著者
土肥 修司
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.001-014, 2015 (Released:2015-02-17)
参考文献数
40

エーテル麻酔の成功から約170年,著者の経験は後半の一時にすぎないが,この40年間に,麻酔の理解も安全性も飛躍的に向上した.麻酔薬による意識,記憶,疼痛,運動機能への抑制効果は一様ではなく,おのおの薬の薬理特性によって異なる.麻酔の主要な構成要素である「無意識と無記憶」状態は,麻酔薬が視床を中心とした脳神経系ネットワークの統合を抑制して,環境との連絡が断たれたときに生じると理解されている.麻酔状態では自然睡眠中と異なり,記憶形成過程の増強はないが,「無意識なのか」「記憶の形成中なのか」を確実に検出できるモニターはない.本論文では,研究の歴史的流れを通して麻酔中の意識と記憶に関しての簡潔な総説を試みた.
著者
高田 基志 山本 拓巳 井上 智重子 酢谷 朋子 新家 一美 鈴木 照 土肥 修司
出版者
一般社団法人 日本集中治療医学会
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.16, no.3, pp.289-293, 2009-07-01 (Released:2010-01-20)
参考文献数
12

患者は67歳,女性。めまいと嘔吐を主訴に経過観察入院となったが,入院3日目に胸部不快感とSTの上昇を認め,緊急心臓カテーテル検査が実施された。冠動脈に有意狭窄はなかったが,心尖部の収縮低下を認め,たこつぼ心筋症と診断された。ICU入室時,頻脈を認めたため,ランジオロールにて心拍数のコントロールを試みた。また悪心・嘔吐に対してドロペリドールを投与したところ,急激な血圧低下と頻脈を来たした。急速輸液とフェニレフリン投与は無効であった。ランジオロールを増量したところ,血圧の上昇を認めた。プロプラノロール内服によりランジオロールを漸減でき,入室3日目に一般病棟に転床した。しかし後日イレウスを来たし,不幸な転帰をとった。病理解剖の結果,褐色細胞腫が判明した。本症例の左室壁運動異常の原因は過剰カテコラミンによる微小循環障害と推察された。またランジオロール投与は左室壁運動を正常化し,循環動態を改善したと考えられた。
著者
大島 勉 土肥 修司
出版者
岐阜大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

平成14年度における研究成果は以下の通りである。1)経口麻酔前投薬としてのセロトニン1A受容体作動薬タンドスピロン:セロトニン1A受容体作動薬タンドスピロンを麻酔前投薬に用いることによって、鼓室形成術後の悪心嘔吐を抑制することが判明した。2)吃逆の系統発生学的起源:パリ、カルガリーの研究者と吃逆の系統発生学的起源について討論を行った。数多くの類似点を有することから、吃逆の系統発生学的起源は鰓呼吸であるという仮説を論文として作成した。この論文は雑誌BioEssaysに掲載された直後に雑誌New Scientistで紹介され、その後は英国BBC、オランダのテレビ放送などで取り上げられ、反響を呼んでいる。3)GABAの相反する吃逆への作用:ペントバルビタール麻酔ネコにおいて背側鼻咽頭部の機械的刺激による吃逆様反射がイソフルラン吸入によっていかなる影響を受けるかを検討した。GABA-A、GABA-B受容体の拮抗薬を中枢もしくは末梢投与することによって、イソフルランは吃逆様反射を中枢、末梢両方のGABA-A受容体を介して促進、GABA-B受容体を介して抑制することが判明した。この実験結果にかんしては、American Society of Anesthesiologistsの年次大会(オーランド)で発表し、現在論文投稿中である。4)全身麻酔導入時の咳、欠伸:日常の臨床において、フェンタニル静注による咳、チオペンタール静注による欠伸を免疫学的に検討した。前者はAmerica Society of Anesthesiologistsの年次大会(オーランド)、後者はAmerica Thoracic Society国際学会(シアトル)で発表し、今後、論文作成に向かう予定である。
著者
土肥 修司 田辺 久美子 柳舘 冨美 杉山 陽子
出版者
岐阜大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2007

Na^+-K^+ATPaseは細胞内外のNa^+とK^+の濃度を調節・制御しており、麻酔薬によるシグナル伝達機構にどう影響するかを、麻酔作用の重要なターゲットである脊髄後根神経節ニューロン(感覚ニューロン)および脊髄後角ニューロンにおいて検討した。Na^+-K^+ATPaseもイオントランスポーターであるCation-Chloride Cotransporters(CCC)も、エンドセリンも麻酔薬の脊髄の疼痛シグナル制御機構にさまざまな影響を与え、正常と損傷を受けた動物とによって異なること、グリア細胞もその作用の一端を担っていることを示唆する結果を得た。
著者
土肥 修 浅野 直輝
出版者
一般社団法人日本機械学会
雑誌
日本機械学会論文集 A編 (ISSN:03875008)
巻号頁・発行日
vol.46, no.407, pp.826-836, 1980

二物体の接触状態におけるおのおのの運動方程式は接触力を表面力と同様に扱う仮想仕事の原理に基づくFEMによって導かれる. さらに接触力成分を除去するため, 各運動方程式を結合することによって接触運動方程式を公式化し, この接触運動方程式を2個の等断面棒の縦衝突応力解析に適用した. 計算結果は周期的に変動するが, これらの平均値は一次元理論の結果に一致する. 本解析法は動的弾性接触問題に適用できることが認められる.