著者
土田 靖久 大江 孝明 岡室 美絵子
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.110, no.7, pp.489-495, 2015 (Released:2018-05-10)
参考文献数
25

梅酒は製造工程がシンプルであるため,原料ウメの特性や状態が梅酒品質に及す影響は大きい。しかしながら,この分野での研究例は未だ少なく,十分な知見が蓄積されていないのが実情である。 本稿では,原料ウメの栽培条件とそのウメを使用して製造した梅酒品質との関連性について,これまでの試験研究結果を含め貴重なデータをご紹介いただいている。梅酒製造に関心ある方は,是非ご一読いただきたい。
著者
大江 孝明 櫻井 直樹 山崎 哲弘 奥井 弥生 石原 紀恵 岡室 美絵子 細平 正人
出版者
園芸学会
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, pp.273-279, 2012 (Released:2013-10-08)

ウメ果実の追熟条件の違いが梅酒中の香気成分および苦み成分に及ぼす影響について調査した。におい嗅ぎ分析により,熟した果実を原料とした梅酒の芳香香気に関与する成分の一部がγ-デカラクトン,δ-デカラクトン,酪酸エチル,酢酸ブチルであると判断された。これら芳香香気成分量は,より収穫を遅らせた果実を用いた方が多く,原料果実を20℃で4日,30℃で3日追熟すると高まった。梅酒の青っぽい香気に関与する成分と判断された安息香酸エチルは,20℃では5日以内,30および35℃では3日以内の追熟により,収穫直後に漬けた場合と比べて同程度かそれ以下で推移した。また,苦みに関与するプルナシンおよびシュウ酸含量は20℃で4日,30℃で3日追熟すると減少した。以上のことから,原料果実の収穫時期や貯蔵条件により梅酒加工品の香気成分および苦み成分が大きく変わることが確認され,芳香香気を高め,青っぽい香気成分や苦み成分を抑えるためには,より熟した果実を収穫して,20℃で4日もしくは30℃で3日追熟させてから加工するのが良いと考えられた。
著者
大江 孝明
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.64, no.6, pp.288-291, 2016-06-20 (Released:2016-12-27)
参考文献数
5

ウメ加工品の食味や香りは原料果実により左右されることから,筆者らは原料の違いと加工品品質との関係について梅酒を中心に調査した。その結果,熟度や大きさ等により食味成分や保健機能にかかわる有用成分量が大きく変動することを明らかにするとともに,これら成分量が多くなる原料果実の選び方や加工方法を明らかにした。
著者
大江 孝明 根来 圭一 岡室 美絵子 土田 靖久 細平 正人
出版者
近畿中国四国農業研究協議会
雑誌
近畿中国四国農業研究 (ISSN:13476238)
巻号頁・発行日
no.14, pp.118-122, 2009-03

ウメのもつ品質成分を出来るだけ活かした梅酒およびウメ糖抽出液(梅ジユース原液)の加工方法について検討するとともに、糖添加量の削減が品質成分の抽出量に及ぼす影響について検討した。果実の品質成分を十分に梅酒中に抽出するためには果実1kgあたり0.6kg程度の砂糖を添加するのがよいと考えられた。また、原料果実を冷凍した後に漬け込むことで、梅酒およびウメ糖抽出液の品質が高まり、ウメ糖抽出液製造における砂糖溶解に要する期間が短縮され、梅酒の砂糖量を削減できた。ウメ糖抽出液の製造にあたっては、核を抜き核と果肉をともに漬け込むことで、通常の漬け込みに比べて作業時間を要するものの、より品質が向上し、砂糖溶解に要する期間が短縮されることがわかった。さらに、冷凍や核抜きによる前処理には、収穫後期の果実における抽出量減少を改善する効果が認められた。
著者
土田 靖久 大江 孝明 岡室 美絵子
出版者
日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.110, no.7, pp.489-495, 2015-07

機能性成分については,疲労回復効果や血流の改善効果を有するクエン酸などの有機酸,糖アルコールの一種で整腸作用を有するソルビトールおよび抗疲労作用や血圧上昇抑制作用を有するポリフェノール類といった梅酒に豊富な成分やフリーラジカル消去活性で示した抗酸化能を対象としてきた。香気成分については,'甲州小梅'でγ-デカラクトン,δ-デカラクトンが甘い香りに大きく寄与することが報告されていたが,全国の60%以上を生産する和歌山県での主力品種'南高'に関する報告はほとんどなかった。'南高'果実は,完熟期が近づくとフルーティーな香りを放ち,このような果実を梅酒原料として用いると,モモ様のフルーティーな香りをもつ梅酒に仕上がることが知られている。よって,我々は'南高'を原料とした梅酒の香気成分を調査し,特徴的な芳香成分の一部が,γ-デカラクトン(モモ様),δ-デカラクトン(モモ様),酪酸エチル(パイナップル様)および酢酸ブチル(リンゴ様)であり,青っぽい香りが安息香酸エチル(シバ様)であることを明らかにした。その上で,これら香気成分や梅酒の苦味成分として報告されているプルナシンおよびシュウ酸を対象として栽培方法との関係を調査してきた。これらの調査の中で,原料果実の収穫時期や追熟処理が機能性成分,香気成分および苦味成分含量に大きく影響することを明らかにしてきた。一方で,果実品質は栽培環境にも影響を受けることが知られており,リンゴ果実では芳香成分量に影響することが報告されている。よって,梅酒についても園地条件などの栽培環境により香気成分量等に違いが生じることが予想される。そこで,我々は現在,栽培環境と梅酒品質との関係を調査しており,ここでは,光条件や土壌条件といった栽培要因が梅酒の品質に及ぼす影響について紹介する。
著者
大江 孝明 林 恭平 桑原 あき
出版者
和歌山県農林水産総合技術センター
雑誌
和歌山県農林水産総合技術センター研究報告 (ISSN:13455028)
巻号頁・発行日
no.7, pp.55-61, 2006-03

ウメ果実の品質成分含量、紅色着色、硬度の点で育種上有用な品種を探索した。1.達観による青果収穫果実の比較において、品質成分含量で'二青梅'、'薬師'、'児玉'、'地蔵'、'西洋梅'、'大平'、'美里'が、紅色着色で'紅サシ'、'東地紅'、'白王小梅'、'前沢小梅'、'竜峡小梅'、'谷口紅'が有望と考えられた。2.小梅とアンズ系の品種を除いた普通種のウメでは、青果収穫時期が遅い品種ほどクエン酸含量が高い傾向が見られた。3.青果収穫果実で有望と考えられた品種のうち、収穫労力や梅干加工適性を考慮し、普通種のウメに絞って品質成分含量や果実形質の推移を詳細に調査した結果、'地蔵'と'二青梅'が有望と考えられた。特に'地蔵'はβ-カロテンやソルビトール含量が突出して高く、外観上鮮やかなオレンジ色を呈する特徴を有していた。