- 著者
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土田 靖久
大江 孝明
岡室 美絵子
- 出版者
- 日本醸造協会
- 雑誌
- 日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
- 巻号頁・発行日
- vol.110, no.7, pp.489-495, 2015-07
機能性成分については,疲労回復効果や血流の改善効果を有するクエン酸などの有機酸,糖アルコールの一種で整腸作用を有するソルビトールおよび抗疲労作用や血圧上昇抑制作用を有するポリフェノール類といった梅酒に豊富な成分やフリーラジカル消去活性で示した抗酸化能を対象としてきた。香気成分については,'甲州小梅'でγ-デカラクトン,δ-デカラクトンが甘い香りに大きく寄与することが報告されていたが,全国の60%以上を生産する和歌山県での主力品種'南高'に関する報告はほとんどなかった。'南高'果実は,完熟期が近づくとフルーティーな香りを放ち,このような果実を梅酒原料として用いると,モモ様のフルーティーな香りをもつ梅酒に仕上がることが知られている。よって,我々は'南高'を原料とした梅酒の香気成分を調査し,特徴的な芳香成分の一部が,γ-デカラクトン(モモ様),δ-デカラクトン(モモ様),酪酸エチル(パイナップル様)および酢酸ブチル(リンゴ様)であり,青っぽい香りが安息香酸エチル(シバ様)であることを明らかにした。その上で,これら香気成分や梅酒の苦味成分として報告されているプルナシンおよびシュウ酸を対象として栽培方法との関係を調査してきた。これらの調査の中で,原料果実の収穫時期や追熟処理が機能性成分,香気成分および苦味成分含量に大きく影響することを明らかにしてきた。一方で,果実品質は栽培環境にも影響を受けることが知られており,リンゴ果実では芳香成分量に影響することが報告されている。よって,梅酒についても園地条件などの栽培環境により香気成分量等に違いが生じることが予想される。そこで,我々は現在,栽培環境と梅酒品質との関係を調査しており,ここでは,光条件や土壌条件といった栽培要因が梅酒の品質に及ぼす影響について紹介する。