著者
Keaten James A. Pribyl Charles B. 坂本 正裕
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.33-47, 2000-03-31 (Released:2019-04-06)

近年、日本の文部科学省はディベート、パブリック・スピーチ、口頭発表といったコミュニケーションを新たな学級活動として導入しようとしている。しかし、主に書くことによるコミュニケーションや評価に依存してきたシステムに、話すことを主としたコミュニケーションを導入する場合には、コミュニケーションへの恐れに関わる諸問題が生じてくる。これらの問題は、クラス内でのコミュニケーション活動が必ずしも話すことを主体とものではないことから隠蔽されてきた。それゆえ、いかに学生にコミュニケーションに対する恐れをうまく処理させるかについて、日本の教員や研究者が参考にすべき情報源は限定されてきたともいえる。本展望は、コミュニケーション不安・抑制・回避(CAIA)に言及しながら、コミュニケーションに対する恐れを緩和することに適用可能ないくつかの認知的および情動的技法を説明することで、その情報不足を補うことを目的としている。CAIAは対人抑制、行動混乱、コミュニケーション回避といったコミュニケーション障害を包括的に統一する用語であり、非生産的思考、条件反応、コンピテンス不足と関連づけられる。本稿では、口頭でのコミュニケーション障害に対する介入技法として(1)認知的再体制化、(2)視覚化、(3)メッセージ中心イメージ法、(4)系統的脱感作を解説している。紹介したテクニックはCAIAに悩む学生を援助するために用いるには未完成の介入技法かもしれない。各仲介技法の有効性と文化的な適切さの両者を試すにはさらなる研究が必要である。
著者
坂本 正裕 プリブル チャールズ キートン ジェームズ
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
vol.68, no.6, pp.491-507, 1998-02-28 (Released:2010-07-16)
参考文献数
87
被引用文献数
1 4

The ability to communicate effectively has a profound impact on academic ability and social status in the United States. As such, communication avoidance may impart critical consequences on individuals who suffer from it. Within the communication discipline, communication avoidance is an extensive body of research with a relatively long history. Central to communication avoidance research is the concept of communication apprehension (CA). However, in comparison with research conducted in the United States, CA research in Japan remains in its genesis. This review thus focuses on communication apprehension and related constructs. Starting with an explanation of the magnitude of the problem of communication avoidance, a definition of CA is presented, and an overview of the related constructs of reticence, shyness, and other communication-related fears is introduced. Basic CA treatment programs and personality correlates of CA are also covered. The review closes by offering suggestions for future CA research in Japan.
著者
坂本 正裕 有田 秀穂
出版者
東邦大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1993

本年度は、ネコの脳幹を免疫組織化学的方法で染め出し、特定の表情筋を支配する顔面神経核内の細胞群とそこに投射する伝達物質を含有する神経終末の分布様式を化学顕微鏡で調べた。1)セロトニン含有終末は、顔面神経核内のいずれの亜核においても細胞体や近位の樹状突起に対して付着している様に見えた。その中で特に腹内側核と腹外側核には強い投射が観察された。このセロトニン入力の起始細胞は脳幹の縫線核にあると考えられる、縫線核の細胞の活動は日中増大し、夜間には減少する。したがってセロトニン入力の役割が覚醒時の口唇部の緊張維持に関係していることが示唆された。2)「痛み」に関係している伝達物質とされているエンケファリンは、主に眼輪筋を支配する運動神経細胞の樹状突起の遠心部に付着しているが、セロトニンにはそのような付着がみられなかった。このことは眼の周囲の表情形成にはエンケファリンの影響が強いと考えられる。3)p物質は主に近位の樹状突起に付着しており、鼻の周囲以外の表情筋の緊張(特に口唇部において)に関与している可能性があった。上記の研究成果は、情動表出における表情筋の動きが顔面神経核レベルでの神経伝達物質含有終末の分布差に影響されていることを示唆している。しかし、表情表出パターンの生成は、より上位の中枢で行われているらしい。そこで表情パターンの発生機構を探るために、予備実験をラットを用いて行った。顔面神経核に投射を持つ扁桃核を電気刺激した結果、中心核より深い部位の刺激は、血圧の上昇とともに刺激と同側の眼球突出や耳、口唇の動きを誘発した。また、顔面神経核に逆行性標識物質を微量注入して、扁桃核の吻側部の中心核付近に標識細胞を見いだした。これらのことは扁桃核が表情表出パターンの生成に直接に関与していることを示唆した。