著者
桑原 昌則 近藤 史明 濱田 知幸 高橋 純一 竹中 奈苗 吉本 光広 宮野 伊知郎 北岡 裕章 土居 義典
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.46, no.7, pp.893-899, 2014 (Released:2015-07-13)
参考文献数
7

症例は独居の80歳, 女性. 2012年10月下旬, 全身倦怠感, 食欲不振を主訴に近医を受診し経過観察入院となった. 入院後, 末梢静脈からの点滴による治療等で経過をみていたが, 前医入院第13病日より意思の疎通が困難となり, 第17病日には収縮期血圧が60mmHgまで低下したため当院救急搬送となった. 来院時, 血圧84/47, 脈拍数119/分で, 意識レベルはE3V4M5であり, 集中治療室にて治療管理となった. 心エコーでは左室収縮能はほぼ正常であり, 心原性ショックは否定的と思われた. 動脈血液ガスで, pH 7.311とアシドーシスを認め, 乳酸も130mg/dLと高値であったためビタミンB1欠乏の可能性を考慮し, フルスルチアミン150mgの静注後, フルスルチアミンの持続点滴を開始した. 入院翌日には血圧は安定し, 意識レベルも改善した. 後日, ビタミン投与前のビタミンB1値が8ng/mLと著明な低値であることが判明した. 第2病日から第6病日までフルスルチアミン50mg/日の持続点滴を行い, 第7病日よりフルスルチアミン100mg/日の内服投与により, 血圧, 意識レベルは安定して経過した. 今回, 独居の高齢女性で, ビタミンB1欠乏によるショック, 意識障害をきたした症例を経験したので報告する.
著者
濱川 公祐 西村 光太郎 矢部 敏和 土居 義典
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.45, no.7, pp.798-803, 2013-07-15 (Released:2014-09-16)
参考文献数
16

症例は,40歳代,女性.高血圧,脂質異常症で内服加療中であった.数年前からときどき胸痛を認めたが,心電図では明らかな異常を指摘できなかった.2009年4月の夜間に強い胸痛を数回認め他院に入院となった.冠動脈造影では狭窄病変はなく,エルゴノビン負荷試験でも有意な冠攣縮は認めなかった.2010年9月に虚血性ST-T変化を伴う強い胸痛が出現し,その後胸痛の頻度が増加した.微小血管狭心症と考えニフェジピンCR,ニコランジル,一硝酸イソソルビド,硝酸イソソルビド貼付薬を併用するも症状は改善せず,胸痛時のニトログリセリン舌下も効果は乏しかった.しかし,ニフェジピンCRをジルチアゼムRに変更したところ胸痛の頻度が減少し,さらに,ベラパミルを追加したところ胸痛はほぼ消失した.微小血管狭心症が疑われCa拮抗薬の変更が著効した1例であり文献的考察を加えて報告する.
著者
齊藤 昇 依岡 秀典 江渕 喜徳 土居 義典 小沢 利男 森木 利昭 原 弘
出版者
一般社団法人 日本動脈硬化学会
雑誌
動脈硬化 (ISSN:03862682)
巻号頁・発行日
vol.15, no.4, pp.997-1003, 1987-08-01 (Released:2011-09-21)
参考文献数
13

One female inpatient, K. N., aged 57 years, suffered from liver cirrhosis, hypothyroidism, hypoadrenalism and bleeding tendency. After admission she received the administrations of diuretics such as furosemide and spironolactone to improve her anasarca, and also those of levothyroxine and prednisolone to fill up the deficient thyroid or adrenal functions.Slight to moderate elevations of transaminase activities, alkaline phosphatase activity of total bilirubin and increased gamma globulin concentrations were observed in this case, while low levels of triiodothyronine, total thyroxine, cortisol or urinary 17-hydroxycorticoid.Serum LCAT activity was extremely decreased, that was, 16nmol/ml/hr. She also had extremely low levels of serum lipids or apoproteins. For examples serum total cholesterol was 16mg/dl, triglyceride 18mg/dl, HDL-cholesterol 8mg/dl, phospholipid 27mg/dl, apoproteins A-I, C-II or C-III 0mg/dl, A-II 2.8mg/dl, B 10mg/dl and E 0.8mg/dl. VLDL-Chol, VLDL-TG, VLDL-PL and LDL-TG were smaller in the proportions of lipoprotein fractions, while HDL-TG, LDL-Chol and LDL-PL larger.One rare cirrhotic case with extremely low levels of serum lipids, apoproteins or lipoprotein fractions were shown in this article.
著者
斧田 尚樹 野並 有紗 高橋 重信 矢部 敏和 土居 義典
出版者
Japan Heart Foundation
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.44, no.4, pp.485-490, 2012

症例は50歳, 女性. 長距離バス(京都—高知) 下車直後に突然, 意識消失, 皮膚蒼白となり当院に救急搬送された. 搬送時, ショック状態(血圧84/50mmHg)および低酸素血症(SpO<sub>2</sub> 80%: 酸素10L投与下)であった. 心エコーにて右心負荷所見がみられ, 胸部造影CTにて両側肺動脈に血栓像を認め急性広範型肺血栓塞栓症と診断した. 一時, 心肺停止となったがモンテプラーゼが著効し, 後遺症なく独歩にて自宅退院した.
著者
山崎 文靖 浜重 直久 浜松 晶彦 田村 明紀 楠目 修 松林 公蔵 土居 義典 小澤 利男
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.79, no.1, pp.100-101, 1990-01-10 (Released:2008-06-12)
参考文献数
7
被引用文献数
3 2

症例は7年来の覚醒剤使用歴のある32才,男性, 1年半ぶりに覚醒剤使用の1日後にショック状態となり救急受診した.来院時, CPK・LDHの著明上昇と心エコー図上高度のびまん性壁運動低下がみられ,心筋炎と考え治療したが,急性期のCPK-MBは2%のみであり,全身状態改善後壁運動は著明に改善した.覚醒剤の急性中毒による横紋筋融解・心筋障害・脱水などがあいまって,特異な病像を呈したものと考えられた.
著者
野並 有紗 斧田 尚樹 近藤 史明 土居 義典
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.42, no.9, pp.1201-1206, 2010 (Released:2012-04-21)
参考文献数
12

症例は80歳, 男性. 約15年前に交通事故にて左下肢を骨折し, 以後グリップタイプの杖(右手用) を歩行時に使用している. 今回, 不安定狭心症疑いにて冠動脈造影を施行した. 右橈骨動脈を穿刺したが, カテーテルが上腕動脈内で捻転し, カテーテルのみを抜去することが不可能となりシースごと抜去した. 引き続き右大腿動脈を穿刺し, 左前下行枝#7の高度狭窄病変に薬剤溶出性ステントを留置した. 20日後に外来受診した際, 右橈骨動脈に約30mm大の拍動性の腫瘤を認め, 血管超音波検査にて右橈骨仮性動脈瘤と診断した. 瘤径が大きいことから超音波プローベによる圧迫では不十分であるうえに, 手技自体による破裂の危険が危惧され手術治療を選択した. 仮性動脈瘤の原因として, カテーテル変形箇所での穿刺孔拡大, 止血不十分および杖歩行による穿刺部の荷重が推察された.