビュー」であり、余呉湖周辺を事例としてとりあげる。ここは、ひとつの村落が、湖、水田、河川から森林まで一括管理しているミニ盆地ともいえる複合生態系を有しており、生態的場の多様性にあわせた所有観をたどるのに格好の地域である。ここで明らかにされた所有関係の基本は、対象資源の生態的特性と空間、時間という組み合わせのなかで関係論的にきまってくる“重層的所有観”であり、「一物一権主義」という近代法の原則と大きく異なる。そこには〈総有〉ともいうべき基本原理が働いており、背景には、“労働”(働きかけ)と“資源の循環的利用”のなかで村落生活を維持しようとする生活保全の原理がはたらいている。
著者
嘉田 由紀子
出版者
環境社会学会
雑誌
環境社会学研究
巻号頁・発行日
no.3, pp.72-85, 1997-09-20
被引用文献数
2

所有関係は、かつて人と人の関係としてとらえられてきたが、環境問題が社会問題化されるにつれて、人と自然のかかわりの中でアプローチする立場があらわれてきた。本稿は、これまで所有関係へのアプローチが観念的、制度的であった限界を越えて、人と自然のかかわりが埋め込まれている地域社会での日常的な生活実践の中から、所有意識とその実態を探る。方法は、写真による「資料提示型インタビュー」であり、余呉湖周辺を事例としてとりあげる。ここは、ひとつの村落が、湖、水田、河川から森林まで一括管理しているミニ盆地ともいえる複合生態系を有しており、生態的場の多様性にあわせた所有観をたどるのに格好の地域である。ここで明らかにされた所有関係の基本は、対象資源の生態的特性と空間、時間という組み合わせのなかで関係論的にきまってくる"重層的所有観"であり、「一物一権主義」という近代法の原則と大きく異なる。そこには〈総有〉ともいうべき基本原理が働いており、背景には、"労働"(働きかけ)と"資源の循環的利用"のなかで村落生活を維持しようとする生活保全の原理がはたらいている。
著者
清家 久美 MONTE CASSIM 千賀 裕太郎 嘉田 由紀子
出版者
立命館アジア太平洋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

1.本研究の目的と計画本研究は、(1)現在までの国内における地域づくり(まちづくり・村づくり)の状況を把握すると共に、(2)いくつかの手法-<地元学>手法とKJ法-による地域づくりによる持続可能な地域環境システム構築の可能性の限界を検討し、(3)どのような方法ないしは視点によって地域を考えていくことが、地域づくりに最有効であるかを検討することを目的としている。をおこなっていく。2.研究計画と到達点上記の目的のためには具体的に、(1)研究的視点による地域づくり、まちづくり、村づくりの背景と先行研究の整理、ならびに事例研究の検討(2)実践的視点による、地域づくり、まちづくり、村づくりの事例整理と検討(3)研究的視点による<地元学>手法の明確化と方法論的検討(4)実践的視点による<地元学>手法の機能と問題点の検討(5)地元学についての追跡調査(6)総括を研究的結論を計画していた。到達点最終到達点として、以下の6つをあげることができる。(1)地元学手法による調査:3年間の調査実績(2)調査法の評価・位置づけ:地元学調査法についての評価と部分的モデル化(3)地元学周辺でおこっている「ばかん巣プロジェクト」について:「ばかん巣プロジェクト」の実態把握とその議事録(4)NPOの活動:本研究の中心的テーマ・いくつかのNPO活動に見られる地域活性化の実態把握とその分析・学会発表(5)観光への展開:由布院と別府の観光についての論文化(6)教育への展開:「地元学」の教育への応用・過去5年間にわたる「学生150人による地元学調査」の実施とその総括