- 著者
-
土橋 慶章
- 出版者
- 神戸大学
- 雑誌
- 奨励研究
- 巻号頁・発行日
- 2010
大学の社会的責任に関する取り組み状況を調査のうえ、先進事例として以下2大学の詳細調査を行った。同志社大学(学校法人同志社)は社会的責任の視点を重視した法人全体の事業報告書を作成・発行している。理事会直轄で4課長が実務担当として作成・取り毒とめに当たる。当初はアニュアルレポートに社会的責任の視点を取り入れた形で、2006年度版からは社会的責任報告を明示し、各種取り組みや財務の概要を掲載しており、近年企業において見受けられるようになってきた、財務情報・非財務情報を総合的に報告する統合レポートのような形である。重要視するステイクホルダーとして、学生・保護者、政府・行政(納税者である国民)、寄付者を挙げ、実績だけでなく将来の事業計画やネガティブ情報の掲載、詳細なデータ集の別冊添付、迅速な発行・ウェブサイトへの掲載など、ステイクホルダーの望むものを強く意識した作りがなされている。麗澤大学(学校法人廣池学園)は2010年に発効されたISO26000(社会的責任規格)の活用をいち早く決定し、対外的に宣言した。CSR研究の第一人者で現在学部長を務める教員の提案を機に、賛同する職員が参画し、理事長・学長のコミットメントのもと、推進委員会も発足し、法人全体にわたる取り組みになっている。7中核主題(組織統治、人権、労働慣行、環境、事業慣行、消費者課題、コミュニティ参画・開発)と5活動分野のマトリクス表で課題を整理のうえ、13に区分したステイクホルダーとの対話を踏まえつつ、重要事項を特定している。事項ごとに担当を決め、進捗管理を行うためのフォーマットも完成しつつあり、今後の経過が大いに期待される。大学の社会的責任に関する取り組みは初期段階にあり、上記について「大学の社会的責任に関するグッドプラクティス」としてまとめたことは、今後、大学の社会的責任に関して取り組もうとする者にとって参考となろう。