- 著者
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山下 耕治
赤井 伸郎
福田 健一郎
関 隆宏
- 出版者
- 財務省財務総合政策研究所
- 雑誌
- フィナンシャル・レビュー (ISSN:09125892)
- 巻号頁・発行日
- vol.149, pp.202-223, 2022 (Released:2023-02-10)
- 参考文献数
- 11
本稿の目的は,水道管路の老朽化や人口減少の進行は,家事用の水道料金にどのように反映されるのか,さらには,口径別か用途別かという料金体系の違いは,水道料金の格差を生む要因であるのかについて実証的に明らかにすることである。パネルデータを用いた検証から,次のようなファクト・ファインディングを得た。 第一に,老朽化した水道管路の割合が高い事業体ほど,家事用の水道料金は有意に高くはなるが,そのパラメータはゼロに近く極めて小さいことを確認した。すなわち,管路の老朽化を見据えた水道料金の設定・改定は機能していないことを示唆するものである。第二に,口径別料金体系を採用している事業体では,用途別の事業体と比較して,家事用の水道料金は高い水準にある。さらに,口径別の事業体では,老朽化した管路の割合が高いほど水道料金が高いことが確認された。すなわち,用途別の事業体では,「家事用」という区分が明示的に存在することで,家事用の水道料金を高い水準に設定・改定することへの反発を招くなど意思決定上の困難性が存在するのかも知れない。第三に,口径別料金体系を採用している事業体は収益性が高く,用途別の事業体は収益性が低いことを確認した。 地方公営企業である水道事業は,独立採算制が原則で,原価に見合った料金設定・改定が求められている。用途別の料金体系を採用することで,水の使用目的により水道料金が異なる状況は,原価に見合った料金設定が機能していないことを意味する。用途別の料金体系は,施設の老朽化や事業の収支を見据えた適正な水道料金の設定・改定を阻む制度的要因になっていると思われ,持続可能性の観点からは,口径別料金体系の導入が望まれる。