2 0 0 0 OA 逆欠如理論

著者
園田 英弘
出版者
日本教育社会学会
雑誌
教育社会学研究 (ISSN:03873145)
巻号頁・発行日
vol.49, pp.9-33, 1991-10-20 (Released:2011-03-18)
被引用文献数
4
著者
白幡 洋三郎 村井 康彦 井上 章一 小野 芳彦 山地 征典 園田 英弘 村井 康彦 飯田 経夫 山折 哲雄 イクトット スラジャヤ 長田 俊樹 白幡 洋三郎 セルチュク エセンベル
出版者
国際日本文化研究センター
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1994

平成6年度は、イスラム文化圏における日本の生活文化の受容調査であり、対象国としてトルコを選び、イズミール、アンカラ、イスタンブールを中心に調査を行った。トルコはイスラム文化圏とはいえ、近代化に一定の成功をおさめた国であり、生活用品の分野においては先進国と同様の工業製品がみられるものの、日本製品はきわめて少なかった。また親日国であるといわれているにもかかわらず、教養・実用・趣味・娯楽等の分野においても日本にかかわりのあるものは意外なほどに見つからなかった。むしろ西洋、とくにドイツとの関係が著しいことが確認できた。このことにより、トルコをイスラム文化圏と見るとともに、西洋文化圏もしくは西洋文化に強く左右されている文化圏と見て、日本文化とのかかわりを考察すべきであろう。平成7年度の対象地域は南アジア・東南アジアであった。ベトナムにおいては、ベトナム戦争終結後、社会主義政権が新たな経済政策をとり、その安定的発展によって民衆の生活に新しい展開が生まれている。その新しい展開の中に日本の伝統的な文化に属す茶道・華道なども、一定の受容が見られる。しかしとりわけ日本の生活文化としては、現代の大衆文化と見てよい電化製品の普及やカラオケ・コンピュータゲームなど娯楽分野での受け容れがきわめて顕著に見られた。また、もともとは中国経由で入ってきた盆栽が、日本語のBONSAIとして広まっている。すなわち中国経由の既存文化が、外からの刺激(日本の文化)によって新しい展開を見せている点で注目される。文化の盛衰を構造的に分析する材料として重要だと考えられる。またインドにおいては、日本の生活文化の進出はきわめて低調であり、大衆文化としてほとんど受け入れられていないことがわかった。華道や俳句では、知識人を核にした富裕層にのみ愛好会や同好会の形で存在している程度である。これは国民の所得水準によって規定されているものと考えられ、日本の生活文化の普及を大衆レベルでの異文化受容と考えた場合、経済的な要因が大きな困難となる実例であろう。タイにおいては、広い分野での日本の生活文化の受容が見られる。とくに日本の食品や生活用品はすでに広く生活の中に定着している。日本食やインスタントめんなどは、日本の手を放れ自前で独自の加工を施したものも豊富に出回っている。マンガは日本のものが翻訳されて各種出版されており、タイ人の手によるタイ語ならびに中国語の漫画が出回るほどになっている。娯楽や実用・趣味の分野でも日本の生活文化は広く受容されていることがあきらかとなった。平成8年度の調査地域である旧社会主義圏では、生活必需品のレベルでの日本の生活文化受容が見られたものの、それ以外での、「教養」「精神」「趣味」「娯楽」など、経済的な余裕に左右される分野での受容は乏しいことが明らかとなった。この地域では、社会主義政権の崩壊後、生活は不安定になったが、一方で西側諸国からの物資・情報が、以前より広範に流入している。従って、旧社会主義政権下にくらべて「異文化」の受容は進んではいるものの、その範囲は狭い。テレビ、冷蔵庫、オ-ディオ機器などの電化製品では、高価な日本製はあこがれの的だが、日本製を装ったものが市場に流通しており、特異な日本の生活文化受容が見られる。社会主義政権の崩壊に急激な暴力革命が伴ったル-マニアでは、経済復興が遅れており、国民生活に余裕がなく、日本製品に限らず西側の製品全般が贅沢品とみなされ、これらの需要は低迷している。華道・茶道・盆栽・俳句などの教養分野は、わずかに一握りのインテリ層に受容され、禅や宗教など精神文化の領域は表面にはまったく現れていない。日本の生活文化を大衆レベルでの海外への進出からとらえると、受容する側の生活水準に規定されることが明らかになった。したがって、文化の通文化性に関しても、その文化項目固有の「通文化性」は、受け入れる側の経済的、文化的状況に大きく左右されるといえるであろう。
著者
園田 英弘
出版者
国際日本文化研究センター
雑誌
日本研究 (ISSN:09150900)
巻号頁・発行日
no.7, pp.p71-87, 1992-09
被引用文献数
1

近世の京都図の分析を通して、「洛中」と「洛外」の関係や、「洛外」のより詳細な性格などを明らかにすることを目的としている。「洛外」は、性格の異なる緑地とのうちが存在し、近世の京都図の中では農地の部分が極端に縮小されて描かれていた。また神社仏閣・池・野原・丘・川などを中心とする緑地の部分は、京都が近世後期に古都化するのに対応して、しだいに拡大する傾向にある。近世以前から「洛中」と「洛外」は一組のものと考えられてきたが、それは密集した「洛中」の都市生活と、それを補完する不可欠の部分としての緑地のことであった。そして、「洛中」のすぐ外に広がる農地は、あたかも存在しないような空間として地図上には位置付けられていた。このような地図上の歪みこそが、ミヤコ意識の空間構造を表現しているのである。
著者
園田 英弘
出版者
国際日本文化研究センター
雑誌
Historical Consciousness, Historiography, and Modern Japanese Values
巻号頁・発行日
pp.113-127, 2006-11-30

Historical Consciousness, Historiography, and Modern Japanese Values, 2002年10月末-11月, カナダ, アルバータ州バンフ
著者
村井 康彦 小野 芳彦 コーニッキー ピーター 白幡 洋三郎 園田 英弘 パンツァー ペーター スミス ヘンリー 飯田 経夫 山折 哲雄 KORNICKI Peter SMITH Henry PANTZER Peter ピーター コーニッキー ペーター パンツァー ヘンリー スミス
出版者
国際日本文化研究センター
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1992

本年度の調査は、17世紀まで世界の先進文化をリ-ドしていたラテンヨーロッパ、特にスペイン・ポルトガルとそれらによって植民地化されていたラテンアメリカにおける日本文化の現状を調査する事を中心軸に据えた。また先進国の中でも、調査をやりのこしていたアメリカ合衆国を加えた。スペイン・ポルトガルの両国は、現在ヨーロッパ先進国に対する農業生産物の供給国として、むしろ開発途上国的な色彩を持っている。そこで、日本の工業製品はこの両国との競合関係にはなく、日本製品の出超の事態にある。家電製品、自動車等は、いうまでもなくスペインやポルトガルの製品が日本には皆無であり、日本製品のみが両国に進出している。しかしながら、ヨーロッパ先進諸国、ドイツ・イギリス・フランスの製品と比較すれば、日本製品の進出は少ない。現地調査の結果、日本の生活文化として特に注目に値するのは、テレビゲーム、盆栽、テレビアニメの3つでであることがわかった。テレビゲームは、ポルトガル・スペインのおもちゃ屋の店頭でもっとも目立つ場所に飾られており、他国の製品の出番はほとんどないといってよい。じじつジェトロのマドリード支部での聞き取り調査でも現在の日本・スペイン間の貿易に、テレビゲームが占める割合は他の電気製品・工業製品を大きく圧倒するとの事であった。盆栽は、ヨーロッパ先進諸国でも相当の普及を遂げているが、ラテンヨーロッパでは現地の独自の盆栽文化が育っている事が特徴である。すなわち、ドイツ・フランス・イギリスでは、どちらかといえばまだ日本の伝統的な盆栽文化が尊重されており、愛好家は日本趣味の持ち主や日本通である事が多いのに対して、ラテンヨーロッパでは盆栽協会の会長以下幹部を現地人が占めており、盆栽愛好が庶民層にまで広がっている様子がうかがえた。またブラジルの調査でも、多数の日系人の存在にもかかわらず、盆栽協会の活動にブラジル人が進出しており、盆栽が庶民層に普及している事がはっきりした。先進ヨーロッパ諸国と違って、盆栽がもはやエキゾチシズムの対象でもなく、日本趣味の対象でもなくなっている。すなわち本当に現地に根を下ろした生活文化に育っている事は注目に値する。また、茶道・華道とは違って日本人の枠を離れて現地化しつつある点に盆栽文化の特徴があるようだ。テレビアニメはラテンヨーロッパでは極めて頻繁に放映されている日本製の番組である。朝の子供番組の時間帯には毎日2、3本の日本製アニメが吹き替えで放映されている。先進ヨーロッパのうちドイツ・イギリスではほとんど放映がみられないのに比較してフランスでは頻繁に放映されている。テレビアニメに関しては先進ヨーロッパ対開発途上的ラテンヨーロッパという対照がみられない。むしろカトリック圏(スペイン・ポルトガル・フランス、そして未調査ではあるが現地情報によればイタリアも含めてよい)では日本製アニメが多数放映されているのに対してプロテスタント圏ではほとんど放映がないと分析するのがよいだろう。その原因は、視聴者の好みから来るよりは、放映する側の思想にあるのではないかと考えられる。すなわちプロテスタント圏では子供向けに、全体として堅い教育番組が多いのに対して、カトリック圏では娯楽番組にも十分な放映時間を割いているという事情が考えられる。アメリカ合衆国の日本生活文化ではやはり食品が注目に値する。ドイツやイギリスでも同じであるが、インスタント食品としてのカップヌードルがこれらの国では相当の進出を見せている。ところがスウェーデンではほとんどこの種のインスタント食品はみられなかった。日本企業の関心の持ち方にも左右されるであろうが、むしろ、現地の食習慣が進出の多少に影響しているものと考えられる。