著者
土田 靖久 大江 孝明 岡室 美絵子
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.110, no.7, pp.489-495, 2015 (Released:2018-05-10)
参考文献数
25

梅酒は製造工程がシンプルであるため,原料ウメの特性や状態が梅酒品質に及す影響は大きい。しかしながら,この分野での研究例は未だ少なく,十分な知見が蓄積されていないのが実情である。 本稿では,原料ウメの栽培条件とそのウメを使用して製造した梅酒品質との関連性について,これまでの試験研究結果を含め貴重なデータをご紹介いただいている。梅酒製造に関心ある方は,是非ご一読いただきたい。
著者
土田 靖久 廣畑 佳和 榎本 雄司 下岡 三穂 廣畑 賢一
出版者
和歌山県農林水産部
雑誌
和歌山県農林水産試験研究機関研究報告 = Bulletin of the Wakayama Prefectural Experiment Stations of Agriculture, Forestry and Fisheries (ISSN:21875634)
巻号頁・発行日
no.4, pp.77-84, 2016

ウメ'南高'を段ボール,アルミ蒸着袋,発砲スチロール等の資材を用いた数種の梱包方法で3~5℃の温度条件で香港へ輸送し,品質変化を調査した。また,現地では設備の都合により測定できない果肉硬度およびエチレン生成量を,香港輸送と同じ条件下でうめ研究所において測定した。集荷日から香港での販売終了日までの15日間は,いずれの梱包方法でも果実の黄変,重量減少およびエチレン生成および低温障害果の発生が抑えられた。このことから,香港への果実輸送は,慣行の段ボール箱で対応可能と考えられた。しかし,それ以降は段ボールのみでの梱包では黄化,果実硬度の低下,エチレン生成量の増加および低温障害果の発生等が認められた。一方アルミ蒸着袋で段ボール箱あるいは果実を密封したものについては香港での販売終了日の1週間後でも品質が保持されていた。このことから,香港よりも輸送に時間がかかる地域への輸送には,アルミ蒸着袋の併用が有効と考えられた。
著者
大江 孝明 根来 圭一 岡室 美絵子 土田 靖久 細平 正人
出版者
近畿中国四国農業研究協議会
雑誌
近畿中国四国農業研究 (ISSN:13476238)
巻号頁・発行日
no.14, pp.118-122, 2009-03

ウメのもつ品質成分を出来るだけ活かした梅酒およびウメ糖抽出液(梅ジユース原液)の加工方法について検討するとともに、糖添加量の削減が品質成分の抽出量に及ぼす影響について検討した。果実の品質成分を十分に梅酒中に抽出するためには果実1kgあたり0.6kg程度の砂糖を添加するのがよいと考えられた。また、原料果実を冷凍した後に漬け込むことで、梅酒およびウメ糖抽出液の品質が高まり、ウメ糖抽出液製造における砂糖溶解に要する期間が短縮され、梅酒の砂糖量を削減できた。ウメ糖抽出液の製造にあたっては、核を抜き核と果肉をともに漬け込むことで、通常の漬け込みに比べて作業時間を要するものの、より品質が向上し、砂糖溶解に要する期間が短縮されることがわかった。さらに、冷凍や核抜きによる前処理には、収穫後期の果実における抽出量減少を改善する効果が認められた。
著者
土田 靖久 大江 孝明 岡室 美絵子
出版者
日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.110, no.7, pp.489-495, 2015-07

機能性成分については,疲労回復効果や血流の改善効果を有するクエン酸などの有機酸,糖アルコールの一種で整腸作用を有するソルビトールおよび抗疲労作用や血圧上昇抑制作用を有するポリフェノール類といった梅酒に豊富な成分やフリーラジカル消去活性で示した抗酸化能を対象としてきた。香気成分については,'甲州小梅'でγ-デカラクトン,δ-デカラクトンが甘い香りに大きく寄与することが報告されていたが,全国の60%以上を生産する和歌山県での主力品種'南高'に関する報告はほとんどなかった。'南高'果実は,完熟期が近づくとフルーティーな香りを放ち,このような果実を梅酒原料として用いると,モモ様のフルーティーな香りをもつ梅酒に仕上がることが知られている。よって,我々は'南高'を原料とした梅酒の香気成分を調査し,特徴的な芳香成分の一部が,γ-デカラクトン(モモ様),δ-デカラクトン(モモ様),酪酸エチル(パイナップル様)および酢酸ブチル(リンゴ様)であり,青っぽい香りが安息香酸エチル(シバ様)であることを明らかにした。その上で,これら香気成分や梅酒の苦味成分として報告されているプルナシンおよびシュウ酸を対象として栽培方法との関係を調査してきた。これらの調査の中で,原料果実の収穫時期や追熟処理が機能性成分,香気成分および苦味成分含量に大きく影響することを明らかにしてきた。一方で,果実品質は栽培環境にも影響を受けることが知られており,リンゴ果実では芳香成分量に影響することが報告されている。よって,梅酒についても園地条件などの栽培環境により香気成分量等に違いが生じることが予想される。そこで,我々は現在,栽培環境と梅酒品質との関係を調査しており,ここでは,光条件や土壌条件といった栽培要因が梅酒の品質に及ぼす影響について紹介する。